スマホのライト

 本日は会員様対象企画として、防災体験会を開催しました。
 その中で、煙からの避難という項目があったのですが、講師の方が「真っ暗になったとき、日本人は壁を探しますが、アメリカ人はまずスマホのライトをつけます」といわれ、一般家屋の火災で出るような白い煙の場合にはスマホの灯りが避難にかなり役立つことを教えていただきました。
 恥ずかしながら筆者のスマホにもライト機能はあるはずなのですが、使ったことがなく、使い方も分からない状態。
 避難訓練時には他の方のスマホのライトに助けられて脱出を行うことができました。
 油火災のような真っ黒な煙だと意味がありませんが、白い煙の場合にはこのスマホのライトを脱出路の確認に使うというのはかなり有効に感じました。
 災害時に停電したときの照明だけでなく、照度も変えることができて懐中電灯やランタンの代わりになるので、使いこなせればかなり便利なアイテムだなと感じました。
 筆者も帰ってからライトの付け方を確認してみましたが、もしもお手持ちの携帯電話のライトの使い方をご存じないのであれば、調べて使えるようにしておいたほうがいざというときに安心できると思います。

情報が入るようになっていますか

 災害時、あなたはどのように情報を入手する手段を用意していますか。
 メール、アプリ、電話、防災行政無線など、いろいろな手段があると思いますが、できれば複数の手段を準備しておくようにしてください。
 特に防災行政無線に頼っている場合には、手元に情報が届かない恐れがあります。
 例えば、屋外の放送は雨音や風の音などで聞こえないことが多いですし、家屋ごとに受信機がある場合でも停電したり、本体の電池が切れていたりすると受信ができません。
 メールやアプリによる配信を確認できればいいのですが、人によっては携帯電話が無い方や、やり方がわからないという方もおられるのではないでしょうか。
 電話というのは割と確実なのですが、いざというときに電話してくれる相手を事前に見つけておかないと、そもそも電話がかかりません。
 お隣や近所と顔見知りであれば、そちらに頼んでおくのも手だと思います。
 災害時に自分が安全に生き残るための情報の入手方法は、平時に自分が準備しておかなければなりません。
 自分にどのような情報入手方法があっているのかを考えて、いざというときにきちんと手元の情報が来るように、今から準備しておくことをお勧めします。

「だろう」と「かもしれない」

 運転免許を持っている方はご存じと思いますが、運転時には「だろう運転」ではなく「かもしれない運転」をするように教わっています。
 自分にとって都合の良い解釈で車を走らせるのではなく、危険が起きるかもしれないと考えながら運転をしろということなのですが、これは災害対策でも同じことが言えるのですが、なぜか災害時には、殆どの人は避難しなくてもすむような理屈を考えて手遅れになってしまったり、災害後のことを考えるあまり、あれこれと悩んでいるうちに被災してしまう方がたくさんいます。
 これらの共通することは「自分は死なないだろう」という考えですが、そんなことはありません。災害時にうかつな行動をしたり、判断が遅ければ死ぬ。自分だけは死なないという根拠はどこにもありません。
 運転時に何かおきるかもしれないと考えるのと同じように、災害対策では死ぬかもしれないと考えて、死なないための準備をしてください。
 あなたは小説や漫画の主人公ではありません。死ぬときにはあっけなく死んでしまう存在。それを忘れずに、しっかりと対策を考えていきたいですね。

自分専用の道具を優先的に準備する

 災害時に持ち出す非常用持ち出し袋の準備はお済みですか。
 明日からは新しい年度に入りますので、引っ越しをしたり、生活環境が変わる方は、ハザードマップや周辺環境、避難や避難後の生活に必要なアイテム類の準備や確認をしておくことをお勧めします。
 さて、災害後の対策で優先的に準備するものとしては、一番最初はトイレです。さまざまなトイレがありますが、あなたは準備したトイレを使うことができますか。
 二番目は水です。災害発生後には断水することが多いので、飲料水の準備はもちろん、生活に使うための水も準備しておきましょう。
 では、その次に準備すべきものはなんでしょうか。
 これはあなたが普段の生活で必要としているが、他の人にとってはそこまで重要では無い品物になります。
 たとえば、眼鏡、老眼鏡、補聴器、杖、車いすなど、あなたが生活をするために必要な道具があるならば、それらの道具は優先して準備しておく必要があります。
 災害時の緊急支援物資では、多くの人が必要とするものが最優先されるので、特定の人が必要となる道具は後回しになるか、もしくは配慮されません。
 そのため、そういった道具が必要な人は自分であらかじめ準備しておく必要があるのです。
 災害後に自分で情報を確認できなかったり、移動できなかったりするのは生活をするのに困ったことがたくさん発生する元になります。
 非常用持ち出し袋には、そこまで見据えた道具を準備しておくことをお勧めします。

歯磨きセットは必須アイテム

 非常用持ち出し袋を作るときに見落としがちで、市販品の非常用持ち出し袋に入っていることが殆どないものの一つが「歯磨きセット」です。
 歯ブラシと歯磨き粉、それにうがい用コップをひっくるめて歯磨きセットと呼んでいますが、あなたの非常用持ち出し袋にはこの歯磨きセットが入っていますか。
 実は、被災後の生活では口の中の衛生環境を維持できるかどうかで病気にかかる率がまったく違うことがわかっています。特に高齢者の方の場合は、歯磨きは絶対にしないといけません。
 口の中はさまざまな雑菌の温床になっており、それを歯磨きしてうがいで流すことで一定以上の数を増やせないようにしています。
 でも、災害が起きて歯磨きができない状態になると、口の中にさまざまな雑菌が繁殖し、特に高齢者ではその雑菌が肺炎を起こしたりすることが非常に多くなります。
 避難生活で体調を維持するためには、口の中の環境を維持することが必須なのです。
 歯ブラシが無ければ、口をゆすぐ洗口液や歯磨きシート、ティッシュペーパーなどでも構いませんので、口の中の汚れを落とす習慣だけは忘れないようにしてください。
 災害後の避難生活では、さまざまな理由から免疫が弱ってきます。そうすると、身体のあちこちにいる雑菌が一斉に悪さをしようと活動を始めます。その中でも、口は内臓に直結している部分ですので、口の衛生を死守することが元気に災害後を過ごすことの絶対条件です。
 入れ歯の方の場合には、入れ歯洗浄剤なども非常用持ち出し袋に入れておいて、口の中の衛生環境をできる限り守るようにしてくださいね。

お風呂の残り湯をどうするか

 災害対策のお話をしていると、割とよく出てくるものの一つに「お風呂の残り湯は抜くのが正解か、貯めておくのが正解か?」という質問です。
 答えは「あなたがお住まいの環境によります」ということにしているのですが、お風呂の残り湯というのは案外と使い勝手の悪いものですので、そこだけは留意しておいてほしいと思います。
 お風呂の湯を抜かずに1日おいておくと、なんともいえない臭気がお湯から出てくると思います。特に夏場はひどいのですが、これは人が入浴した後のお湯なので、さまざまな汚れの入った水で雑菌が繁殖した結果です。
 夏場などは特にひどくなりますので、人に直接使うのはちょっとためらわれます。
 浄化キットがあればそれを使えばある程度使える水に変換はできますので、残り湯を使うことを考えるのであれば、水の浄化キットは準備しておいてほしいと思います。それがない場合、庭木の水やりか打ち水、トイレを流すかくらいになりますので、大容量の水ではありますが、過大な期待はしないほうがいいでしょう。
 また、集合住宅で2階以上にお住まいの場合には、大きな地震のときに湯船から残り湯がひっくり返って階下のおうちを水浸しにしてしまう危険性もあります。
 残り湯は抜くのが正解なのかと言われると、集合住宅の2階以上にお住まいなら抜くのが正解と答えます。
 単独住宅の場合には、風呂場が1階にあり、使い道を考えた上で残り湯を残しておくのは良いアイデアだと思います。
 ただ、小さいお子様がいる場合には、残り湯で溺死する危険性は排除できませんので、残り湯は抜いておくことをお勧めします。
 あなたのお住まいの環境でその水をどのように使うのか、そしてそれはどれ位必要なのか。それをきちんと踏まえた上で考えることをお勧めします。

トイレの問題を考える

簡易トイレの汚物の処分はどうやってやる?

 災害が起きて断水すると、多くの場所ではトイレが使えなくなります。
 流すのに水が必要ないくみ取り式や、少量の水で済む簡易水洗であればともかく、充分な水の確保ができなければ原則としてトイレは使用禁止にせざるを得ません。
 避難所の衛生環境が確保できるか否かの一番最初は、このトイレの問題となるのですが、多くの場合、運営者の手が回らずに、トイレの封鎖を行う前に汚物でてんこ盛りになっている状態になってしまいます。
 現在の災害対策支援では、早ければ3日後くらいには仮設トイレが届き始めるそうなので、発災から3日後までのトイレをどうするのかという問題があります。
 防災のワークショップなどではこのトイレづくりも取り上げられたりしていますが、実際に作るとなると、手間と時間、それに臭いの問題が発生してきます。
 簡易トイレで出した汚物は、出した先のビニール袋に凝固剤や消臭剤を投入して口を縛り、燃えるゴミなどに出すことになりますが、時間の経過と共に腐敗して臭気がただよい、精神的にも衛生環境的にもよくありません。
 また、できる限り小まめに汚物の回収を行わなければなりませんが、そういった作業をしたがらない人や、できない人も多くいます。
 避難所での最優先課題はトイレだと思いますので、地震による下水管の破断や断水時のトイレの封鎖、簡易トイレの設営、使い方、汚物処理について、あらかじめしっかりと取り決めておく必要があります。
 避難所だけでなく、あなたのおうちでも、自宅避難を行う場合に備えて、準備しておくことをお勧めします。

避難所の表示に注意しよう

 災害が起きた、あるいは起きそうなときは近くの避難所へ避難するように、以前は誘導されていました。
 密を防ぐ必要があるとされている新型コロナウイルス感染症が蔓延してからは、できるだけ安全なおうちでは在宅で過ごし、危険エリアなどに住んでいる人が避難所に避難するように変わってきていますが、災害時には「○○地区に避難勧告」といった風に安全かそうでないかを考えない状態で避難指示が出させることが多いです。
 ところで、避難所にはそれぞれの災害に対応しているか否かがわかるようになっています。以前は「避難所は災害全てに対応」のようなイメージだったと思いますが、現在では「該当する災害に対応している避難所へ避難」となっていて、ハザードマップはもちろん、避難所にも可能な限り対応表を貼り出すようになっています。

 この対応表、どこの避難所でも周囲からよく見えるところに貼ってあるのですが、結構気がつかない人がいるようで、水害が起きそうだからといって水に浸かるエリアにある避難所に避難しようとする人がいます。
 せっかく貼り出してあるのですから、お住まいの地域の避難所がどのような災害に対応しているのかをしっかりと確認し、避難所で被災することがないようにしてください。

粘膜を守る

 地震では発生直後から、水害では発生して数日すると、地上1mくらいまで細かな粉じんが舞います。
 この粉じん、粒子がかなり細かいものなので、目や鼻、のどといった粘膜につくとさまざまな病気を引き起こすことがあります。
 そのため、背の低い乳幼児やペットの散歩には留意する必要があります。
 また、災害後に行う掃除でも、そういった粉じんが舞うため、粘膜を痛めてしまいますので、しっかりとした対策を行う必要があります。
 鼻や口を守るマスクは必須アイテムですし、できれば花粉症用の眼鏡、または水泳用のゴーグルなどで目を守るようにしたいものです。
 身体につくと、その粉じんを生活空間に持って入ってしまうことになるため、外出時にはできるだけ雨合羽など粉じんが付着しにくく落としやすい素材のものを着用し、帰宅時には家に入る前に外ではたくようにしておくとよいでしょう。

避難するときの格好の一例。

 いずれもちょっとしたことなのですが、災害後に起きる感染症や炎症に対してはかなり有効な手立てですので、非常用備蓄品や非常用持ち出し袋に入れておくといいと思います。
 ちなみに、写真は地震発生後に避難するときに安全が確保されやすい格好の一例です。こういった格好を準備することは難しいかもしれませんが、できる範囲で構わないので、粘膜を保護するための道具も準備し、避難のときやお片付けのときに忘れずに着用するようにしてください。

避難所の安全確保

HUGの様子。基本的なレイアウトが学べる、かも?

 避難所を運営する上でもっとも気をつけないといけないことは、入居者の安全です。
 生活空間なのですから、避難所にいる間はできるだけ気持ちを落ち着かせることのできるような空間作りを考えておく必要がありますが、そこで考えなくてはいけないことは「不審者対策」です。
 この不審者というやつ、ちょっとした気分で発生するやっかいなもので、見知らぬ人であれ顔見知りであれ、あなたにとって不審者になり得るということを気に留めておいてください。
 不審者対策で意識しておきたいのが、あらゆる場所の出入口です。
 この出入口の善し悪しで、ある程度犯罪の発生は抑えることができます。
 悪さをしようという気になっても、物理的にそれを阻止することで安心できる空間作りをするということですね。
 例えば、避難所に立ち入るための出入口はできる限り一カ所に絞った方が目が届きます。情報掲示板や喫茶スペースなどを手近に作っておくことで、自然と人がここを通過するようにしておくと、常にたくさんの目がある状態になるので、外部からの不審者が入りにくくなります。
 また、避難所内部でいうと男女のトイレは可能な限り離しておいてほうが安全です。
 構造的に同じ場所に作らざるを得ない場合でも、出入口を可能な限り離すことで不審な動きをしている人をすぐに見つけることができます。
 着替えや授乳などにスペースも、一般の避難者が出入りするような動線から外れたところに作ると、のぞきに行こうとする人への抑止効果が期待できます。
 できるなら、パーテーションではなく、別に部屋を用意しておくと安心して着替えや授乳をすることができますし、それぞれの部屋には同性の管理者を常駐させておくと、より強力に内部の不審者を抑制することが可能です。
 不審者はありとあらゆる隙をついて犯罪を犯そうとします。
 可能な限り不審な行動にすぐ気づけるような避難所の配置にしておくことで、犯罪を抑止し、避難者の生活を守ることができるのです。
 こういった対策は、災害後に運営しながらやろうとしてもかなり困難が生じます。
 平時にしっかりと時間をかけて、安全な避難所の設計をしておくとよいのではないでしょうか。