食べられるもの幅とアレルギー

最近の非常食にはアレルギー表示のある物が多い。

 災害が起きると、場合によっては食事ががらりと変わってしまうことがあります。
自分で自分の食べ物をうまく確保できている場合にはいいのですが、そうで無い場合には避難所や炊き出しの配給などに頼ることになります。
 ただ、配給に頼ることになると、アレルギー源が入っているかどうかがわからなかったり、普段の自分の食生活で出てこないような食べ物が登場することもあり、人によってはそれが非常に不安に感じる方もいると思います。
 それを回避するには、アレルギー源をどれくらい摂取することが可能なのかを知っておくことも大切なことです。
 アレルギー対応食は、非常食や災害食などの保存食では増えてきてはいますが、まず量を確保しなければいけない配給食ではそこまで考えられていないことも多いですから、万が一アレルギー源の入った食事を摂取したとして、どれくらいまでなら大丈夫なのかを知っておくことは自分の命を守ることに繋がります。
 非常時になって一か八かで試すのは非常に危険ですので、平時にアレルギーの薬をきちんと確保した上で試してみてください。
 また、普段から食べている食事の幅を広げておくことも大切です。平時にいろいろなものを食べていると、知らない食べ物というのは減りますし、その食べ物にアレルギー源が入っているかどうかもある程度予測ができるようになります。
 初めてだらけで不安いっぱいの避難所生活の中で一つ不安を減らせるのは、心理的に非常に大きな事だと思います。
 どのようなアレルギーがあってどのような食べ物をどれくらい摂取すると危険なのかについては、たとえ子どもであっても自分で説明できるようにしておくようにしましょう。
 どのような食べ物アレルギーを持っているのかは、見た目ではわかりません。わかっているアレルギー減を説明できれば、配給をもらう側だけでなく配給する側にとっても無用のストレスを減らせることになります
 最後に、さまざまな理由で自分のアレルギー源が説明できない方もいらっしゃいます。そんな人は自分の「パーソナルカード」を配給者に確認してもらうことでアレルギー源を回避することが可能になると思います。
 いろいろな食べ物を食べておくことと、自分のアレルギー源や摂取可能量を知っておくこと。
 それが被災後のあなたの命を守ります。

お薬手帳とかかりつけ

お薬手帳の表紙
お薬手帳だけでは過去の副作用はわからない。

 かかりつけ医とかかりつけ薬局を持とうということで、健康保険組合がさまざまなところでPRをしています。
 防災の目から見ると、持病を持っている人はかかりつけ医とかかりつけ薬局は持っておくべきだと思っています。
 というのが、かかりつけ医やかかりつけ薬局を作ると、過去にどのような病歴があってどのような薬を使い、その結果どのような問題が発生したのかについてがきちんと記録されるからです。
 非常用持ち出し袋にはお薬手帳の写しを入れておくようにと言われていますが、情報は変わっていくものですから、薬や量の変更などがあったときにはきちんと写しも変更しておかないといけません。
 最近ではデジタルお薬手帳というのも普及してきてはいますが、お薬手帳では投与された薬や量はわかるのですが、使った結果発生した過去の副作用まではわからないのが現実です。
 そんなとき、かかりつけ医やかかりつけ薬局を持っていると、過去にどのような薬でどのような副作用の記録が残っていますので、その時にその薬が無い場合の代わりの薬で使ってはいけないものがはっきりとわかります。
 最悪、広域避難となって避難先で巡回医による診察でも、そういった情報があれば的確な診断を下すことが可能になりますので、かかりつけ医やかかりつけ薬局はできる限り持つようにしましょう。

常識の共有化をしておこう

 避難所運営において一番問題となるのは、正しいと思っていることと正しいと思っていることのぶつかり合い、常識同士の喧嘩です。
 例えば、避難所におにぎりが避難者の半分しか配られなかったとします。
 あなたは避難所の運営者として、これをどういう風に取り扱いますか。
 老人から渡すという人もいるでしょう。一つを半分にして全員に配るという考え方もあります。子供や妊婦、病人に優先するという見方もあれば、元気な若い人に優先するという考え方も、全部捨ててしまうと言う考え方もあり、千差万別になると思います。
こういったときには、運営者の間で激しくもめることになってしまうことがあります。言っている話は、誰の話もきちんと理解できるもので、お互いの常識がぶつかり合っている状態になっているのです。
 非常時にこういった事態になると、もめたあとはずっとしこりを残すことになり、あまり良い状況を生み出すとは思えませんから、平時に避難所の運営方針について基本ルールを定めておく必要があるのです。
 避難所には当初予定していない状況の人達が避難してくることがあります。避難所の性格上受け入れないと決めることはできませんから、あらかじめそういった人達が避難してきたときにどのように対応するのかを決めておくことが重要なのです。
 さまざまな大規模災害では、必ず何らかのトラブルが起きていて、毎回異なった考え方で解決がされてきていますから、そういった事例を収集して、自分たちだったらどうするかということを話し合っておきましょう。
 時間の関係や情報の集め方などで難しいなと感じるのであれば、クロスロードゲームというのがありますので、これで考え方を整理していくのもいいかもしれません。
 クロスロードゲームは実際に起こった出来事を追体験し、その処置が正しいと思うか他の処置ができたのではないかという意見を出し合うもので、そこから考え方を掘り下げていくとさまざまな意見を擦り合わせることもできると思います。
 あなたの常識が全ての人に通用するわけではありませんし、誰もがあなたと同じように考えているわけではありません。
 自分の常識は他人の非常識、それくらいの気持ちで他人の意見も傾聴できる避難所運営体制も組み立てていきたいものですね。

クロスロードゲームとは?」(内閣府防災担当のサイトへ移動します)

作った計画はできるかどうかを検証しておこう

 マイタイムラインやBCPなどを作りましょうということでさまざまな場所でいろいろな講習会や説明会が開かれています。
 そこで出来上がった計画は非常に優れていて被災しても命はきちんと守れるというものになっているのですが、それが実際の行動に移せるのかというと、ちょっと難しいのではないかというものを作っていることも多いです。
 マイタイムラインやBCPは非常時に命を守ることが目的となっています。BCPの場合にはこのあとの復旧も記載しておかないといけませんが、その策定計画に無理がないかを、一度しっかりと確認してみてください。
 よくあるケースとしては、マイタイムラインで特別警報が発表されたら自動車で川向こうの高台の避難所に避難するといったものがあります。
 「特別警報が出たら」「高台の避難所に避難する」は問題はありませんよね。
 ここで問題になるのは「自動車で」「川向こうの」という部分です。特別警報が出ているような状況だと、河川が氾濫危険水位もしくは氾濫している可能性が大きいです。
氾濫しそうだと通行止めになりますし、もし氾濫していたらそもそも通行できません。
自動車で突破しようとしても、川の流れに車ごと流されてしまう可能性もかなり高くなりますから、手順を考える必要があるわけです。
 このケースだと、「特別警報」ではなく「氾濫注意水位情報」にしておくと、他を変更しなくても安全に避難することが可能になります。
 もしも「特別警報」を避難判断の基準にするのであれば、「自宅の2階以上の部分」や「近くの高い建物に歩いて避難する」ようにした方が安全だと考えます。
 特別警報が発表されるときには、すでにそのエリアでは災害がどこかで起きていると考えた方がいいですから、家の周囲で水が溢れている状態ということを想定して避難計画を組んでおきたいところです。
 また、「非常用持ち出し袋に1週間分の食料と水を入れて歩いて避難」というのも見たことがありますが、それを持って避難しようとすると、一人分であっても自力でもって移動することは困難だと思います。
 実際に実行できる計画というのは、作った後に実際に行動してみてうまく行くかどうかをきちんと確認しておかないといけません。
 作ったことで満足するのではなく、実際にその作った計画が実施できるのかについて一度やってみて、できない部分を手直しし、本当に使えるものにしていきたいですね。

お散歩と避難訓練

 寒い季節になってきましたが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 寒い時期になると屋内に引きこもりがちになりますが、天気の落ち着いている日には外で散歩してみると、意外とリフレッシュできるものです。
 せっかくなので、災害時に避難しようと考えている一時避難場所や避難所まで、実際に歩いてみてはいかがでしょうか。
 毎回同じところではなく、天候や体長に応じて近いところ、遠いところ、災害ごとに安全な場所などを確認しながら歩いてみると、思ってもなかった障害があったり、意外な避難可能な場所を見つけたりできて面白いですよ。
 子連れのご家庭では一緒になって歩いてみると、子どもがどの程度までなら歩けるのかや、歩けない子を背負ってどのくらいまでなら移動できるのかなどを試しておくと、緊急事態のときに自分たちがどのように避難すればよいのかのイメージができます。
 今回添付した写真でも小さな子が背負われていますが、この背負子はリュックサックになっていて、さらには背負っている子どものいすにもなる優れものです。
 リュックサックに納まる量はたいしたものではありませんが、数個の紙おむつと1回分の離乳食程度なら十分に納まりますので、普段使いでセットしておくといざというときにもそのまま子どもを乗せて背負って避難を開始することができます。
 非常時には可能な限り両手を空けるということを考えると、こういったアイテムを上手に使うのもありではないでしょうか。ただ、おんぶは背負う方もですが、背負われる子どもも慣れていないと上手に背負うことができませんので、そういう部分での練習にもなります。最初はうまく背負われてくれない子どもも、背負っている人と同じ目線になっていることに気づくと結構喜んでくれます。
 ちょっとした天気の安定した時間に、ちょっとしたお散歩で気分転換。
 新型コロナウイルスの流行が不安になっている今だからこそ、他人と接触せずに済むお出かけを考えたいものですね。

モンベル・ベビーキャリア(monbellのサイトへ移動します)

ヘルプマーク・ヘルプカードをご存じですか

 見た目では判断がつかない身体の内部の障害や難病の人、妊娠初期の人など、援助や配慮が必要だが見た目ではわからない人が身につけ、周囲に援助や配慮が必要であることを知らせるためのものです。
 東京都が考案して全国に普及されてきているそうですが、残念ながら筆者自身はまだ本物を見たことがありません。ただ、調べてみると島根県でも障がい福祉課がこのヘルプマークやヘルプカードの普及を行っているようです。
 ヘルプマークは、赤地に白い字で十字マークとハートマークが掲載されています。そして裏面には、その人がどういったことで援助や配慮が必要なのかという記載がされています。
 ヘルプカードも同様で、このカードの中に支援が必要な内容が書かれていますので、もし障がいのある人からこれらのものが提示されたら、記載されている内容に沿って支援をして欲しいとのこと。
 また、これらが併用される場合もあるようですので、もし提示されたらマークの裏側やヘルプカードの有無を確認をしてください。
 災害時には情報がうまく伝わらない・伝えられないことが数多く発生しますので、こういったことを知っておいて、いざというときにその人を助けることができるといいなと思います。
 内容など詳しいことについては、島根県障がい福祉課のウェブサイトをご確認ください。

ヘルプマーク・ヘルプカードについて」(島根県障がい福祉課のウェブサイトへ移動します)

社会的弱者こそ自己防衛する

 小はアレルギーから大は人工呼吸器まで、日常生活を送る上において何らかの支援や配慮を必要とする人がいます。
 普段の生活ではそこまでの苦労はされていないと思いますが、災害時にはこういった人達に対する支援や配慮は無くなってしまいます。
 ある程度復旧して人心が落ち着いてくればそうでもないのですが、被災直後の混乱の中では社会的弱者に対する支援や配慮は忘れ去られてしまうことが多々あり、社会的弱者の人は精神的にも物理的にも悲惨な状態になることもあります。
 そういう人達は、あらかじめ自分で対応策を準備しておかないと救助や支援の流れから取り残されてしまうことになります。
 大規模災害における支援活動は、大多数の人を救済することが主となりますので、さまざまな理由で少数派になっている人達に対する支援はどうしても遅れてしまいます。
 一例を挙げてみると、食物アレルギーを持っている人は、普段の生活ではアレルゲンを排除した食生活をしていると思いますが、被災後に何も用意が無ければ、アレルゲンが入っているかもしれない食事を食べるか食べないかの判断の要求されることになってしまいます。
 避難所で支給される弁当にはアレルゲン表示がある場合もありますが、食べない、食べられないという選択をした場合には代わりに食べられるものが存在しないのです。
 そういったとき、自分でアレルゲン除去してある食事を持っていれば、ひもじい思いもいちかばちかの悲惨な選択もしなくて済みます。
 普段の生活で透析が必要な人はどうでしょうか。自分だけでは対応が難しいかもしれませんが、いざというときにかかりつけの代わりに透析してくれる病院をあらかじめ紹介しておいてもらえば、被災後にその病院へ移動して継続して透析を受けることができるでしょう。
 社会的弱者は、災害からどのように身を守るのかということについては、そうでない人よりも真剣に対応策を考え、準備しておかなければなりません。
 災害時には人間関係が先鋭化します。その時に生け贄にされないためにも、自分で身を守るための対策を普段から考えておきたいですね。

防災対策は場所ごとに異なるものです

 防災関係の本を読んでいるといろいろと勉強になることや面白いことが書いてありますが、基本的には誰が読んでもいいように汎用性を持たせて書かれているようです。
でも、それぞれの防災行動に落とし込んでいくと、同じ対策でも住んでいる場所や位置によって対策が異なる場合が出てきます。
 それを無視して準備や備えを行っていくと、いざというときに逆にトラブルを招いてしまうことが起こりえます。
 災害対策はオーダーメイドのハンドメイドでやっていったほうが、最終的にうまく自分の身を守ることができるのではないかという気がしていますので、もしもあなたが防災関係の本を読んで備えようと思っていただけていたなら、書かれていることとあなたの置かれている状況を考えて適宜修正していくといいと思います。
 例えば、自分で準備する災害食は3日~1週間分を準備しなさいと言われていますが、都会地と地方では準備すべきものが異なります。
 都会地では自分に必要なものは全て準備しておく必要がありますが、地方で水に浸からないような場所で田畑を作っている人は、災害食を準備しておかなくても倉庫にはお米、そして畑には野菜があると思います。そうすると、全てを準備しなくても、缶詰や何かを用意しておけば当座は充分凌げるでしょう。
 また、水の確保でよく出てくるお風呂の残り湯ですが、これを置いておくことが正解の場所と、そうでない場所があります。
 一軒家やアパートなどの1階にお住みであればお風呂の残り湯は置いておく方が後で水に困らなくて済みますが、2階以上のアパートなどに住んでいる人は、残り湯は速やかに抜いておいた方が後のトラブルが少なくて済みます。
 二階以上が地震で揺れると、風呂の水は風呂桶からこぼれ出します。そのこぼれた水が床下に流れ込んで、階下での水漏れ騒動になり弁償するような場合もでてくるのです。
 一つ一つは小さなことですが、あなたが快適に被災後も生活をするために、自分に必要な防災行動を考え、準備しておいてくださいね。

避難所にテントを持って行く

写真のテントは5人用。寝るスペースと荷物を置くスペースしかないが、避難所での設営には向く。

 コロナ禍での避難所運営では行政や避難所運営委員会の方々が試行錯誤しながら安全に避難所を運営するための手法について検討されています。
 現時点での安全策として、140cm以上の仕切りを建てることや2m以上の間隔を空けるといったことがルール化されつつあるようですが、仕切りが準備してある避難所は現状では皆無なのではないでしょうか。
 ブルーシートや新聞紙などで仕切るという方法も考えられているようですが、自分の安全を確保するという視点から、自立式のテントを準備しておいてはいかがでしょうか。
自立式のテントであれば屋内屋外問わずに使うことが可能ですので、避難所でも屋外でも避難先として使うことが可能です。
 スペースの問題はあるのですが、避難者一人あたり1×2mのスペースがあれば、自立式テントは充分に立てられます。
 以前に乳幼児向けに日よけテントを持参しようということを書きましたが、自立式テントであれば生活を人に見られなくても済み、その分のストレスは軽減できます。
 新型コロナウイルス対策とプライバシー保護をかねて、非常用持ち出し袋と一緒に自立式テントを用意しておくと便利だと思います。

子どもが避難したイメージ。風の通りが悪いので、夏場は風向きや排熱に注意が必要。

 自立式テントはアウトドアメーカーに限らずさまざまな商品が売られていますが、サイズがいろいろとあります。
 快適な生活空間を維持するための大きなテントもありますが、それを避難所に持ち込むとトラブルの元になりますので、適当な大きさのテントをご検討ください。

パーソナルカードを作っていますか

 自分の情報や家族を始めとする大切な連絡先、家族の写真などをまとめて一枚のカードにしたものをパーソナルカードと言いますが、あなたはパーソナルカードを持っていますか。
 被災して動揺すると、知っているはずのことが思い出せなかったりすることがあります。そのとき、このパーソナルカードを確認することで非常時の連絡先や家族の集合場所、かかりつけ医などの情報を確認することができます。
 また、子どもやお年寄りに持たせておけば、非常時にそれを確認することで安否確認などの連絡を取ったり身元の確認をすることができます。
 こういった書式で作る、という指定されたものはありませんが、自分の名前、住所、血液型、家族構成、家族の連絡先、災害時の集合場所、持病や常備薬、かかりつけ医やかかりつけ薬局などの情報、そして家族写真を一緒にしておくと非常に役立ちます。
 とはいえ、このパーソナルカードは個人情報の塊ですから、いざというとき以外人に見られたくない方もおられると思います。
 そのため、作ったものをラミネートパウチしておいて、使うときにははさみで切って中を確認するといった方法をとることもあります。
 大切なことは、非常時に自分が誰で家族が誰で、どこへ連絡すればいいのかなどがわかることですから、作ったものを普段持ち歩くカバンや財布にいれて、いざというときに使えるようにしておきたいですね。