【活動報告】子ども教室ミラコロ様とオンラインで研修会を行いました

 去る2023年7月8日に、三重県の津市とオンラインで結んで、水害に関するお話と蚊取り線香作りの研修会を行いました。
 これは三重県で子供向けのさまざまな活動を行っている子ども教室ミラコロ様のお声がけにより実現したもので、当日は合計2回、総勢18名の方に、会場のある津市一志町周辺の地形分析や危険な場所などについてお話をさせていただきました。
 オンラインによる研修会の講師は初めてだったのですが、非常に参加者の反応がわかりにくくて、どのようにお話したらうまく伝わるのかの手ごたえがわかりにくく、参加してくれた方にちょっと申し訳なかったかなと思います。
 でも、参加してくれた子供たちの中には、説明をメモしてくれたり、親子でハザードマップなどを見ながら過去に起きた水害について話したりしていただけていたようで、ミラコロ様からは非常に有意義な研修会になったとのお言葉を頂戴しました。
 ちなみに、蚊取り線香作りも当初はオンラインでやる予定でしたが、こちらのやり方よりもミラコロ様で考えられたやり方の方が効率がよかったため、現地でお任せして作業を行ってもらいました。
 通信環境やこちらの機材トラブルで子ども教室ミラコロ様及び参加者の皆様にはご迷惑をおかけしましたが、オンラインでもこういった研修会ができるのだなと、正直驚いたのと、こういったやり方でできるなら、全国どこでも安価で研修会を開催できそうだという自信にもつながりました。オンライン研修会に興味のある方は当研究所までお問い合わせください。
 今回オンライン研修会の機会をいただきました子ども教室ミラコロ様,そして参加してくださった皆様に、こころから感謝いたします。

水に浸かるところ、浸からないところ

 大雨が降るたびに冠水したという話が出ますが、どんな雨であれ、冠水する場所の順番はおおよそ決まっています。
 そして、そこが冠水しているのにさらに雨が降り続けているようなら、その冠水している場所が広がってきますので、どういった対応をしなければいけないのかが予測できると思います。
 水の性質として「高いところから低いところへ流れる」と「水は昔の流れを覚えている」というものがありますから、高手にいる人よりは低地にいる人が、山の上に住んでいる人よりは谷筋や平野部に住んでいる人が、雨には敏感にならないといけないわけです。
 地形を見ると、ある程度水に浸かりそうな場所や危険な場所は予測ができます。
 そして、ここ最近の大雨を考えれば、最初に水に浸かるところ、その次に・・・、といった感じで水の動きも読めると思います。
 それが理解できれば、どのタイミングで避難しなければ逃げられなくなるのか、また、雨が止んでからどれくらいで水が引くのかの予測ができます。
 これがわかると、自分が行動すべきタイミングを決めることができます。
 自分の安全管理がより確実にできるようになるということです。
 大雨はどこに住んでいても体験することは確実ですので、ハザードマップや地形図、古地図、そしてちょっとした雨の様子を見ながら、自分にとって安全を確保するための行動をしっかりと決めておいてください。

雨と避難

 大雨が降っているときに危険だから避難しようと考えるのは非常に大切だと思います。ただ、タイミングを間違えると避難している最中に遭難することになってしまうので、避難をするときには十分注意してください。
 水が溢れだして水没が始まった状態になったら、避難はかなり危険だと考えてください。その場合には、上層階への垂直避難を行います。
 ただ、低地にお住いの場合には家がきれいに水没してしまう可能性もありますので、そういった地域にお住いの場合には、他の人よりも気象情報や気象レーダーなどに注意を払っておく必要があります。
 雨だけなら、家の中にいれば問題なくしのげますが、大雨になって水が出たときに危険になります。
 お住いの地域の事情に応じて、避難が必要な場所の場合には近くでどういったことが起きたら避難を開始するのかのトリガーを、普段から観察して決めておくようにしてください。
 また、夜間の避難は相当危険ですので、夜に大雨の予報が出ている場合には、早めに高台に避難することを考えてください。

雨が降るまえに点検はしておこう

 大雨になると、ほぼ毎回田畑の様子を見に行って亡くなる方が出ます。
 気になるから見に行くのでしょうが、実際に現地で見てしまうと、何か手を打ちたくなって動いてしまい、結果的に溺れてしまうようです。
 どうせ見に行っても何もできないのであれば、見に行くのは危険だし時間の無駄です。対策をするのであれば、雨が降り出す前に済ませておきましょう。
 大雨によって起きる被害は、毎回大きく変わるものではありませんから、対策も講じることができるはずです。
 雨が降るまでに対策を整え、雨が降りだしたら、後はお天道様にお任せして自分の安全を確保するための行動を考えること。
 これを徹底するようにしてください。
 大雨による大水は、自分で気をつけさえすれば安全を確保することが可能です。
 雨が降る前に対策をしっかりとしておく。雨が降ったら見に行かない。
 くどいようですが、忘れないようにしてくださいね。

大水の災害時の鉄則

 大雨や雨台風など、大水が出るような災害時には早めの避難という鉄則があります。
 お住いの場所が低地や崖の上や下、水の通り道になっている場所などの場合には、雨がひどくなるような予報が出ているときにはより安全な場所に避難を考えましょう。
 雨が降ることは予測できていますし、レーダー解析などから、その雨がどれくらい激しいのかについてはある程度予測がつきます。
 特に夜間に引っかかりそうな場合には、陽のあるうちに安全な場所に避難を完了するようにしておきましょう。
 夜間の移動は、足元が見えませんし、雨の場合には視界もききません。
 危険度はかなり高いと考えてください。
 水の災害ではほとんどの場合予測ができるので、見極めさえできれば命を守ることはそんなに難しくありません。
 普段の排水状況や雨の降り方、そして雨の予報などを確認しながら、どうやって自分の安全を確保するのかを考えておいてくださいね。

災害対策用設備を過信しない

 人の命を守ることを目的に、はるか昔から、日本ではさまざまな災害対策用の施設が整備されてきました。
 ただ、最初は人の命を守るための設備、つまり避難する時間を稼ぐためのものという位置づけから、いつのころからか財産がくっついて、「絶対に災害を起こしてはならない」となり、どのような悪条件のところに住む人であれ、命と財産を守ることを目的に整備が進められています。
 でも、自然災害というのは昔も今も人知を超えるものがよく発生しているのですが、大きな災害が起きるたびに「想定外」という言葉が飛び出すという首を傾げてしまうような会見が飛び出したりしています。
 日本は昔から災害と付き合ってきた歴史があります。そのため、その土地にあったさまざまな災害を軽減し、避難する時間を稼ぐような仕組みがあったり、揺れて壊れても簡単に修繕できるような構造を取り入れたりしていました。
 もちろん進化し続けている土木技術のおかげで、昔よりもはるかに被災はしにくくなっているのですが、それでも50年に一度や100年に一度という表現が大雨や台風で頻繁に登場しているところをみると、そういった設備は災害を起こさないためではなく、災害時に人が避難する時間を稼ぐためのものと考えておいた方がよさそうです。
 もちろんさまざまな考え方があるわけですが、安全だと言っておいて被害に遭うよりも、災害が起きるかもと考えて行動する方が自分の命は確実に守れると思います。
大きな堤防であれ、ダムであれ、法面を押さえる設備であれ、完ぺきという言葉はありません。
 もしもに備えて、きちんと安全な場所を確認し、どのタイミングでどういう経路でどこに避難するのかを決めておくようにしたいですね。

どんなときに避難がいるのかを知っておく

 災害発生時にお住いの地区に対して避難を呼びかけられることがありますが、この避難の呼びかけはその地区に住んでいるすべての人に対して避難しろと言っているわけではないことをご存じですか。
 市町村が発表する避難レベルは多くは地区単位で発表されるので、安全なところも危険なところもごっちゃになって避難を呼びかけられることになります。
 もしも対象地区の人が全員避難所に避難するとしたら、中に入れない人がかなり出てくるのではないでしょうか。
 実際には「避難指示を出した地区のうち、本当に危ないところに住んでいる人、また危ないと思っている人」が対象となっているので、安全な場所にお住いの場合には、そのままおうちで様子を見ればいいということになります。
 ただ、自分の家が安全かそうでないかを知るためには、きちんとハザードマップを見て住んでいる場所ではどのような問題が起きると予測されていて、どんなときに逃げないといけないのかをしっかりと把握しておきましょう。
 あなたの住んでいる場所に対して、行政は個別に呼びかけたりはしません。あくまでも面としての地域に対しての避難情報の発表となります。
 過去には住んでいる地区に避難指示が出たからと言って、安全なおうちから避難所へ移動中に災害に巻き込まれたりした人もいますので、まずはあなたのおうちの周りの危険から把握するようにしてください。

行政の避難所対策

 研修会などで過去の災害での避難所の写真を参加者にお見せすることがあるのですが、それを見た人の感想というのが「どれがなんだかわからない」というものです。
 もちろん写真の雰囲気である程度の時代はわかるのですが、そこに出てくる風景というのは、それを除けばほとんど変化がないものになります。
 大きな体育館のような場所にござや敷物が敷かれていて、不安そうな顔の避難者が無秩序にプライバシーのない状態で過ごしているという状態。
 もしもお時間があるようでしたら、インターネットで検索してみるといろいろ出てくると思いますので見てみてほしいのですが、これだけ災害の多い国なのにもかかわらず、避難所については何の進歩もないのかなとちょっと悲しくなってきます。
 幸か不幸か、新柄コロナウイルス感染症の流行に伴って避難する最初の時点から空間を仕切るということが行われるようになりました。
 その結果は、避難所の収容人員の大幅な減少ということになり、避難所難民といった言葉が登場したりすることになったのですが、そもそも避難が必要な危険な場所に住んでいる人が相当な数がいるということが、貧弱な避難所の状態の大元になるのかもしれません。
 避難する場所があるだけでもいいというのは確かにそうなのですが、それでも難民キャンプでの最低限人道的な生活を送るための基準、いわゆるスフィア基準を下回るような状態は決してあるべき姿ではないのではないでしょうか。
 現在言われている南海地震・東南海地震が起きた時、どれくらいの人が被災者になって避難所に押しかけてくるのかはわかりませんが、人口が都市部に集中してきている現状を考えると、過去の大災害よりも悲惨な状況になることが予測されます。
 避難所は最後の手段と考えて、被災しないと思われる知り合いなどの家や被災地外の宿泊施設、また、そもそも被災しそうな場所に家を建てないなどして、避難所への避難が選択肢の一番最後になるようにすることと、避難所を細分化すること、そして避難所を設置するためのパーテーションやテント、トイレや生活空間の確保など、個人で準備すると持っていない人とトラブルになりそうな部分については、できるだけ行政が資材を準備しておくこと、そして避難所の運営についてはできる限り地元やボランティアに任せていくこと。
 そのためには、平時にいろいろな準備をしておく必要があるはずなのですが、あなたのお住いの自治体は大丈夫ですか。

知っていること、できること

 災害対策に限りませんが、どんなことでも知っているということとそれができるということはまったく異なるものです。
 防災に関しても、多くの人は頭ではやらないといけないことは理解していると思うのですが、頭で理解しているだけで、いざというときにはまったくできていないということが非常に多いです。
 災害後によく「想定外だった」や「想像していなかった」「予想していなかった」「まだ大丈夫だと思っていた」といったコメントがほぼ必ず毎回出ているのは、頭で理解していると思っていたことができていなかったということの証明になるのではないでしょうか。
 避難訓練や災害対策のあれこれは、わかっているからしなくても大丈夫という方が結構いらっしゃいますが、知っていることとできるということが違うということを理解しておいてほしいと思います。
 頭でわかっているつもりでも、実際にやってみるとさまざまな齟齬が発生するものです。齟齬が出るからこそ、しっかりとした訓練をするわけですし、訓練後の修正点や反省点を確認したり、対策について見直したりすることをしておかなければいけないのです。
 訓練はうそをつきません。
 知っているだけではできませんし、訓練をやっている分だけは、いざというときにも体がしっかりと動くはずです。
 知っていることとできることは全く違うのだということを理解したうえで、防災活動にしっかりと参加していってほしいと思います。

機能を止めない方法を作っておく

どのようなお仕事でも、その仕事が無くなったら困るという方が必ずいるはずです。
特に人にかかわる仕事の場合には、災害でその機能が止まるとさまざまなところに大きな影響が発生しますので、平時に対策をきちんと立てておくようにしてください。
特に保育園やこども園といった小さな子供を預かる施設、高齢者を受け入れるデイサービスなどは、その機能が止まってしまうと家族はその世話をすることになってしまって、おうちの片づけすらできないことになってしまうので、代替策を準備し、災害が発生した時には速やかに代替手段に切り替えるようにして、家族が復旧に専念できるような体制を構築しておく必要があります。
そのためには、保育園やこども園、デイサービスといった施設の職員さんのおうちの災害対策がしっかりとできていなければなりません。
施設のBCPはその施設だけで完結するものではなく、施設にかかわるあらゆる人やもの、組織といったところも含めての対策を作る必要があります。
施設だけではなく、さまざまな企業や組織においても同様です。
自分のところの仕事だけでなく、周囲の人やもの、組織とも連動してBCPを構築することが、地域の素早い復旧のための重要な項目となります。