福祉避難所をどう開設するのか

 福祉避難所は、乳幼児や障害者、生活に人の支援が必要な人など、「要配慮者」とされている人達が必要なケアを受けられるように設置される避難所です。
 この福祉避難所、開設は義務ではありません。自治体が必要と判断したときに設置することができるとされており、福祉避難所へ避難できるかどうかは避難所を巡回する行政の保健師や医師などが判断することになっています。
 詳しくは内閣府の作った「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を見ていただきたいのですが、要支援者が自分で判断して福祉避難所に避難することができないため、発災時には要配慮者は通常の避難所に避難するしかありません。
 その結果、通常の避難所では避難し続けることが困難な状態になって、自宅避難や車中避難、あるいは最悪の場合避難先がないという事態が想定されます。
 これだけ災害が日常的に発生し、自治体のマンパワーが不足している現状では、福祉避難所は通常の避難所と同じ条件で開設した方がその後のトラブルが少ないと考えるのですが、福祉避難所に指定されるディーサービスセンターや老人介護施設などは普段営業を行っていることから、「災害が起きる可能性」だけで営業を止めて避難所開設というわけにはいかないのかなとも考えます。
 避難所に避難してくる人達を見ていると、要配慮者の方は比較的早めに避難しているように感じます。ただ、多くの方が避難してくるとさまざまな事情で追い出されてしまう現状になっているので、「避難所内で何とかしろ」ではなく、きちんと支援できる体制のある場所で福祉避難所を開設した方がよいと考えるのですが、あなたはどう思いますか。

避難開始のルールを決めておく

 災害情報や警戒レベルについては以前「災害時の情報にはどんなものがあるだろう」という記事で触れたことがありますが、警戒レベルについてはレベル順に発表されるとは限りません。
 短時間に集中してピンポイントで降るような雨の場合だと、警報から二つレベルが上がっていきなり「避難勧告」が出るケースも想定されます。
 そのため、警報が出たらその後どのように雨が降りそうなのかについてアメダスや降雨量、雨雲レーダーなどの気象情報を確認して置かなければなりません。
 緊急時に判断するときには、大抵の場合「これくらいなら」とか「まだ大丈夫」といった正常性バイアスによって気がつくと避難するのに手遅れの状況になっていることもよく起きますので、自分たちが「何が起きたらどこへ避難を開始するのか」を平常時に決めておかなければ冷静な判断はできないと思います。
 平常時に決めた避難基準、例えば「時間雨量が30mmを超えたとき」や「近くの川の水位が一定量を超えたとき」「家の前の側溝が溢れたら」などの条件が満たされたら、いろいろ考えずに避難を開始することをルール化しておきます。
 もし避難後に何も無くても、「何もなくてよかった」のですから喜べばいいのですし、判断基準がおかしいかなと感じたら、その感覚を元にして避難開始のルールを変更すればいいだけの話です。
 「避難所」が開設されていなくても「避難できる場所」を決めておけばそこで過ごせばいいですし、「避難場所」であれば条件なしに避難をすることが可能です。ただ、避難場所は殆どの場合場所だけの提供となりますので、雨を凌げる装備が必須となることに注意してください。
 また、水没や崖崩れなどの心配が無い場所や近くに避難できる場所がどうしても見つからないなら、家の中の上層階への避難でもやむを得ません。(避難所の詳しいことについては当研究所の投稿記事「避難所の種類と機能について考える」をご覧ください。
 いずれにしても、避難開始のルールを決めておくことで避難遅れはなくなりますから、どうなったらどこへ避難するというおうちのルールを作って、家族みんなで共有しておいてくださいね。

「行動を起こす鍵」を決めておく

 現在国会で新型コロナウイルスへの対応を巡っていろいろな話をしているようですが、滅多にない大規模な感染症ということなのか、政府の動きがなんとなく後手後手に回っているような気がします。
 以前にもSARSや新型インフルエンザ対策などで大騒ぎしたはずなのですが、そのときに得た教訓は「行動を起こす鍵」を決めておくということです。
 「行動を起こす鍵」は「トリガー」や「引き金」とも言われますが、さまざまな想定で検討をしておいて、どんな状況になっても発生したらすぐに行動に移すことができるようにパターン化して行動を決め、その行動を起こすための鍵となる事象を決めておく作業をさします。
 例えば災害対策では「BCP(事業継続化計画)」と言われる状況と対応の計画書がそのままこれに当たります。
 もちろん状況は動きますし、設定した状況と100%同じ事態が起きることはまずないでしょうが、いろいろと検討しているうちに備えなければいけないことがはっきりと見えてきますので、その対応をするための行動を起こす鍵をしっかりと決めておく。これは平時にこそ準備しておくもので、非常時に慌てふためかないために必ず検討して準備しておいた方がよいものです。
 「Aが起きたらBを実施」という考え方はプログラムのようですが、BCPというのはまさにプログラムで、設定された状況に従って行動をするためのツールとして考えてみるとわかりやすいかもしれません。
 慌てている会社や自治体はこのBCPがうまく機能しておらず、落ち着いて手を打っている会社や自治体はBCPがうまく稼働していると考えていいと思います。
 BCPがないのにうまく対応している会社は、この「行動を起こす鍵」をはっきりとさせていて、それを従業員や顧客にも周知徹底がされているところでほぼ間違いないはずです。
 企業のBCPだけでなく、家族やあなたの生存継続化計画を作るときにも、この「行動を起こすための鍵」を意識して計画を組んでみてください。
 難しくてややこしくて専門業者に丸投げしていた企業のBCPが、そんなに難しくないと感じると思いますよ。

被災後の生活リズムをきちんと作る

 避難所での生活では、食事と消灯時間は避難所全体で決定されますが、それ以外の時間は各自で過ごすことになります。
 また、自宅避難の場合には、全てが自分の思うように時間を使うことができます。
 ただ、そうなってくると乱れてくるのが生活リズム。それまでの生活ではなんとなく生活リズムが決まっていたと思うのですが、被災後はさまざまな要因から生活リズムが狂ってしまいます。
 でも、それをそのままにしておくと、落ち込んだり、寝不足や会話がないことによる精神不安、寝て過ごすことによる身体機能の低下、支援物資のお菓子をひたすらつまむことによる肥満など、あなたの心身にとってよくないことが起きてきます。
 生活や明日の不安があるときだからこそ、無理矢理にでも生活リズムを作って気持ちを切り替えるようにしておかないと、気力体力を維持することはかなり難しいです。
 起床時間、寝床から出て起きている時間、歩く時間、食事や洗濯の時間、トイレの時間、就寝時間など、とりあえずでいいので、自分の生活表を作ってそのとおりになるように生活をしましょう。
 そして、片付けやこどもの見守り、炊き出しなど、自分ができることを見つけて身体を動かすようにしてください。
 そうすることによって生活に張りが出てきます。
 大規模な災害で被災するとこの世の終わりのような気持ちになるものですが、それでも生きている以上は生活をしていかなければなりません。
 いち早く生活リズムを作って気力を取り戻し、自分が思うような普段の生活を取り戻すようにしたいものですね。

地震の基準を確認しておこう

 最近また地震が増えているような気がします。地震が起きる理屈については以前触れたことがあるのですが、連日どこかで地面が揺れているというニュースが流れていますので、今回は地震の考え方をおさらいしておこうと思います。

1.震度とマグニチュード

 地震のニュースのときに必ず出てくるのがこの震度とマグニチュードです。
 ややこしい話は、筆者の能力では説明しきれないのでwikiなどで調べていただければと思うのですが、震源の地震のエネルギーを示すのがマグニチュードと言われるもので、これは一つの地震に一つしかありません。
 マグニチュードは1から10まで存在しますが、1段階が上がるごとに強さが約32倍増えます。そのため、マグニチュード1とマグニチュード3ではその強さに約千倍の差があることになります。
 地球上で記録されているもっとも強い地震とされているのが1960年のチリ地震で、このときの数値はマグニチュード9.5と言われています。
 震度はそれに伴う揺れを表すもので、現在は計測震度計により記録された数値が公表されています。揺れを示すものなので、場所によって異なった揺れ方が起き、人によってはお住まいの地域の震度を見て「そんなに弱かったの?」とか「そんなに揺れたかな?」と首を傾げることもよくおきます。
 震度1から震度4、震度5と6はそれぞれ「強・弱」が存在し、もっとも強いのが震度7となっています。

マグニチュードとは(ウィキペディアの該当ページに飛びます)

震度とは(気象庁のウェブサイトに飛びます)

震源と震度を示す図の一例。震源は一カ所だか、震度は地域によって異なっていることが分かる。

2.緊急地震速報を知っておこう

 最大予測震度が3以上の時に、緊急地震速報が発表されます。
 これは地震発生時に地震波の伝わる速度の差を利用して発表されるもので、震源がある程度離れている場合には有効です。
 ただ、速報を出す方法上、直下型や震源に近い場所では、揺れ始めてから緊急地震速報が出ることもあります。
 発信される警報音はスマホやテレビ、ラジオにより異なりますので、自分の使っている機器の出す警報音を知って、鳴ったらすぐに安全を確保する行動を取るようにしてください。

緊急地震速報のしくみ(気象庁のウェブサイトへ飛びます)

3.地震では身の安全の確保を最優先する

 妙ないい方になりますが、地震そのもので死ぬ人はほとんどいません。
 亡くなる方は、地震によって倒壊した建物やものの下敷きになったりする場合が殆どです。
 そのため、建物が揺れで倒壊しないようにすることや、安全な場所の確保、そして何よりも自分が怪我をしないように安全を確保するための行動をとれるかどうかが大切になります。
 地震時の安全確保の方法は、いろいろな人がいろいろなことを言っていますが、あなたがいる場所や条件によって正解が変わりますので、さまざまな安全確保の方法を知って、その中から最適な方法を瞬時にとることができるようにしておくことが大切です。
 起震車や起震装置による体感とそれに伴う安全確保の訓練もしっかりとしておく必要があります。
 地震であなたの命を守るのは、あなたしかいないことをしっかりと理解して、機会を見つけて準備をしておくことをお勧めします。

避難所へ避難するための判断基準

 「被災しそう、または被災したら避難所へ避難する」というのが災害対策ではよく言われますが、自治体が作っている避難所の圏域人口と収容人員にかなりの開きがあることをご存じですか。
 自治体の作る地域防災計画では、避難所は自宅が倒壊したりひどい損傷を受けて生活の場にすることができない、または他所から来て帰宅できるまで生活できる拠点がないという人を収容する想定で考えられています。
 そのため、台風や水害などあらかじめ避難する場合を除いては「在宅避難」が前提とされています。家屋の耐震補強が勧められているのも、地震で家屋がつぶれないようにすることで生活者の命を守ること、そして在宅避難ができる環境を維持することが目的と考えることができます。
 そう考えると、地震で被災したときには2段階で避難所へ避難をするかどうかの検討をする必要があります。

1.家屋の危険度を見極める

 家屋本体にどのような損害が出ているのかを確認します。
 次に周辺家屋が自分の家屋に被害を与えないか、火災・液状化現象・津波などの二次災害が起きていないかを確認します。

以上の確認をして、とりあえず建物が余震に耐えられそうかどうかを確認します。
本格的な被災状況の確認は自治体が実施する「応急危険度判定」に任せるとして、とりあえずは目で見て問題がなさそうなら次の確認を行います。

2.生活できるかを確認する

 自分の家屋の内部が生活可能かを確認します。他人の支援が必要な人や健康に不安のある方は、自身の生活が維持できないと判断したら避難所へ避難します。
 片付ければ住めるのであれば、生活できる空間作りを優先し、在宅避難をするようにします。例えば窓ガラスが割れていて散乱しているようであれば、割れたガラスを片付けて、窓ガラス代わりのブルーシートなどを使うことで、居住空間を確保することは可能です。
 また、自宅が住めなくても納屋、テントを張れるような庭などがあれば、そこを居住空間にすることが可能です。

 避難所への避難は、被災者全員では無く、生活弱者や住む場所を失った人が行うようにします。そうしないと、避難所に人が収容しきれずに避難所としての機能が麻痺することになってしまいます。
 よく騒動の元になることなのですが、「避難所に避難しないと支援物資がもらえない」は誤りです。避難所は支援物資の拠点になっていますが、そこで物資を受け取ることができるのは、避難所への避難者だけではなく、在宅や避難所以外に避難している被災者全てです。
 このことは災害対策基本法にしっかりと明記されている(災害対策基本法第86条の7参照)のですが、自治体職員も含めて知らない人が多いので、避難所運営訓練などでは避難所への避難者以外も対象になることをしっかりと関係者で情報共有しておく必要があります。

 また、避難所へ避難する場合には、電気のブレーカーやガスや水道の元栓をしっかりと締め、できる限りの戸締まりをしっかりとしてから避難するようにしましょう。

【活動報告】薬局様のコロナ対策整備をさせていただきました

 新型コロナウイルス対策で医療関係はいろいろと大変な状況になっていますが、当研究所創立以来協力していただいている薬局様のBCPとして、お客様・従業員様を感染の危険から守るための店内の新型コロナウイルス対策作業をさせていただくことになりました。

薬局の投薬カウンター。薬剤師とお客様の距離が近く、感染の危険がお互いにある。

 作業の内容としては、お客様用トイレの閉鎖、感染対策のために車で待機してもらうことを促す貼り出し、そして処方箋受付、薬の説明や受け渡しを行う投薬カウンター、会計レジに飛沫防止用の透明なビニールカーテンを設営する作業で、今回は飛沫観戦用の透明なビニールカーテンを設営する作業をさせていただきました。
 ただ、このビニールカーテンに関してはさまざまな接客業種で同じような作業をされているようで店頭在庫がなく、緊急措置として厚手のビニール袋を切って代用することにしました。

 突っ張り棒を支柱代わりに各机の上に準備して、支柱の間にビニールをかけ、飛沫対策のビニールカーテンの代わりとしました。

 今回のビニール袋は厚手で透明度がそれほどでもないため、ちょっと見にくいのが難点ですが、使い勝手も含めて、運用しながら修正していただくことにしました。

 今後もさまざまな対策をしていくことになると思いますが、現在緊急事態と言うことでいつもと違うさまざまな案内が店舗前や店内にされています。
 お店を利用する前にそれらの表示を確認して、私たち利用者もお店の方も、お互いに安全に過ごせるようにしたいものですね。

2020年4月20日追記:透明なビニールカーテン用の資材が手に入ったと言うことで、さっそく交換されたそうです。

外出自粛と買い占め

 4月16日に政府から全国に対して「緊急事態宣言」を行いました。
 そして、それを受けた都道府県や市町村が新型コロナウイルス対策として人の移動の自粛要請や業務の縮小などの依頼をかけ始めています。
 この事実だけをみると、確かに非常事態のような感じもしますし、その影響を受けてか、今日はスーパーマーケットのレトルトやインスタント食品のコーナーがほとんど欠品状態になっていて、買い物かごにそれらを満載した高齢者の方が群れを成してうろうろ。正直、なんだかなぁと思ってしまいました。
 売れ筋を見ると、袋のインスタント麺、レトルトカレー、それからパスタソースや乾麺、缶詰など。生鮮食料品や保存期間の短いものは通常通りの分量がありました。
 これから考えると、緊急事態宣言で外出自粛要請が出されたために出歩かなくて済むように保存のきく食料品を調達しているということだと思います。
 面白いのは、パックご飯や冷凍食品はいつもどおりの売れ行きだということ。出会う人達の年齢がかなり高い感じがしましたから、高齢の方が自分たちに馴染みのある保存性の高い食料品を買い占めたというところでしょうか。
 ところで、こうなっている原因の緊急事態宣言とはどんなものなのでしょうか。
 調べてみると、その昔新型インフルエンザで大騒ぎになったことがありましたが、その時に整備された新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)の第32条「新型インフルエンザ等緊急事態宣言等」をそのまま当てはめていて、この特別措置法の附則第1条の2で「新型コロナウイルス感染症に関する特例」を加えて今回対応できるようにしているようです。
 この法律でできるのは、さまざまな要請で命令はほとんどできないようになっています。第45条「感染を防止するための協力要請等」でいろいろと書かれてはいますが、あくまでも要請であって、他国のように都市の出入りを止めてしまったり、戒厳令を敷いて人の移動を制限したりすることはできないのがこの法律です。
 現時点で特に災害で物流が混乱したり停止したりしているわけではないので、食料品はきちんと入荷されています。少し前にトイレットペーパーが無くなるという騒動がありましたが、あれは生産が停止したから無くなったのではなく、物流網の供給能力を超えて買い占められてしまったために手に入らなくなったことは、記憶に新しいと思います。

買い占めが進むと、物流が正常でもあらゆるところで物資不足が発生する。
(写真はイメージです)

 不要不急の外出自粛の中では、食料品や生活必需品の買い出しは規制されていないのですが、外出してはいけないと勘違いした人達が一度に買い出しに出て買い占めを行っている状態になっています。
 想定されている不特定多数の人が一カ所に集まってしまっているわけなので、ここからクラスター感染が発生してもおかしくないのではないかと考えてしまいます。
 どうせレトルト食品やインスタント食品を大量に買い占めても、数日もすれば生鮮食料品を買い出しに出かけることになるのですから、無駄な買い占めはしないようにしたいものですね。
 新型コロナウイルスが蔓延し始めたので政府が緊急事態宣言を出したこと、それを受けて地方自治体が外出自粛要請を出したこと。これはどちらも正しいことだと思います。ただ、出された宣言や要請を曲解して新型コロナウイルス蔓延の機会を作り出すことは、今回の宣言や自粛要請の本意では無いと考えます。
 繰り返しますが、物流は正常に稼働しています。食料も正常に供給されています。慌てて買い占めることはせずに、様子を見て必要と考える分量を何の発生もない時期に調達しておきたいなと思います。

 ちなみに、海外製のインスタントラーメン(タイや韓国)、ラビオリなど見慣れないパスタ、大盛りのレトルトカレーなどは残っていましたから、自分たちが理解できる長期保存できる食べ物ということで調達がされているみたいですね。

避難所には何がある?

避難所でよく出てくる体育館。生活するためのものは一切無いのが普通。

 「危険を感じたら非常用持ち出し袋を持って避難所または避難場所へ避難しろ」というのは、災害対策で出てくる基本的な部分の一つです。
 避難場所は文字通り「避難するための場所」なので一時的に避難ができることが条件になっており、学校の校庭や公共施設の駐車場など、露天の場所が指定されていることも多いです。
 では避難所はどうでしょうか。避難所は災害後に家が壊れたり何らかの事情で住めなくなった人が一時的に生活空間を作る場所であり、地域の支援物資の集積所であり、情報や人の集積所にもなっていますが、今回は「避難所で生活するとしたら?」を考えてみて欲しいということを取り上げてみたいと思います。
 まず最初に、あなたはあなたが避難する避難所のことをどれくらい知っていますか。どのようなものが準備されていて、誰が運営して、どのような支援が受けられるのかを知っていますか。
 この質問をして全てにきちんと答えられる状態であれば、可否はともかくその避難所のことを理解できていると言ってもいいでしょう。
 一般的には、田舎の小さな集落ほど避難所として使える施設は日常の生活空間に近くなり、都会で人口の多いところに行けば行くほど過酷な避難環境になると考えて間違いありません。
 田舎で避難所に指定されるのは、たいがい集会所や公民館で、こういったところは畳部屋や給湯施設がきちんと整備されていて、座布団や毛布などもあり、とりあえずはそのまま寝っ転がってもなんとか生活できる資材があることが多いです。

パーソナルスペースを作るための段ボール間仕切りの設営訓練の風景。
この間仕切りさえない避難所がほとんど。

 でも、例えば避難所が学校という場合には、支援物資は何一つ備蓄されて折らず場所貸し状態というところが結構ありますから、雨露をしのぐだけの場所と考えての準備が必要となりそうです。
 つまり、避難すべき避難所の状態によって自分で準備すべき身の回りのものが変わってくるということです。座布団や毛布がある畳敷きの部屋なら、寝具関係はなくてもなんとかなりそうです。でも、タイル張りの床に座るスペースしか無いとうことであれば、敷物や断熱材を用意しておかないと床の冷えを拾ってしまったり、堅い床に寝ることで身体を痛めたりすることになります。つまり設備のある避難所に避難するのであればその部分の準備は簡単にしておけばよさそうですし、設備がない避難所であれば、自分の身を守るためのさまざまな装備も持っておかないといけないということが理解できると思います。避難所に電源がなければ自分でそれも確保しておかないといけませんし、食事や飲料水などは当然準備が必要です。
 避難所の状態を確認して非常用持ち出し袋の準備を整えておくと、いざというときに困ることが少なくなると思います。
 とりあえず、自分が避難しようと思っている避難所に一度歩いて移動してみて、避難所ができたらどんな状態になるのかについて確認をしておいてくださいね。

不安を見える化する

 災害後、被災した方は一様に不安に駆られてしまうようです。特に高齢者や病気を持っている人などは、どうかするとこの世の終わりのような感じになってしまうこともあり、この不安解消というのはかなり重要な位置を占めています。
 不安の解消方法はいろいろとありますし、ひょっとすると解消できないものもあると思いますが、とりあえずは自分が何に不安を感じているのかについてしっかりと確認をする必要があると思います。
 そこでお勧めするのが不安を書き出してしまうこと。
 避難先や避難生活、復旧時のドタバタの中で、眠りが浅かったり、眠れなかったり、落ち着かなかったりするときには自分の抱えている不安を紙に書き出してしまいましょう。どんなささやかな内容でも、どうしようもないことでも、とにかく自分が不安だと思っていることを次々に書き出していきます。書いているうちにいやになってしまうかもしれませんが、それでもひたすら書いていくうちに、書くべき不安がなくなっていくと思います。
 そうしたら、次はその不安がどうなっていれば自分が安心できるのかを考えてみます。できるかできないかではなく、自分が不安が無くなって安心できる感じる条件を書き出してみるのです。
 それを続けていると、いろいろな解決策が浮かんできますし、もし何も浮かばなくても、書き出すことで不安が見える化しますから、他の誰かに話をすることで助けてもらうことができるかもしれません。
 逆に言えば、何が不安なのかがわからないからいつまでも不安が消え去らないのです。その時々に応じて起きる不安というのは違うと思いますが、不安で眠れないときには不安を書き出してみると、案外と大したことないなと思えたりするものです。
 不安は、そのままにしておくといらいらの原因になったりこの世の終わりを感じて自ら命を絶ってしまったりするきっかけになってしまいます。そしてボランティアや行政といった支援活動をしている人達も、あなたが何に不安なのかわからなければ手助けのしようがありません。
 不安はとりあえず見える化してみる。そして自分が安心できる条件を確認する。そうすると、次に打つ手が見えてくることもよくあります。
 「不安の見える化」は、なにも被災したときに限りません。日々のちょっとしたときにでも書き出す癖をつけておくと、生きていくのがさほど悪くないと思えると思います。不安にとらわれたときには、ぜひ一度見える化をしてみてくださいね。