被災地支援の時のお願い

 災害が発生したというと、担当の自治体はさまざまな対応に追われるわけですが、その中でどうにもやるせなくなる対応があります。
 それは「被災地支援をしたい」という被災地以外からの問い合わせが異常に多くなること。団体や組織だけではなく、個人からの問い合わせもたくさん来ます。
 「支援物資を送る先を教えて欲しい」や「○○できるから現地との調整をしてほしい」など、さまざまな内容なのですが、ここで感覚の違いというのが出てきます。
 というのも、被災地ではまだ災害対応の真っ最中であることが非常に多いからです。
 救助、救命、道路開削、補給路確保、被災者対応など、災害の緊急対応は災害が収まってからが勝負です。
 マスメディアによる災害報道では、「災害が起きた」という過去形で報道されますが、被災している地域では、災害はまだ現在進行形。
 消防、警察、自衛隊、自治体、そして災害対応のプロ達がそれぞれの分野でその能力の全てを使って災害を終わらせようとしています。
 そんな状況で災害ボランティアや被災地支援の話をされても、まだ誰も対応ができませんし、へたすると邪魔にさえなってしまいます。
 せっかくの善意の申し出が、現地の救助や安全確保の妨げになってしまうことは、だれも望んでいないことではないでしょうか。
 繰り返しになりますが、被災地外から見ると災害は「起きたこと」という過去かもしれませんが、被災地ではまだ災害は現在進行形で「起きていること」なのです。
 とりあえず、現地が落ち着いて救助や安全確保が終わるまでは災害ボランティアや被災地支援の出番はありません。
 逆に言えば、現地が落ち着いてからが災害ボランティアや被災地支援の出番なのです。目安は、現地に災害ボランティアセンターが設立されたかどうか。
 発災後、およそ4日目から1週間くらいあとからが、災害ボランティアの出番だと考えて、それまでは現地への問い合わせも止めて、準備だけを進めておいてください。
 被災地復旧の主戦力は災害ボランティアですから、プロの仕事が終わった後で、思う存分復旧・復興の被災地支援をしてほしいなと思います。

災害ボランティア登録のすすめ

 被災地の復旧の重要な戦力として災害ボランティアがあります。
 ここのところ毎年大規模災害が起きているのですっかりお馴染みになりましたが、いつどこでどんな形でどんな人を募集しているのかという情報は、調べてみても意外とわからないことも多いです。
 ところで、島根県社会福祉協議会様に「災害ボランティアバンク」というのがあって、ここに登録しておくと被災地で災害ボランティアが必要になったとき、さまざまな情報が提供されます。
 災害ボランティアセンターはその地域の社会福祉協議会が中心となって立ち上げることになっている場合が多く、その流れで災害ボランティアについての情報もそちらから受け取ることができるようになっているのです。
 特に、昨今新型コロナウイルス感染症の流行で、どんな状況でどんな人であれば災害ボランティアとして現地入りできるのかといった情報も、災害ボランティアバンクから提供されますので、登録していて損は無いと思います。
 災害ボランティアにはさまざまなものがあり、その全てが災害ボランティアセンターを通すわけではありませんが、個人や団体で安全・安心に災害ボランティア活動をするための手立ての一つとして、島根県内で興味のある方は登録してみてはいかがでしょうか。
 災害ボランティアバンクの詳しい内容については、以下のリンク先をご確認下さい。

島根県災害ボランティアバンク」 (島根いきいき広場のウェブページに移動します)

 ちなみに、当団体も先日団体登録を済ませ、有事には会員を派遣できる体制を整えつつあります。
 いざというときでなくても、災害対策について、そして復旧支援について、勉強しておきたいですね。

【活動報告】災害ボランティアセンター運営者養成講座を受講しました

撮影許可を取っていないため、今回は看板だけ。

 去る6月22日、出雲市の朱鷺会館で島根県社会福祉協議会様主催の災害ボランティアセンター運営者養成講座を受講しました。
 災害時にボランティアを差配するボランティアセンターは、被災地の社会福祉協議会様を中心として設置され、被災地のさまざまなボランティア活動を支援する拠点となるところです。
 今回は4月に起きた松江市島根町の大規模火災で設置された災害ボランティアセンターの活動内容について松江市社協の方からお話を伺い、その後、日野ボランティアネットワーク様による災害ボランティアセンターの運営の考え方やコーディネートの方法の講習、演習などでボランティアセンター運営者としての立ち回り方について学習させていただきました。
 災害時に、被災地ではさまざまな形でボランティアが入って被災地支援を行うことになりますが、そのボランティアの調整や派遣、支援と言った業務は社会福祉協議会様だけで完結できるものではありません。
 縁の下の力持ちということで、目立たないけれど非常に大切な要となる災害ボランティアセンター。
 地元で災害が起きたとき、災害ボランティアとして従事することはもちろんですが、こういった支援側もお手伝いできるような研修体制を組まないといけないなと感じています。
 ともあれ、今回研修の場を設定していただきました島根県社会福祉協議会の皆様、講師をしていただきました松江市社協及び日野ボランティアネットワークの皆様にこころからお礼申し上げます。

支援物資の送り方

 災害が発生すると、被災しなかった地域からさまざまな支援物資が被災地へ送り届けられています。
 ただ、多くは善意で送られたはずのこれらの支援物資が被災者に届かなかったとしたら、あなたはどう思いますか。
 被災地で支援物資を差配するのは行政ですが、ずいぶんとマンパワーが不足しています。そのため、いくら思いのこもっている支援物資であっても、すぐに仕分けができなければそのまま放置されてしまいます。
 落ち着いてきたらいろいろな詰め合わせを作って送るのもいいと思いますが、被災してすぐ、もっとも支援物資が必要とされるときに自分で直接届けない場合には、次のことに気をつけてください。

1.生鮮食料品や賞味期限の短いものは絶対に送らない

 どうしたものか、被災地でも普通に物流が動いていると考える人は多いようで、普段使う宅配便のような感覚で生鮮食料品や賞味期限が短い食品を送る人がいますが、これは非常に迷惑になるので絶対に止めてください。
 大規模災害では道路損壊や交通のマヒ、トラックや運転手不足などで届けたい被災地にいつ届くのかはまったく予測ができません。
 そのため、生鮮食料品などを送ると、届くまでに腐ってしまう場合が殆どです。
 生鮮食料品や賞味期限の短いものは絶対に送らないようにしましょう。

2.一つの箱には一種類、ワンサイズのものだけを詰める

 一つの箱にさまざまなものを入れると、それらを詰め替える手間が発生します。そのため、そういった手間のかかるものは後回しにされることが多いです。
 一番手っ取り早いのは、お店で箱買いしてそのまま被災地へ送ること。
 そうすると割と早く被災者に届くことが多いです。被災地で困っている人のことを考えるとあれやこれや入れたくなるものですが、なるべく仕分けの手間がかからない状態で送って下さい。

3.送る箱には中身が分かるように全ての面に内容物の表示をしておく

 平常時に荷物を送るときには、内容物の説明は書いても上か横の一面くらいだと思いますが、非常時にはすぐに中身がわかるようになっていることが重要です。
 そのため、底辺を除く全ての面に内容物がなにかわかるように油性ペンなど消えないものでしっかりと記載するようにしてください。

4.宅配便業者が物資搬送可の合図を出すまでは業者に搬入しない

 被災地に輸送されるものは優先順位が定められていて、個人や団体での支援物資の位置づけは割と低いです。
 業者の発送案内で到着が「未定」となっている場合や「不明」となっている場合に依頼すると、本来優先される支援物資を保管すべき倉庫の場所を取ってしまうことになります。
 支援物資を購入する前に、必ず宅配業者に状況を聞き、届くようになってから送り出して下さい。

5.送るものは原則新品で

 被災地向け支援物資でもっとも困るのが、実は衣類です。
 大規模災害になると、これ幸いとタンスの肥やしになっていた衣類を大量に送りつけてくる人がいますが、被災者がそれを着ることはまずありません。
 そして、送りつけられたものはゴミとなり、そうでなくても災害ゴミでてんてこ舞いしている自治体のゴミ対策を一層混乱させます。
 政府や行政機関の送る支援物資は全て新品ですので、もしあなたが善意で衣類を送るのであれば、お店で新品を調達して送るようにしてください。

 正直なところ、SNSやマスメディアで避難所が取り上げられ、そこで「○○が足りません」というと、数日後には処理できないほどの「○○」が届いてしまい、最終的に処分に困る事態が毎回起きています。
 一番良いのは、物資ではなく現金を送るか、もしくは自分や仲間達で直接避難所まで届けることでしょう。
 被災地での渋滞という問題はありますが、流通に負担をかけた上にゴミになるよりは遙かにマシです。
 被災地への支援物資を送り出すときには、あなたでなければそれを届けられないのかをしっかりと考えた上で、現地にとってもっとも助かる方法を考えて欲しいと思います。

在宅避難のメリットデメリット

避難所設営訓練の一コマ。新型コロナウイルス感染症対策として、やっとこさで各避難者同士の目隠しを用意する必要性が理解されてきた。

 新型コロナウイルス感染症対策で元々存在していた避難所の問題がクローズアップされるようになってきました。
 元々、行政の設定する避難所の収容人数はかなり無理のある数字があげられていたのですが、新型コロナウイルス感染症対策でパーソナルスペースを確保しなければならなくなった結果、本来の収容予定人数の半分以下、ひどいところになると当初計画の10%程度しか収容できない避難所も発生しています。
 そして、現在推奨されているのが在宅避難。
 避難所ではなく、できるだけ自宅で過ごせるように手を打っておきましょうという方向へ方針転換をしています。
 「在宅避難」とは文字通り災害後も家で過ごすということなのですが、避難していないというといろいろなところに問題が発生するため、在宅避難と定義しています。
 在宅避難では、避難所と比べて次のようなメリットデメリットがあります。

1.在宅避難のメリット

 メリットで最も大きいのが、生活空間を従来通り維持できるということです。
 被災前も住んでいた家をそのまま使うのですから、自分の生活空間は今まで通り。プライバシーも守れて他人に気を遣う必要もありませんからストレスは少なくてすみます。又、感染症に対するリスクも低くて済みます。乳幼児や高齢者、障害者で支援の必要な人やペットのいるご家庭では、基本的にこちらを選択できるような状況を整えておくと慌てなくてすむと思います。

2.在宅避難のデメリット

 在宅避難のデメリットは、避難所への避難に比べると支援情報が入りにくくなることです。
 現在のさまざまな災害支援体制は避難者支援に重点が置かれているので、在宅避難者への情報提供はどうしても遅れ気味になります。
 そして、支援物資が提供されにくいという問題もあります。
 在宅避難者だろうが避難所避難者だろうが、被災者には変わりないので支援物資についてはきちんと提供する義務があるのですが、集積基地となっている指定避難所の運営者がそのことを理解していないケースが割とあって、在宅避難者が支援物資の提供が受けられないということが起こっています。
 それから、周囲が避難所避難を選択した場合、さまざまなことを気軽に相談できる相手がいないという事態が想定されますので、避難先などをあらかじめ聞いておくようにしておくと安心です。

 全ての災害に対して安全な家や環境にお住まいなら在宅避難で問題ないのですが、そうでない場合には、避難すべき災害と避難しなくてもいい災害とを知っておく必要があります。
 ハザードマップや過去の被災事例を確認し、お住まいの家や建物の状況を確認して、想定をしておくようにしてください。
 災害が起こりにくい時期だからこそ、しっかりと確認して備えておきたいですね。

災害ゴミをどうするか

 被災後に大きな問題になるのが被災地から出るさまざまなゴミの処理です。
 被災地を復旧させるためには速やかなゴミの搬出が重要となりますが、被災ゴミはそのままではどうやっても処分に困る迷惑ゴミとなります。
 必要なことは、普段のゴミ処理と同じく、ここでも仕分けです。
 被災ゴミでも、ある程度分類して収集することで、その後の処理が非常に楽になります。
 家電製品、金属ゴミ、可燃ゴミ、不燃ゴミ。
 回収する段階でこれくらいの仕分けでもしてあれば、回収後の処理が非常に楽になります。
 回収後、それらのゴミを分別して置く場所の確保が必要となりますが、もしもあなたが自治会に提案できるのであれば、避難所だけでなくそれらのゴミの回収場所もあらかじめ決めておいた方がいいと思います。大抵の場合、被災後に放っておくと道路の上がゴミだらけになってしまう確率が非常に高いです。
 また、濡れた畳は暑くなってくると自然発火する恐れがあるそうですので、それらはまた別に仕分けが必要です。
 被災後には、ゴミ処理を担当する行政が場所の確保やゴミの搬入方法などを説明してくれるはずですが、日本に住んでいる以上、いつどこで被災してもおかしくありませんので、被災ゴミの処理方法については、機会を見て行政機関に講師を依頼して勉強しておくといいと思います。

常識の共有化をしておこう

 避難所運営において一番問題となるのは、正しいと思っていることと正しいと思っていることのぶつかり合い、常識同士の喧嘩です。
 例えば、避難所におにぎりが避難者の半分しか配られなかったとします。
 あなたは避難所の運営者として、これをどういう風に取り扱いますか。
 老人から渡すという人もいるでしょう。一つを半分にして全員に配るという考え方もあります。子供や妊婦、病人に優先するという見方もあれば、元気な若い人に優先するという考え方も、全部捨ててしまうと言う考え方もあり、千差万別になると思います。
こういったときには、運営者の間で激しくもめることになってしまうことがあります。言っている話は、誰の話もきちんと理解できるもので、お互いの常識がぶつかり合っている状態になっているのです。
 非常時にこういった事態になると、もめたあとはずっとしこりを残すことになり、あまり良い状況を生み出すとは思えませんから、平時に避難所の運営方針について基本ルールを定めておく必要があるのです。
 避難所には当初予定していない状況の人達が避難してくることがあります。避難所の性格上受け入れないと決めることはできませんから、あらかじめそういった人達が避難してきたときにどのように対応するのかを決めておくことが重要なのです。
 さまざまな大規模災害では、必ず何らかのトラブルが起きていて、毎回異なった考え方で解決がされてきていますから、そういった事例を収集して、自分たちだったらどうするかということを話し合っておきましょう。
 時間の関係や情報の集め方などで難しいなと感じるのであれば、クロスロードゲームというのがありますので、これで考え方を整理していくのもいいかもしれません。
 クロスロードゲームは実際に起こった出来事を追体験し、その処置が正しいと思うか他の処置ができたのではないかという意見を出し合うもので、そこから考え方を掘り下げていくとさまざまな意見を擦り合わせることもできると思います。
 あなたの常識が全ての人に通用するわけではありませんし、誰もがあなたと同じように考えているわけではありません。
 自分の常識は他人の非常識、それくらいの気持ちで他人の意見も傾聴できる避難所運営体制も組み立てていきたいものですね。

クロスロードゲームとは?」(内閣府防災担当のサイトへ移動します)

笑いでストレスを飛ばそう

 災害に遭うと、さまざまな不安からどうしても暗い表情になってしまいます。
 日本には空気を読む文化がありますので、大規模災害ともなると、日本中が一様にくらーい雰囲気に包まれてしまってどうにも居心地が悪くなってしまいます。
その上「笑うことは被災者に失礼だ」と、お笑い芸人などにクレームをつける自粛警察の方々が出てくると、笑いを届ける人達が萎縮してしまっていつまでも笑顔が戻ってこない状況になります。
 でも、災害やその後のさまざまな心理的負担に耐えるには、笑うことが重要です。
 笑うことでストレスをはねのけ、気分を切り替え、精神的な元気を維持することは、被災地の復旧復興のためにはなくてはならないことなのです。
 被災地で笑いを届けることは不謹慎だという方もいらっしゃいます。被災地の中でさえ、そういったことをいう方もいらっしゃいます。
 確かに、被災直後に笑えというのは無理な話だと思います。でも、災害との戦いはほぼ長期戦になりますので、難しい顔ばかりしていると身が持ちません。
 笑うことで不安を一時的にでも忘れ、心の均衡を取り戻すことは非常に大切です。
 別に面白い話を聞いて笑わないといけないということではありません。大きな声で笑うこと。大事なのはそこです。
 どうにもならないときには、人目につかないところで大きな声で思いっきり笑ってみてください。おかしくなくてもいいのです。とにかく笑い声をあげること。
 何がどう変わるわけではありませんが、気分的にすっきりします。笑ったという事実が心を軽くするのです。
 被災後に限りません。悩んだときや困ったときなどにも、一度だけで良いので大きな声で思い切り笑うことを試してみてください。特に現在コロナ禍で最近笑ったことのない人がやると大変効果的です。
 本当にすっきりとしますよ。

ヘルプマーク・ヘルプカードをご存じですか

 見た目では判断がつかない身体の内部の障害や難病の人、妊娠初期の人など、援助や配慮が必要だが見た目ではわからない人が身につけ、周囲に援助や配慮が必要であることを知らせるためのものです。
 東京都が考案して全国に普及されてきているそうですが、残念ながら筆者自身はまだ本物を見たことがありません。ただ、調べてみると島根県でも障がい福祉課がこのヘルプマークやヘルプカードの普及を行っているようです。
 ヘルプマークは、赤地に白い字で十字マークとハートマークが掲載されています。そして裏面には、その人がどういったことで援助や配慮が必要なのかという記載がされています。
 ヘルプカードも同様で、このカードの中に支援が必要な内容が書かれていますので、もし障がいのある人からこれらのものが提示されたら、記載されている内容に沿って支援をして欲しいとのこと。
 また、これらが併用される場合もあるようですので、もし提示されたらマークの裏側やヘルプカードの有無を確認をしてください。
 災害時には情報がうまく伝わらない・伝えられないことが数多く発生しますので、こういったことを知っておいて、いざというときにその人を助けることができるといいなと思います。
 内容など詳しいことについては、島根県障がい福祉課のウェブサイトをご確認ください。

ヘルプマーク・ヘルプカードについて」(島根県障がい福祉課のウェブサイトへ移動します)

被災地域での自己防衛

 いやな話になりますが、被災した地域ではさまざまな犯罪が発生します。
 暴力や盗難、性犯罪に至るまで、びっくりするくらいさまざまな事件が起こります。そして、警察力は災害対応で低下しますので、犯罪抑止も難しい状態になります。
 これらから完全に身を守る方法で一番手っ取り早いのは、普段の生活をミニマリストにすることと、被災後は可能な限り早く被災地から待避してしまうことで、被災地にいなければ発災後に起きるさまざまな犯罪から、自身の身と財産を守ることはできます。
 でも、被災地から避難できない人もいるでしょう。そういう場合には、まずは一人にならないことが重要です。
 普段からあいさつを交わして顔を売っておくことで、被災後に不審者と思われずに済みますし、声をかけることで孤立を防ぐこともできます。
 犯罪は対象が無人、もしくは一人であるところを狙って起きることが殆どです。集団化しておくことで、犯罪の発生を未然に防ぐことが可能になります。
 また、可能であれば自治会単位で地域パトロールもすることです。被災地域には、復旧支援の人よりも遙かに早く火事場泥棒がやってきます。それらに活躍させないためには、できる範囲で地域を巡回することです
 犯罪者は人の目をとても嫌がります。複数の目が地域やお互いを見ていることがわかれば、犯罪に遭遇する確率はきわめて低くなります。
 こう書いてくると分かる人も多いと思いますが、被災地域での犯罪発生率の抑制は、平時にどれだけ地域コミュニティが円滑に保たれていたのかと言うことと反比例します。地域コミュニティがしっかりしているところは犯罪発生確率が下がりますし、そうでないところはその逆となります。
 最後に暴力と性犯罪のお話をしておきます。
 防災関係の自己防衛の話では、女性に対しては「被災地では地味で目立たない格好をしろ」「女性を意識させるな」という話をされます。それも大切なことだとは思いますが、それ以上に大切なことは、絶対に一人にならないことです。
 普通、周囲の目があると考えると、犯罪行為を企んでいる人間から見ると非常にやりにくいものです。そのため、さまざまな手を使って狙った相手が一人になるチャンスを伺っています。
 どこへ行くのにも絶対に一人にならないようにすること。できれば同性で群れ、夜中にトイレに行くときでも絶対に複数で行動してすること。これを常に意識して行動してください。そして、女性用トイレや更衣室、授乳室を可能な限り早く整備し、利用する場合には必ず見張りを立てること。顔見知りでも関係ありません。近づけない、見せないようにすることが重要なのです。
 どんな人でも被害者にも加害者にもなり得るのが災害後の環境ですので、特に女性や子どもについては、必ず複数で行動し、昼夜問わず、複数の人の目が常にある状態にしておくことが大切だと思います。