小銭が必須なわけ

小銭=10円玉だけとは限らない。

 災害後に停電が起きると、電子マネーやクレジットカードは一切使えなくなります。
 そうなるとお店での支払いは現金になるわけですが、お札は釣銭が難しいことからお店で販売を拒否される場合も出てきます。
 非常用持ち出し袋のアイテムの中に「小銭」が入っているのは、公衆電話を使うときだけでなく、手近なものをお店で購入するときにも必要だからなので、数十円ではなく、ある程度まとまった硬貨を準備しておく必要があります。
 出先で被災するときに備えて普段からある程度の小銭を持って歩いておきたいところですが、せめて100円玉1枚、50円玉1枚、10円玉5枚の合計200円は準備しておきたいところです。
 これだけ準備しておけば、飲み物を1本と、公衆電話での電話くらいはできますし、持ち歩きにもさほど邪魔にはならないと思います。
 小銭はいろいろなところであると重宝します。ちょっとでもいいので普段から持ち歩くようにしておきたいですね。

防災計画は現実的ですか

 東日本大震災における大川小学校の損害賠償請求事件では原告が全面勝訴しています。このことは割と有名な話なのですが、この中で裁判所が「事前防災の予見と不備」を大きな理由にしていることはご存じですか。
 人が集まっている学校などでは、想定されうる災害についてきちんと精査し、条件変更のたびに防災計画をきちんと見直すことが必須とされています。
 詳細は裁判所の判例をご確認いただきたいのですが、筆者の解釈では、この判例の前提にあるものは、学校に限らず、人が集まる施設では起こりうる災害とその対策についてしっかりと精査したうえで可能な限り犠牲者を出さないための対策を行う必要があるということなのではないかと思っています。
 学校や病院、介護施設、保育所やこども園などでは、ほとんどの場合防災計画が作られていると思います。ただ、それはきちんとそれらがある場所の状況を反映し、的確に安全確保ができるものになっているでしょうか。
 特に介護施設などでは、筆者の知る限りでは防災計画のひな型を適当に手直ししたものが備え付けられていることが多いですし、見直しや改訂もまったくされていないものもよくあります。
 法律上は防災計画が立てられていて計画書が備え付けられているので問題がないと判断されるのですが、それで安全がきちんと確保されているでしょうか。
 防災計画を一から作れというのは結構ハードルが高いと思うのですが、これらの施設に義務付けられている避難訓練の状況や結果を防災計画書に反映させることはできると思います。
 もしあなたが防災担当をしているのであれば、今からでも遅くはありません。
 自分の担当している防災計画書を見直し、地域の災害リスクや要件をきちんと満たせているか、そして実際に安全確実にできるような計画になっているかを確認し、しっかりとした安全を確保してください。
 余談ですが、介護施設は特に地域の中では危険な場所に建てられていることが多いです。立地からすでにリスクがあるのですから、しっかりとした対策を作って実行できるかどうかを確認することをお勧めしておきます。

大川小学校津波訴訟判例文(裁判所のウェブサイトへ移動します)

日常生活の中の防災

 防災というと非日常に備えるというイメージがあるようですが、日常生活の中にこそ防災は存在します。
 普段の生活で危ないところや気を付けたほうがいいところは、災害時にも危なかったり気をつけないといけなかったりしますし、普段の生活でやっていないことは非常時にできるわけはありません。
 災害という非日常では、普段の生活がより極端に出てくるだけですので、防災というのは日常生活の延長線上にあるのです。
 そう考えると、普段からちょっと気を付けておけば非常時にも備えることができることになります。
 災害は非常事態ではありますが非日常ではありません。日常でのいいこと悪いことが極めてわかりやすく極端に見えるだけなのです。
 日常生活の中にこそ防災があるのだという意識で、何気ない日々の生活に災害対策を取り入れてほしいと思います。

地震の強さと時間の関係

 地震の強さと揺れている時間は割と比例しているようです。
 気象庁のウェブサイトによれば、「日本付近で発生する地震による強い揺れは、マグニチュード7クラスの地震であれば約10秒間、マグニチュード8クラスの地震であれば約1分間、マグニチュード9クラスの地震であれば約3分間継続します。」とあり、強い地震ほど長く揺れる傾向があるようです。
また、マグニチュード自体は小さくても、震源が複数になると長くなる傾向があります。
 例えば千葉県によると、関東大震災はマグニチュード7クラスの地震が3回立て続けに起こったとされており、5分程度揺れていたようです。
 揺れる力が強いか、揺れる時間が長くなれば被害は大きくなりますが、実際にいつどんな地震が起きるのかは、起きてみないとわからないというのが困りものです。
 世界的に大きな地震が毎日のように起きていますが、地震の揺れが長いときには、とりあえず大きな被害が出そうだなという意識でいれば間違いなさそうです。
 ちなみに、マグニチュードの数字が一つ大きくなると、その力は約32倍に増えます。単純に乗数で増えていくので、例えばマグニチュード1と3では、数字が2つ大きくなるので32×32=1024となり、力の強さは約1,000倍大きいことになりますので、マグニチュード7や8では大きな被害が出るというのはイメージしやすいのではないでしょうか。
 ともあれ、揺れている間の時間は体感的には短い時間でも非常に長く感じるものです。大きな揺れが収まったら、とりあえず安全確保、それから情報収集をするようにしてください。

気象庁:震度・マグニチュード・地震情報について(気象庁のウェブサイトへ移動します)

関東大震災(関東地震)(千葉県のウェブサイトへ移動します)

とりあえず試してみること

 災害後の生活では、さまざまな人がさまざまな代替品・代替手段の情報を提供していますが、その代替品や代替手段を実際に試してみた人はどれくらいいるでしょうか。
 例えば、トイレ問題。
 トイレが使用できない場合には大人用のおむつをつければ安心です、といった話を見ることがありますが、実際につけてみたところ、吸収した後の状態がかなり気になって気が散り、筆者自身は何かに集中することはちょっと難しかったです。
 むろん全く気にならない人もいると思いますのであくまでも個人的な意見ですが、それを体験したことにより、筆者自身は便器につけられる簡易トイレを数日分準備することにしました。
 ちゃんとしたおむつでもかなり気持ち悪く感じるのですから、赤ちゃんのおむつの代用品としてよく紹介されているタオルとポリ袋などは、赤ちゃん大泣きまっしぐらになると思います。
 タオルとポリ袋の組み合わせは、普通の布おむつと同じ状態なので、赤ちゃんが排せつするたびに替えてやる必要があります。でも、被災直後にそれだけ衛生的なタオルを準備できるのであれば、最初から紙おむつを準備しておけという話になります。
 試してみると意外なことがわかることは他にもたくさんあります。
 いろいろとやってみている筆者ですが、印象としては普段の生活で使用しているものはできる限り普段通りのものが使えるように準備し、そうでないものについては代替品や代替手段を知っておくことがいいようです。
 代替品はあくまでも代替品。代替手段はあくまでも代替手段。
 とはいえ、代替品や代替手段でも自分は大丈夫かもしれません。それを確認するためには、平時にいろいろと試してみること。
 そうすることで自分に必要な準備が見えてくると思います。

小さな危険で学ぶ

空き缶クッキングでは刃物も使うし火も使う。でも、気を付けていれば事故は防げる。

 最近はちょっとでも怪我をすると管理責任を問われるそうで、自治体の作る公園などから遊具がどんどんと撤去されているようです。
 ただ、怪我をしないということはそれが危ないということが体験的に理解できないということなので、本当にそれでいいのかなと考えてしまいます。
 例えば、身近な話では包丁を子供に使わせるのは危ないからやらせないというおうちがあるそうです。
 では、包丁が危ないということを、やらせないという人はどうして知っているのでしょうか。包丁で指を切ったりするような怪我をしているからこそ、危ないし痛いことを知っているのではないですか。
 人の成長が基本的なことを体験や経験から判断するようになっている以上、ある程度の危ないことは体験しておかないと最終的に大けがや死を招くような失敗をやってしまうのではないかと心配してしまいます。
 ちなみに、当研究所のやっている子どもの防災キャンプでは、直火や刃物を使うことがあります。また、さまざまなぱっと見に危ないことをやることもあります。
 ただ、その中で指を切ったりやけどをしたりすることで、取り扱いに気を付けるようになりますし、同じ失敗はしないということが殆どです。
 危険であることは変わらないのですが、その危険の危ない理由を知ることで、危なくない使い方、あるいは危険回避の方法を学ぶことができるのではないかと思います。
 小さな危険を見守ってやり、大きな危険を防いでいくのも、危険なことをさせないという一つの方法なのではないかと思います。

消火器は備えていますか

 災害時に限らず、日常生活でも火事を誘発するようなちょっとしたミスをすることがあります。
 実際、どのタイミングでどんな場所から出火するかはわかりません。
 消火用水バケツを用意している人もいるとは思いますが、てんぷら油などの油火災や漏電、ショートによる電気火災では水での消火は厳禁です。
 消化能力やさまざまな火災に対応しているところを考えても、消火器は必須のアイテムだと思っています。
 書いている筆者自身も、ある時立て続けにボヤを出し、スプレー缶タイプの携帯消火器がなかったら、家が丸焼けになっていたかもしれないという事態になったことがあります。
 消火器は粉末式でなくても構いません。スプレー缶の炭酸ガス式のものでも初動であればしっかりと消せます。
 気を付けるのは、できる限り普段火を使う場所に近いところに置くことと、冷静になることです。
 そして、火が見えなくなってもスプレー缶からガスが出なくなるまでは徹底的に火元に吹き付けること。
 どうせ中途半端に残っても使い道に困るので、完全に無くなるまで吹き付けてやりましょう。
 本式の消火器は少々火が強くてもしっかりと消すことができます。
 スプレー式の簡易消火器と、しっかりと消せる消火器。
 それぞれに準備して、いざというときに備えておきたいですね。

基本は自宅避難です

 災害対策の考え方の普及が進んだのか、それとも新型コロナウイルス感染症などで敬遠されているのか、在宅避難の人はかなり増えているのかなという気がします。
 自治体が設定している指定避難所の収容人数を確認すればわかるのですが、もともとその地域の人間をすべて収容できるような避難所はほとんど存在しません。
 避難しないといけない状況にある人が他に選択肢のない場合に自治体の設置する指定避難所に避難するというのが考え方の根底にあるからです。
 また、物理的に避難地域の全ての人を収容できるような施設がないということもあると思います。
 ではどんな前提で避難所に避難する人が決まるのかというと、以下の図のようになります。


 まずは自宅にいることができるのかどうかがスタート。
 自宅にいられない場合に、他の家族や知り合いなど、避難しなくてもいい人たちの家などに避難できないか、また、安全な場所にある宿泊施設などに避難できないかが選択肢に上がります。
 そして、どうにもならない場合に初めて指定避難所への避難が選択されるということになります。
 過去にはなんでもかんでも避難所に避難しろという乱暴な時代もありましたが、これだけ大規模災害が続くとそんなことも言っていられないということがわかってきたようです。
 避難指示が出ても、それはあなた特定の話ではなく、その地域全体の話です。
 まずはそれが自分に当てはまるのかどうか、そして当てはまっている場合にはどこへどうやって避難するのかについて、可能な限り事前にしっかりと決めておくことをお勧めします。

避難所支援で必要なもの

 避難所ではさまざまな物資が欠乏することが多いのですが、これは時期によってどんどん変わっていくもので、情報が出されたときにはすでに充足している場合もかなりあります。
 SNSで支援要請を行うときには「いつ時点」という表記を入れるようにするということがだいぶ浸透してきてはいますが、正直なところ「もの」を送るという行為に対しては素直に喜べないなと思うところがあります。
 もちろん支援物資を抱えて自力で被災地に持ち込み、そして被災者に直接配布するのであれば、必要なところを探して回れますので、物資の配布という点だけなら、極端に大きな問題にはならないと思います。
 ただ、「〇〇が不足」という情報を元にしてその「〇〇」を宅配便などで送りつけるのは止めた方が無難です。
 これを行うと、そもそもいつ届くかわからない上に被災地までの物流に極端な負荷をかけることになり、届いた後は被災地での配布で人的・場所的資源を取られてしまいます。正直なところ、届く時期が「未定」や「1週間程度」となっている場合には送らないほうが無難です。
 善意から出た行為が現地の負荷になってしまっては何の意味もありませんので、それを考えた支援が必要だと思います。
 足りない物資を届けたいなら、自分で買い付けて自分で送る必要はなく、例えばアマゾンの「ほしいものリスト」などを選択して送ることは一つの手です。
 また、被災している行政機関や支援団体に現金を寄付するのも手です。
 例えばある避難所で水が足りないからと言って、被災地全体に水が足りないとは限りません。別の避難所では水が余っているのかもしれません。
 そういった調整をせずに水が避難所に送り付けられる頃には、水の余っていた避難所から水が届けられて充足していて、あとは届いた大量の水が倉庫や保管場所を圧迫するという状態になってしまいます。
 こういった事態を防ぐために現地で支援物資の調整を行っているのが被災している自治体や支援団体ですので、そういった人たちに支援金が届くと、かなり効果的にお金を使ってもらえます。
 避難所支援というとどうしても物資に目が行きがちなのですが、それを届けるための物流や保管場所がどうなっているのかについてもきちんと確認してほしいと思います。

【活動報告】研修会「調理師が教える簡単・おいしい非常食づくり」を開催しました。

研修会の一コマ。それぞれがそれぞれのご飯を作りました。

 去る2月23日に益田市駅前町のNICO HOUSEにて、調理師が教える簡単・おいしい非常食作りを開催しました。
 当日は調理師の秋田様をお迎えし、ポリ袋を使ったさまざまな調理を実際にやってみました。
 ごはん、パスタ、そして茹でパンを一つの鍋で作り、ちょっとした工夫で本当に美味しくいただくことができました。
 非常時にも、あらかじめできることを知っておくことで生活の質を下げずに済ませることができます。
 なかでも暖かい食事は気力を維持するために絶対必要なものですので、作り方をしっかりマスターしてもらえるとよいなと思います。
 ご参加いただきました皆様、そして講師の秋田様に厚くお礼申し上げます。