支援物資の行方

 大規模災害が発生すると、SNSやマスメディアなどで盛んに「〇〇が不足しています」という情報が飛び交います。
 それを聞いた人達はなんとか支援できないかと買い出して宅配業者さんにその荷物を託すことが多いのですが、ここでちょっとした問題があることを考えていただければと思います。
 一つ目は、発信されている情報がいつ時点のものなのかということです。確かに情報を発信した時点では不足してるかもしれませんが、その後何らかの形で物資が足りているという可能性があります。
 これについては、SNSで発信する人達がいつ時点の情報なのかを本文中に書くようにしたり、複数のSNSの発信を追いかけることである程度の状況は把握できると思います。
 二つ目は、宅配業者さんの配達網が現地で完全に確保されているのかということ。大規模災害でもエリアが限定的であれば、宅配業者さんは条件付きで配送を受け付けることが多いです。
 条件付き、というのは、例えば「いつ届くのかは確約できない」や「場合によっては届けられない」という内容ですので、送られたアイテムは必要な時に必要な場所に届かないということを理解しておく必要があります。
 そして、それらのアイテムには使用期限がついています。大量に届いたアイテムは保管場所を取られるばかりか、使用期限が切れるとただのゴミとなり、処分費は届けられた自治体の財政を意図せずに圧迫することになります。
 例えば、国内の大規模災害時に大量に送られてくる古着などは、その多くがゴミとして処分されているのですが、あなたはそのことをご存じでしたか。
 また、九州北部豪雨で送られた大量の水のペットボトルがその後どのようになっているかを調べたことがありますか。
 善意から送られたアイテムであっても、必要な時期、必要な場所に届かなければかえって迷惑になることがあることを知っておいてください。
 では、タイムリーに届けるために、そういったアイテム類を直に届ける場合にはどうなるのか。
 幹線道路が確保されており、支援物資を届ける車両の通過が許可されている場合には、要求のあった避難所に直接届けることは可能だと考えます。
 ただ、現地が混乱している状況で物資を届けようとする場合には、送る側にもそれなりの覚悟がいります。道路が寸断されていたり、通行止めになっていたり、目的地の手前で何百キロも迂回を余儀なくされる場合もあると思います。また、送り届けるための車両の燃料も自力で調達しておかなければなりません。それから、現地に届けたとしても、すでにその物資が充足していて持ち帰ることになることも可能性としては考えられます。
 それでも届けたいという強い意志があるのならば、要求のあった避難所と調整をして持ち込んでもいいでしょう。
 誤解の無いように書いておきますが、多くの人の善意が無駄だと思っているわけではありません。
 情報が発信された時点では、間違いなく不足している物資なのですから、助けてあげたいという気持ちで送る気持ちになることは大切だと思います。
 ただ、それが無駄になったりゴミになったりしてしまうようなことはしないで欲しいということです。
 私自身は、現地の支援団体や自治体に現金を寄附するか、もしくはAmazonなどが行っている「欲しいものリスト」を使った被災地支援を行った方が効率的だと考えています。
 必要なものや必要な場所は時間とともに変化していきますから、その変化に対応できて必要とされるものを必要とされる分届けることのできる方法を取った方がよいのではないでしょうか。
 支援は受ける人もする人も幸せになってこそ意味があると思うのですが、あなたはどう考えますか。

災害時に不安や緊張を緩和する方法

 被災後には災害に対するトラウマやこの先どうなるのかと言った見えない恐怖からくる不安などにより、寝が浅くなったり食欲が落ちたり、逆に過食になったりする不安定な精神状態に陥ることがあります。
 その時に役に経つのが「タッピング」です。タッピングセラピーやタッピングタッチとも言われるようですが、指先を使って身体のあちこちを優しくタッピングしてほぐしていくという内容です。
 一人でもできますし、二人でもでき、道具もいらないため、被災地での災害支援の一つとして取り入れられています。
 別に災害時に限らず、日常生活でのちょっとした緊張などをほぐすのには便利ですから、やり方を知っておいて損は無いと思います。
 慢性的な肉体的・精神的病気はお医者様にお任せするとして、ちょっとした不調のときなどに試してみてはいかがでしょうか。

タッピングセラピー・ストレスケアの手順」(一般社団法人日本TFT協会のウェブサイトへ移動します)

タッピングタッチ・はじめてみよう」(一般社団法人タッピングタッチ協会のウェブサイトへ移動します)

支援物資の物流について考える

 災害後の復旧が速やかに進むかどうかは被災者の安心をいかに獲得するかにかかっています。
 必要なものがきちんと手に入る、衛生環境が確保できるといった条件が満たせれば、とりあえずの混乱は防ぐことが可能です。
 そのためには、支援物資を輸送するための物流網を確保する必要があります。
 大量に支援物資を運び込み仕分けをして被災地へ輸送する物資集積拠点、そして被災地内で小分けし、各避難所へ配送する物資集積基地、最後は避難所にできるデポ。
 これらが上手につながることが必要となってきますが、こういった物流網を行政が設計・管理することは、人的にもノウハウ的にもほぼ無理です。
 立て続けの災害のおかげで、物資集積拠点や物資集積基地の指定や運用は運送業者さんに任せた方が効率的だと言うことが認識されてきたようですが、物資集積基地からもよりのデポ、そしてデポから被災地の住民に物資が渡る部分が現在うまくつながっていないところが多いです。
 運送屋さんが避難所まで持ってきた物資をいかに早く確実に必要とされる人の手に届けられるのかというところは、被災前にどれくらい物流について真剣に考えてきたかに比例しますから、避難所運営委員会がそこまで考えて運営設計をしているかどうかが鍵になります。
 避難所は物資と情報の両方が集積する場所ですから、それらを避難所への避難者だけではなく、被災地域の人達に物資や情報を届ける必要があります。
 災害対策のラストワンマイルと呼ばれる避難所から地域の被災者への物資や情報の伝達方法を、一度検討してみて欲しいと思います。

火を起こせますか

 災害後、どうかすると火を自分で作らなければいけない事態が起きることがあります。
 昔はたばこを吸う人があちこちにいて、火をつけるためのライターやマッチを持っていたものですが、最近は電子たばこになったそうで、マッチやライターは使わなくなったと聞きます。
 簡単に火をつける道具を持っていればいいのですが、そうでない場合には何とかして火をつける必要があるのですが、あなたは火をおこす方法をどれ位知っていますか?
 火打ち石やファイアスターターに始まり、虫眼鏡やペットボトル、太陽光反射や摩擦による火起こしまで、火を作る方法はいろいろとあります。

摩擦熱による火作り。煙から火を作り出すのがかなり難しい。


 ただ、その方法を知らなければ何の役にも立ちません。
 最近は火は危ないと言うことで日常生活からどんどん遠ざけられていますが、危ないからといって知らなければ万が一の時には自分の命が危なくなります。
 あなたが持っている非常用持ち出し袋や備蓄品のセットで火を作ることができますか。また、火を維持することができますか。装備の見直し時には、そういった点も考えながら準備してください。

安全の優先順位

 「安全は全てに優先する」というのが建設現場などで掲示されていることを見たことはありませんか。「セーフティーファースト」の日本語訳だそうですが、「安全第一」という方がわかりやすいかもしれません。
 ただ、この安全に順位があるとしたら、あなたはどう考えますか。
 災害対策では、この安全の定義がよく変わります。
 発災直後では、安全とは「身体の安全」に他なりません。何を置いてもまずは逃げて自分の命を守ることが最優先される安全です。
 発災後は、自分がこの先どうなっていくのかという不安を解消することが優先される安全になってきます。
 そして、発災後しばらくすると、今度は収入や仕事、衣食住といった生活の安全が優先されています。
 それぞれ全て安全には必要なものなのですが、時期と状況によって優先されるべき安全の順位が異なってくるということで、防災支援活動では時間の経過によって変わるこれらの優先順位にどう答えていくのかが大切になります。
 被災後にすべてが元通りになることはありません。ですが、被災者の居心地のよい安全を確保するためにさまざまな支援を行っていく必要があるのです。
 コロナ禍で起きた災害では、災害復旧を支援する人達はかなり限られた状態になりました。その結果、復旧が遅々として進まない状況の場所もあるようです。
 そんな中でも、被災者の安全を確保するために、現地の支援者達は様々な知恵や工夫を凝らして活動をしています。
 あなたに考えておいて欲しいのは、もしも自分が被災者になったとき、さまざまな安全をどうやって確保するのかということです。自分が対応策を準備しておけば、安全が安心に変わって激しく不安にならなくても済むからです。
 そのために作るのがBCP(事業継続化計画。ご家庭の場合だとFCP(家族継続計画)ともいいます)で、実はこれが一番の災害対策といえるかもしれません。
 安全の優先順位は変わっていきます。それに合わせた自分が生きるための継続化計画を、きちんと作っておきたいですね。

避難所に持ってくるものはあらかじめお願いしておく

 平時から避難所運営委員会が機能している地域では、避難対象になるであろう地域の人達に「避難するときに持ってきてほしいものと持ってきてほしい量」についてあらかじめお願いをしているところもあるそうです。
 考えてみれば、避難所として指定されている場所のうち、どこを最初に使うのかやどんなものが使えるのかなど、知っているようで知らないことがたくさんあります。
 小さな集落で普段使っている公民館などが避難先であれば、ある程度どこに何があるかがわかっているので何を持って行けばいいのかイメージもつきやすいと思うのですが、例えば学校や体育館、行政施設といった場所だと、何があるのか何が必要とされているのかイメージが沸かないことも多いと思います。
 避難所が避難所として機能するためには避難が長期化したときにも対応できるだけの設備が必要となりますが、残念ながら大きな場所になればなるほど、避難者用に使える道具がなくなっていくというのが実際のところで、避難時には家からさまざまなものを持参しなくてはいけないことになります。
 でも、例えば「食料はそのまま食べられるものを2日分」とか「水は一日1リットルとして2リットル」といった風に具体的に避難所に持って行くものが指示されていれば、準備する方はそれに従って準備すれば良いのでかなり気分が楽になります。
 いつ避難所が設置され、いつまで耐えればとりあえずの救援物資が届くのかがわかっていればそれまでの命を繋げばいいだけなので、避難所運営委員会の人達も具体的な目安を指定でき、初動は各自が賄ってくれることが基本になっているので、避難所の設置初期におきるさまざまなトラブルの一部でも心配をしなくても済むようになります。
 災害時にその避難所が避難所として機能できるのかということは、恐らく災害が起きてみないとわからないところはあります。
 ですが、地域の避難者を安全確実に受け入れて困りごとをなるべく減らすためには、平時からさまざまな約束事を地域全体で共有しておくことです。
 せっかく地域に避難所が指定されているのであれば、その地域で避難者を受け入れるための避難所運営委員会を普段から開催してお互いの顔つなぎをし、さまざまな約束事を決めておくようにすることをお勧めします。
 避難所に非常用持ち出し袋を持って避難することは自助ですが、避難所の設営や補給物資の管理、そして避難者に持ってきてもらうものを消えておくのは地域における共助になります。
 自助と共助を上手に組み合わせて、避難後に飢えや渇き、睡眠不足で苦しむことがないように準備しておきましょう。

避難所のニーズと避難者のニーズ

 災害で開設される避難所は、災害で住む場所を失った人にとって生活の核となる場所です。
 また、支援物資や情報の集積地であり、場合によっては復旧支援の拠点ともなる、非常に多機能な場所でもあります。
 最近はコロナ渦で在宅避難が推奨されていますが、それでもさまざまな事情で住むところを失い、避難所へ逃げ込む人がいなくなるということは考えにくいことです。
 その時に少し注意をしなければいけないことは、避難所における支援物資の要求を始めとするさまざまな支援要請の仕方です。
 避難所での避難者が多いほど必要とされる物資やサービスは多岐におよぶことになりますが、その際にその避難所でそれを必要とする人が多いほど要求の優先順位があがるということが起こります。
 逆に言うと、そのアイテムがないと生活が立ちゆかなくなる人であっても、そのアイテムを必要とする人が少数であれば、避難所としての優先順位は下がると言うことです。例えば、乳児用のおむつが欲しいと思っても、その避難所で多くの人が必要としているのが大人用おむつであれば、届くのは大人用おむつが優先されて乳児用はいつまでも届かないことになります。
 また、避難所では避難所を運営するための運営委員会が結成されますが、その委員達が不要と判断すれば支援物資の要求さえされないということになり、過去には生理用品を始めとする衛生用品が運営委員により不要とされてしまってその避難所で生活する人達が困ったというようなことが起きています。
 こういった隠れてしまうさまざまな要求を発掘するためには避難者から直接意見を確認できる場が必須となりますが、行政はどうしても平等という部分に拘って後手に回ってしまうため、NPOや支援団体がそれぞれに立ち入ってそれぞれの対象者からニーズを引き出すという作業を行っています。
 これはどちらがいいというわけではなく、避難所としてのニーズと、避難者としてのニーズが異なっているだけですから、対応が異なってくるのも仕方が無い部分があります。
 最近ではSNSで避難所で不足しているものの支援要求をすることも増えていますが、そのSNSでの発信は「避難所のニーズ」なのか「避難者個人のニーズ」なのかをしっかりと見極めないと、SNSを見た人が一斉に支援に動くと避難所に同じものが大量に届いて逆に困ったと言った事態も起きます。
 支援要求をする際には、それが誰のニーズなのか、いつ時点のニーズなのかをはっきりさせ、具体的に必要とする数量もあわせて発信する必要があるということを情報を出す側も受け取る側もしっかりと考えておく必要があると思います。
 一番いいのは、できるだけ避難者のニーズは自分の非常用持ち出し袋に詰めておき、ある期間は自分のニーズを出さなくても大丈夫なようにしておくことです。わかっているものはあらかじめ避難所にある程度ストックしておくことも一つの方法でしょう。
 避難所のニーズと避難者のニーズは異なり、それぞれに分けた対応が必要なのだと言うことを前提にして、支援物資やサービスを届けたいですね。
 余談になりますが、避難所の支援でもっとも問題となってくるのが水です。避難した時点では確かに不足しているものなのですが、給水車や行政の支援物資として真っ先に供給されるのも水ですから、遠方で飲料水を買って宅配便などで送ったとしても届く頃には充足していることが殆どです。
 もし送るのであれば、それが本当に支援になるのか、現地の場所取りになってしまうのではないかを充分に考えた上で送られることをお勧めします。
 また、避難所支援といって古着を大量に送る人もいますが、被災者はほとんど着ません。逆の立場になってもらえればわかると思うのですが、さまざまな形で新品が供給されることが多いので、古着はただのゴミです。
 災害ゴミを処分しなければならない環境にさらなるゴミを追加することは絶対に止めましょう。

【活動報告】「災害時外国人サポーター養成研修」を受講しました

 10月4日に江津で開催された島根国際化センター主催の「災害時外国人サポーター養成研修」に当所から2名参加し、研修をうけてきました。
 「災害時外国人サポーター」というのは、主催者の説明によると災害時に島根県と島根国際化センターが共同で設置する多言語支援センターからの依頼を受けて、「掲示物の日本語をやさしく分かりやすく翻訳する」「被災した日本語がうまく使えない外国人の困りごとを聞き出す」といった仕事をするボランティアなのだそうです。
 日本語しか話せなくても大丈夫なボランティアだということで、筆者も登録していたりします。
 災害後、避難所に掲示される情報は日々更新されていきますが、日本語がしっかりと読める人が対象の文書が多く、言い回しも特殊なものが多くなります。
 それらの文章をわかりやすく、やさしく、必要な情報に絞った日本語への再翻訳を行うことで、簡単な言葉なら理解できる外国人等に正確に情報を伝えることができます。
「やさしい日本語」といわれるこの翻訳は、普段使っている言葉の意味をわかりやすく書かなければいけないということで、結構頭を使います。正解はないのですが、どうやったらうまく伝わるのかを考えていくのはなかなか面白いものです。ある部分では普段使っている言葉を再発見しているのかもしれません。
 また、避難所へ巡回して日本語がうまく使えない外国人の困りごとを聞き出すという仕事ですが、これは避難所内での意思疎通をうまく図るために必要なことでもあります。
 避難所は避難所運営委員会が設置されてその避難所に関する必要なものや情報を避難者に提供することになるのですが、このときにどうしても少数派の意見は通りにくくなります。
 例えば、大きな声で自分の意見を主張できる人の意見は簡単に通っても、言葉がよく理解できない外国人他の、いわゆる「言葉がうまく通じない人」のニーズは聞き取るのに手間なので放置されがちですし、「言葉がうまく通じない人」は自分のニーズを自分で上手に伝えることもできません。そのため、例えば災害時外国人サポーターが避難所に立ち入って「言葉のうまく通じない人」のニーズを聞き取り、避難所運営委員会や行政などに繋いでいく必要があるのです。
 また、状況や何が起きているかわからないことからさまざまな方法で自分たちを守ろうとしますが、その姿勢が他の避難者にはうまく理解されずに軋轢が生まれてくることがあります。これらは情報がうまく伝わらないことから発生しているものなので、無用な軋轢や誤解を生まないためにも、情報を全ての人にきちんと伝わるようにする。そのために避難所巡回という形を取って被災した日本語がうまく使えない外国人の困りごとを解決する必要があるのです。
 最近では「VoiceTra」といった優れた翻訳アプリもいろいろとありますから、通信環境が使えるのであれば、日本語しか話せなくても何とかなると思います。
 ただ、気になったことが一つ。最近はコロナ禍で自宅避難が特に推奨されていますので、避難所だけで無く自宅避難している人達のニーズのくみ上げまで考えておく必要がありますが、対象となる人がどこに住んでいるのかがわからないと手のうちようがありません。その情報がどのように提供されるのか、されないのかが不明なため、自宅で放置される外国人被災者が発生するかもしれないと感じています。
 避難所は地域の災害支援の拠点となるところです。そこを拠点としてきちんと機能させるためにも、あらゆる被災者に目を向けてニーズを吸い上げる手段を確保しておく必要があると思います。
 ところで、今日の説明では島根県内でこの制度ができて3年目。そしてサポーターは55名だそうでまだまだ支援を行うには人が不足している現状です。
 近いうちに島根県東部会場でも開催されるような話でしたし、おそらく来年も県西部で同じような研修があると思いますので、どのようなものか興味のある方は、是非一度参加して研修を受けてみてください。
 「災害時外国人サポーター養成研修」とありますが、受講後に登録書を提出して初めて登録されるので、「受講=必ず登録」ではありません。あくまで話を聞いてから判断できるようになっていますので安心して参加してください。
 そして、災害時にはさまざまなボランティアがありますが、こういうボランティアもあるのだということを知っておいて欲しいと思います。

気力の元は暖かい食べ物

 災害が起きた後、何の備えもないまま避難所に避難した場合には「飢えと渇きに悩む」から「配給の非常食+水」になり、「弁当工場の作った冷えたお弁当」となっていきます。
 どうして炊き出しが喜ばれるのかというと、こういった食糧事情なので暖かい物を飲んだり食べたりできないという生活に、できたての温かい食べ物や飲み物が支給されるからです。
 じつは避難所運営で一番ネックになるのが食料を温めるという問題です。電子レンジでもあれば冷えたお弁当を温め直して食べるという手が使えるのですが、何百人、何千人と収容する大きな避難所だと、そういった対応はまず無理です。
 弁当工場で作った物を暖かいうちに運べば良いのではという意見もありますが、弁当作成業者にとって一番怖いのは食中毒です。また、短い時間でたくさんの弁当を作ることは物理的に困難なので、どうしても冷凍保存して出火することになりますから、どうかすると冷たい弁当よりも悪い、どこかしら凍った弁当を食べる羽目になったりします。
 避難所全員の弁当は難しいかもしれませんが、せめて自分の家族分だけでも温かい食事を取ることができれば、気力を維持することは可能です。
 アウトドア用のガスバーナーやカセットコンロ、焚き火、どうにもならなければ使い捨てカイロでもいいので、非常用持ち出し袋には温める道具を準備し、食事はできるだけ温めて食べるようにしてください。
 温めた食事は心を落ち着かせ、身体もリラックスさせる効果があります。災害後に元気に復旧を進めていくためには、しっかりと暖かいものを口にすることが重要なのです。ただ、温めた食事は食べきらなければすぐに傷んでしまいますので、食べられない場合には残った物は速やかに処分してください。
 食事や飲み物をしっかりと温めて、食事で気力を失うことがないようにしたいですね 。

あると便利な段ボール

風邪対策の定番、窓を段ボールで覆う。外側から窓に貼り付けることで飛んできた物が窓ガラスに当たって割れることを防ぐ。重量物に備えて内側からも貼るとかなり安心ではある。

 段ボールというのはいろいろなところで使われています。
 どこででも見かけるもののはずなのですが、災害時にいざ使おうとするとどこにもないものの一つです。
 家でストックしておくのも場所を取って仕方が無いのですが、それでもいざというときに備えていくつか段ボール箱をしまっておくと重宝します。
 間仕切りや目隠し、壁や窓の応急処置、組み合わせれば段ボールベッド、いす、トイレ、ダンボハウス、簡易寝袋そして最後はたき付けまで、あると便利なこと請け合いです。

段ボール箱をそのまま寝袋として試してみた。段ボールの弾力で思ったほど寝心地和悪くない。また、保温効果でかなり暖かい。乳幼児が入るサイズにすると体温を維持するのが楽。


 行政では段ボールベッドや間仕切りなどは段ボール業者さんと提携して、いざというときには持ってきてもらうような協定を結んでいるところも多いのですが、段ボール業者さんも普段からたくさんストックしてあるわけではないので、大規模災害の時などには生産が間に合わないと言ったことも起きています。

市販の災害用段ボールベッド。ベッドの下は箱になっていて、生活用具をいろいろ仕舞えて便利

 平時に必要量をストックしておくのが一番良いのですが、予算と場所の兼ね合いからなかなか難しいというのが現実みたいです。
 自宅避難を考えている場合には、どこに家の中のどこに段ボール箱があるのかを確認しておくと、必要なときに使えて便利です。普段は何かを収めておき、いざというときには防災グッズとして使うというのもいいと思います。
 保温性があって、非常に使い勝手のよい段ボール箱。非常用グッズを収めておいて、災害用品の一つとして考えるのもよさそうだなと思います。