誰が迎えに行くのか?

 家族一緒に一日中毎日生活している人は、恐らくいないと思います。
 子どもが学校に出かけたり、親は仕事に出かけたり、家にいるお年寄りもディーサービスに出かけていたりして、案外と家に誰もいないということも多いのではないかと思います。
 さて、そんな状況下でもし災害が起きたとしたら、子どもと年寄りをどうやって家に帰らせますか。
 学校や施設が責任持って家まで送ってくれるのであれば問題なのですが、そんなケースはほとんどないと思います。
 多くの場合、何か起きたなら学校や施設まで利用者を迎えに来るように決められているのではないでしょうか。
 もしも災害時の引き渡し方法がきちんと決められていない、または知らないようでしたら、すぐに確認されることをお勧めします。
 保育園や幼稚園では、ほぼこの引き渡し方法が確立されていて、園児の親も大体ルールは知っているのですが、学校に入った途端どうなっているのか分からない場合も多いからです。
 また、お年寄りが出かけている施設でも同じ事が言えます。普段は送迎してくれていても、災害時にどうするのかについては取り決めがないこともあるのではないでしょうか。
 そして、ご家族が学校の近場でお仕事をしているのであればいいのですが、家族が全て遠くに働きに出かけている場合もよくあると思います。
 そういった場合には、家族以外で誰に迎えに行ってもらうのかをあらかじめ決めておかなければなりません。
 誰が迎えに行くのかという情報は、迎えに行く側だけで無く引き渡す側にも伝わっていなければ、引き渡しの際に揉める元になります。
 学校や施設、あるいは避難先に誰が迎えに行くのか。
 ご家族で検討して、家族みんなが知っているようにしておいてくださいね。

災害対策はまず自分のことから

市販品の非常用持ち出し袋セット

 災害対策の講習会というと、よくあるのが地域を対象とした救助訓練や炊き出し訓練、避難訓練などです。
 これはきちんとやれば効果が出るものですが、訓練のための訓練をしていてはあまり意味を成しません。
 元々の災害対策は、まずは自分が生き残るために行うものですから、まずは自分の備えをきちんとしておく必要があります。
 あなたが必要なものと近所の人が必要なものはかなり異なるのが当たり前ですので、まずあなたに何が必要なのかをしっかりと考えて準備して下さい。
 例えば、入れ歯、眼鏡、杖、補聴器、持病の薬などは、もし無くなったとしたら、あなた以外の人のものを転用するわけにはいかないものが殆どです。
 食物アレルギーを持っている人なら、自分が食べられる非常食の用意も必要ですし、抗アレルギー薬も準備しておく必要があります。
 そういったものを優先的に予備を準備していくことで、自分に対する備えができてくるのです。
 共助も公助も、たくさんの避難者をとりあえず助けるために準備されているものですから、個人として必要とされるようなものはまず配給されないと思って下さい。
 防災の専門家や書籍に書いてあることはあくまでも参考例です。
 あなたは、まずあなたに必要とされる対策をあなたのために準備するところから始めてほしいと思います。

避難所の鍵

避難所としてよく使われる体育館。ここは誰が鍵を開けるのでしょうか?

 小さな自治会の避難所であれば、避難所の鍵がどこにあるのかというのは皆さんご存じだと思います。
 災害対策や施設の利活用に熱心なところであれば、鍵の貸し出しや保管方法のルールも定められているのではないでしょうか。
 地域で災害が起きそうなとき、その地域の人が誰でも避難所の扉の鍵を開けることができているのは、避難所の基本です。
 では、大規模な避難所はどうかというと、大規模な避難所では、殆どが施設管理者しか鍵を持っていません。
 施設が開いている時間に避難所になるのなら問題ありませんが、施設が閉まっているときに避難所を開設しようとしても、鍵が無いので避難所には入れないということになります。
 そのため、学校や大きな施設などは、災害時には施設は解放せず、災害が収まってから避難所として解放するというところもあるようです。
 施設の鍵が複数あることは、防犯上好ましいことではありませんし、平時にその鍵を使ってトラブルが起きることは、施設管理者としては認めることができないことだと思いますから仕方がないことなのですが、避難してくる人から見ると施設側の都合はどうでもよくて、避難してきたのに避難所は鍵がかかっていて入れないという事実だけが残ります。
 かといって避難してきた人が鍵を壊して勝手に入ってしまうと、これは不法侵入になってまた別の騒ぎになってしまいます。
 本来は避難所の開設の一番最初の手順である鍵の問題は平時に取り扱いを決めておかないといけないのですが、災害が来ると騒がれている地域でも、それが完全にできているわけではないようです。
 あなたが避難することのできる避難所の鍵は誰がいつ、どうやって開けられるのか、避難訓練などのときにでも確認しておいた方がよさそうです。

情報入手方法は多重化しておく

 あなたは地域で起きる災害情報の入手をどのようにしていますか。
 テレビ、ラジオを初め、地域の防災無線や防災メールなど、さまざまな手段をお持ちだと思います。
 災害時には、普段以上に正確な情報が必要となります。
 そして、正確な情報の入手手段は、平時から整えておかないとデマやウソに振り回されてしまうことになりますので注意が必要です。
 お勧めはお住まいの市町村や都道府県が発表している防災メールに登録しておくこと。なかにはお住まいの地域の指定ができるものもあるようですので、割と細かく情報が届けられます。
 防災無線は、電池交換や充電装置などの整備をきちんとしていればある程度使えますが、地震などで大規模な被害を受けた場合には、無線そのものが稼働しなくなる危険性があります。
 また、SNSなどでは憶測に基づいた未確認情報が飛び交いますので、信頼できる知り合いや公共機関の情報に限定して収集した方が惑わされずに済みます。
 他には、他の地域に住んでいる人とお互いに住んでいる地域の防災メールを登録し、何かあったら電話連絡してもらう方法もあります。
 「逃げなきゃコール」と言われているものですが、当事者ではない人から連絡を受けることで、情報の受信漏れを防ぎ、安否確認を取ってもらうこともできますので、情報収集に自信のない人はどなたかに頼んでおくといいと思います。
 最後に、災害後には人の憶測という悲喜こもごもの感情がこもった情報がたくさん発信されます。これはSNSに限らず、マスコミなどでも同じ。
 発信されている情報から感情を省いた客観的事実を読み取れるようになっておくと、普段から騙されなくて済むと思いますので、そういった練習をしてみてもよいのではないかと思います。
 いずれにしても、情報があなたの手元に届くかどうかはあなたの意識次第です。
 普段から正確な情報が手に入るような環境作りをしておきたいですね。

津波あれこれ

 先日太平洋のトンガで火山の大爆発があり、日本にも津波が到達しました。
 気象庁では最初は津波の恐れがないとしていたものの、後に津波警報及び注意報を太平洋沿岸から南西諸島にかけて発令しました。
 未確定ながら、これは噴火が原因の大気の震動による衝撃波、空振と呼ぶそうですが、この衝撃波によるものだとも言われています。(詳しく知りたい方はリンク先のウェザーニュースをご確認下さい。)
 そして、普通の津波と異なり原因が大気の衝撃波のため、速度は速く、そして世界中のどこででも津波が起こりうるやっかいな代物なので、潮位が上昇してから慌てて津波警報が発令されても仕方が無いと言えるでしょう。
 ところで、この津波、大波と高潮とはどのように異なるのでしょうか。
 今回は津波について再確認してみたいと思います。

1.津波とはなにか

 津波は英語でも「TUNAMI」と呼ばれていて、呼称としては日本語の津波がそのまま国際標準として使われています。
 ごくまれに隕石落下や、今回のトンガ火山の噴火による空振のような場合もありますが、津波は基本的には地震や火山などが原因で起きる海底や海岸地形の急激な隆起や陥没によって生じた大規模な海水の塊が原因となった場所から広がっていき、地上に被害を与えるものです。
 水面表層部が風などによって大きな波となる大波と異なり、海水の表層部から深層部にかけて一気に動くため、とても大きな水の塊が押し寄せることになります。

2.津波の特性
津波は海水が大きく移動するもので、水深が深いところでは波の移動速度は速いものの波高はそこまで高くはなりません。これが水深の浅い沿岸部に達すると、今度は波の速度は遅くなり、波高は一気に高くなります。
波というか大きな水の塊が何回も押し寄せてきますので、一度やり過ごしたからと言って油断は禁物です。第一波よりもそのあとの方が大きなものと言うことも多いです。
参考までに、東日本大震災時の津波の動きを空から追ったものをリンクしておきます。

東北地方太平洋沖地震による津波(岩手県久慈市上空)(youtube八戸市広報チャンネルに移動します)

2.津波と大波と高潮の違い

発生する原因がそれぞれ異なります。
津波の起きる原因は1のとおりですが、大波は台風など気圧が下がり、強風などで水面の表面で起きる現象で、高潮はやはり気圧の低下によって水位が上昇し、沿岸部が水没する状態をいいます。

3.津波の警報基準

 津波の警報基準は次の表のとおりになります。


 ただ、地震が原因で発生した津波については、予測される津波の高さでは無く、感覚的な「大きい」や「巨大」といった言葉が使われます。
 これは東日本大震災時に津波の高さを聞いた人達が避難せず、大きな人的被害を出したことから変更されました。

4.津波に関する注意報や警報が出たらどうするか

 取りあえず高い場所へ避難しましょう。津波は波と異なり海水全体が押し寄せてきますので、数十センチのものでも波とは比較にならないほどの力を持っています。
 物見高く堤防などで見ていると、もし飲まれたらまず助からないと思って下さい。
 津波が来るとわかったら、可能な限り高い場所へ移動します。海岸部から離れたとしても、海岸部とあまり変わらない高さの場合津波は押し寄せてきてあまり意味がありません。
 とにかく高手へ逃げて下さい。
 そして、津波警報や津波注意報が解除になるまでは高手で避難を継続します。
 津波は一度だけでは収まらず、何回も続けて押し寄せてきますので、安全が確認されるまでは油断しないようにしてください。

 滅多に起きないと思われていた津波ですが、最近は火山や地震の頻発により津波が発生することも増えてきています。
 もしも沿岸部で津波発生を耳にしたら、何を置いてもまずは高いところへ避難することを忘れないようにお願いします。

とりあえず書き出してみよう

校内安全点検の一コマ。

 災害時にどのような行動を取るのかについては逃げ地図マイタイムライン目黒巻き地区防災計画に至るまでさまざまなアイテムが用意されています。
 ただ、割と多くの人が災害時の行動については頭の中にはあっても目で見えるようにはしていないみたいです。
 災害時を含む非常事態というのは、トラブルが加速度的に増えていきますので、早め早めに対応しないと行動ができなくなってしまいます。
 早めの行動というのは、考えていたことを目で見えるように書き出しておくことで、考えなくてもそれを見るだけで行動に移せることです。
 非常事態や緊急事態に備える必要のあるところには、ほぼ100%非常事対応マニュアルというのが用意されていて、考えられるさまざまな出来事と対応策、対応する順番が整理されていますが、これは非常時にはどんなにしっかりとした人でも100%の能力は発揮できないこと、そして考えられなかった異常事態が起きたときにそちらに対応するための能力を集中させるために存在しています。
 例えば、マイタイムラインを作成すると、備える必要のある災害、取るべき行動、そして最終的な対応まで一目でみることのできる一枚紙ができます。
 この紙を、玄関や冷蔵庫、トイレなどに貼っておくと、無意識に中身を見て覚えることができ、その結果、そこに書かれた事態になったときに考えなくても行動を取ることができるようになり、結果的に身を守ることができるのです。
 平時にあれこれと考えて対応策を決めるのであれば、それは必ず書き出して目で見えるようにしておきましょう。
 そうすることで、少なくとも災害時の行動に迷うことはなくなると思います。

避難時の履き物を考える

靴にもいろいろありますが・・・。

 水害などでは、避難するときに長靴を履くのかどうかが割と議論になったりすることがあります。
 防災をやっている人の間では「水の害では長靴禁止」が基本になっているような気がしますが、これは中に水が入ると歩けなくなってしまうからで、周囲が水没を始めた後の避難が前提になっています。
 つまり、早めの避難であれば別に長靴でも問題ない、というか、足が濡れない分だけ長靴がいいのではないかと考えることもあります。
 いつの時点で行動を開始するかによって、使える履き物も変わってきますから、一概に運動靴ばかり押すのもどうかなという気もします。
 もちろん、汎用性が高いのは運動靴ですし、水の中を歩くときに水の抵抗が少ないのも確かなので、運動靴を勧めることは正しいのですが、履き物を考えるよりもさっさと避難しろ、というのが筆者の本音ではあります。
 いろいろな話があるのは確かなのですが、早めに避難するのであれば一番履き慣れた靴がもっとも安全というのが筆者の見解です。
 普段履き慣れない履き物を非常時だからと履くと、足が慣れていないので帰って危険になることもあるのではないかと考えますので、履き慣れた靴が水没したときに備えて、もう一足、非常用持ち出し袋に履き物を準備しておくと安心ではないでしょうか。
 1足しか選べないのであれば、運動靴一択かなとは思っていますが、履き物で悩むよりも早めの避難。
 そっちの方が大切なのではないかと思っています。

備蓄はわけてしまっておく

レトルト食品やインスタント食品も立派な備蓄食です。

 災害に備えてさまざまなものを備蓄しろと言われていますが、あなたのおうちではどれくらいの分量が備えられていますか。
 人によって1食分から2週間分まで、さまざまな量が準備されていると思いますが、それらの備蓄はどこにしまっていますか。
 忘れないように一カ所にしまっている方が多いのでは無いかと思いますが、一カ所にまとめておくと、管理は楽なのですがいざというときにそこが駄目になってしまうと、備蓄が全部使えなくなってしまいます。
 できれば備蓄は数カ所に分けてしまっておくようにしてください。
 そうすれば、一カ所が駄目になっても他の場所が大丈夫なことが多いです。
 例えば、2階建てのおうちなら1階と2階にそれぞれ同じ量をしまっておく。別に車庫や倉庫をお持ちであれば、そちらにも備蓄をしておく。
そうすることで、いざ何かあっても備蓄が全滅という事態だけは避けることができます。
 政府の推奨している備蓄量は1週間分(7日分)なので、そんな量を非常用持ち出し袋に入れて避難することはまず無理です。
 災害の状況が落ち着いたら家に取りに帰ることを前提にして、数カ所に分散してしまうこと。
 非常用持ち出し袋は1日程度の備蓄。そしてできれば防災ポーチを作ってもらい、そちらに1食分の備えをしておくといいと思います。
 余談ですが、非常食は長持ちしますが箱などのままの保管だとネズミなどに囓られてしまうことがあります。面倒でも、コンテナなどに詰めて保管することをお勧めします。

地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)

あなたの防災力はどれくらい?

 お休みに入った方も多いと思いますが、今夜から元旦にかけてはまた荒れる天気になるような予報が出ています。
 帰省される方、旅行される方、出張される方は充分にお気をつけて、事故のないようにお過ごし下さい。
 ところで、お休みに入ってもしもお時間があるようでしたら、あなたの防災力を試す防災模試をやってみませんか。
 以前は期間限定で行われていたヤフー防災模試がいつでも受けられるようになりました。せっかくのお休みで時間があるのでしたら、この機会に防災知識を確認してみるのはいかがでしょうか。
 お金も場所も取りませんし、内容も非常に参考になるものです。
 お休みの間に防災知識を身につけて、新しい年も安全に過ごしたいものですね。
 もし興味がおありでしたら、以下のリンク先から防災模試を受けてみて下さい。

ヤフー防災模試(ヤフージャパンのウェブサイトへ移動します)