水害時には床下の換気口も土のうを積んでおく

 水害対策として土のうや水のうを積むということは聞いたことがある方も多いと思います。
 あまり水の勢いが強くなく、水量も多くない場合には、正しく積むと家屋の床下浸水をある程度防ぐことができるので、出水期の前などに作り方や積み方を確認しておくといいと思います。
 その中で、忘れがちなのが床下の換気口。
 玄関や勝手口などは土のうを積んで水を防いでも、換気口が開けられたままだと、そこから水が入って床下が浸水してしまいます。
 そのため、こういった部分もきちんと土のうを積んで水が入らないようにしておく必要があります。
 床下の水分で床板などが腐ってしまうので普段からふさいでおくわけにはいきませんが、換気口から水が入ると汚泥が床下に溜まってしまうので、床下の掃除と乾燥が必要となります。
 これは結構な手間になりますので、できるなら換気口も忘れずに土のうで守るようにしてくださいね。

土砂災害に気をつける

これから梅雨を迎え、雨に対する対策を準備しておくことをお勧めします。
雨への対策は大きく分けると二つ。
一つは水で、もう一つは土砂になります。
水は直接的に河川氾濫や内水氾濫が起きて水害となりますが、雨が降ることで地盤が緩み、山や崖が崩れてきたり、動いたりする土砂災害も起きることがありますから、対策をしておかなければいけません。
とはいえ、土砂災害は水害以上にどのタイミングで発生するのかが読みにくいものです。
ハザードマップを見てもらい、土砂災害が起きそうな場所に入っている場合には、普段から対策をしっかりと考えておく必要があります。
土砂災害の前兆となるような出来事をまとめたものを少し手を加えてみましたので、それをみてご自身の土砂災害への備えを万全にしておいてほしいと思います。

被災したら、後片付けを始める前に

悲哀判定
被災状況判定は人力なので、かなり時間がかかります。

 さまざまな災害で被災すると、できるだけ早く日常生活を復旧する必要がありますので、可能な限り早く片付けを始めようと考えるものです。
 ただ、その前にやっておいて欲しい事が一つあります。
 それは、被災状況の写真をしっかりと撮っておくということです。
 被災した家屋やその他被災したあらゆるものを写真に撮影しておいてください。
 それも、いろいろな角度から撮っておくこと。そして、巻き尺など数値のわかるものや比較対象となるものを一緒に撮しておくことです。
 これらの被災写真は、被災後に必要となる罹災証明書の作成に非常に役に立ちます。被災地域によっては、写真があれば現地調査不要で罹災証明書が発行される事もあり、いろいろな角度からの写真があれば、現地調査の代わりをしてくれるのです。
 基本的に罹災証明書の発行は現地調査の後でされるのですが、人がやる都合上、どうしても時間がかかります。
 そのため、必要なときに罹災証明書が手元に無いという事態も考えられます。
 また、家財保険や火災保険の災害特約などを請求する場合にも、写真がしっかりと撮られていればそれだけで手続きが開始できる場合があり、迅速な保険金の支払いにも繋げることができます。
 近くや遠くや角度を変えてなど、写真を撮る手間はありますが、最近ではデジタルなので場所も現像代もかかりませんから、こんなものまでといった感じの写真まで撮っておくといいと思います。
 被災したときの写真は、あなたの復旧の手助けをしてくれます。可能な限りたくさんの写真を撮って、それから復旧作業にかかるようにしてくださいね。
 余談ですが、罹災証明書の申請手続きや保険請求の手続きは難しくありません。書類の作成については、行政や保険会社に確認すればきちんと教えてくれます。
 せっかくの保険金や見舞金が奪われてしまうこともありますので、間違っても飛び込みの代行業者などに任せないようにしてください。

避難は自分で決めること

 大雨や台風など予測できる災害では、災害が起きた後、高齢者避難や避難指示の発表のタイミングについてマスメディアが賑やかになります。
 大抵の場合、該当する行政機関が仕事をしていないと叩かれるのですが、本当にそれでいいのかなと思う事があります。
 確かに法律上は地方自治体が避難情報を発表する事になっているのですが、だからといって全てその判断に従わないといけないと考えると話がおかしくなってきます。
 高齢者避難や避難指示が発表された地区の中であっても、発令前に避難しなければ危険な場所と、発令されてもまったく影響のない場所が出てきます。
 避難指示は地区ごとに発表されますが、あくまでも面であって、各自の家や職場といった点で判断しているわけではないのです。
 発災後に避難指示の発令が遅いといったマスコミの風潮がよく見られますが、避難するかどうかを決めるのは、行政では無くてあくまでも本人です。
 本人が適切に自分で判断して自分で避難を開始する、または立てこもる準備をする。
 そういった自分の命を守る部分の責任は、行政では無く当事者である各個人にあると思っています。もちろん、年齢などで自分で判断するのは難しい人もいるとは思いますが、それでも決めるのは自分であってほしいと思います。
 自分の大切な命を人任せにしない。命を守るのはあくまでも自分自身。
 何十年も安全は自分以外の誰かが提供してくれていた日本ですが、これだけ災害が頻発し、行政機関が人減らしで弱体化してしまうと今までのようなわけにはいきません。
 そろそろ自分で自分の安全を確保する時代になってきているのではないかと思います。

暑熱順化しておこう

 だんだんと暑くなってきましたが、暑いのが苦手だったり、暑いのが嫌な人は、割と早めにエアコンを使っているのではないでしょうか。
 普段であればそこまで問題にならないかもしれませんが、暑さに慣れておかないと、屋外へのお出かけ時や、もしも災害で停電してしまったときには暑さに耐えられずに熱中症になってしまうので注意が必要です。
 無理をする必要はありませんが、暑さに身体を慣らすことで身体の熱ストレスへの耐性があがり、熱中症になりにくくなります。
 これを暑熱順化といいますが、ちょうどだんだん暑くなってくる今の時期に暑さを身体に慣らしておくと、その後の夏がある程度過ごしやすくなると思います。
 暑さへの身体の慣らし方としては、軽い運動をすることです。
 暑熱順化は、身体の冷却機能を身体に思い出させる作業なので、身体を動かすことで汗をかいたり血流による体温調整がしやすくなったりし、結果的に熱中症を防ぐ効果が期待されます。
 本格的に暑くなってくるこれからに備えて、運動をして熱に強い身体を作る、暑熱順化をしておくようにしてくださいね。

懐中電灯の明るさを知っておく

懐中電灯類

 水害や台風など、ある程度来ることが予測できる災害のときには、日中明るいうちに安全な場所への避難を済ませることが基本です。
 ただ、突然やってくる大雨や夜中過ぎになって避難をしなくてはならないことも当然あるでしょう。
 そのときには基本の避難は徒歩になりますが、自分が使う懐中電灯の明るさを知っておかないと、いざ避難のときに全く役に立たない明るさだったということがあり得るからです。
 巷ではさまざまな懐中電灯が売られていますが、その明るさはかなりまちまちで車のヘッドランプよりも明るいものもあれば、明るくなっているのかなと疑問に思うくらい暗いものもあるからです。
 これはどちらが良い悪いというわけではありません。その目的によって使える懐中電灯が違うということです。
 夜間の避難に使うのであれば、できる限り明るい懐中電灯が欲しいですが、大雨でもはっきりと周囲の様子が分かるほど明るい懐中電灯だと、避難所についてからは明るすぎ、眩しくて使えません。
 逆に暗くて道は歩けないような懐中電灯は、避難所での生活では活動しやすい明るさになって割と重宝します。
 イメージとしては、避難のための懐中電灯と避難所で使う懐中電灯が必要だと考えて下さい。
 登山用の頭につけるヘッドライトはそのことが考えられていて、明るさが登山用とテント内用の二段階に切り替えられたりするものがたくさんあります。
 一口に懐中電灯と言ってもさまざまな種類がありますので、自分の普段の生活や利用頻度、使い勝手などを考えて、懐中電灯を準備しておくといいと思います。
 余談ですが、登山用のヘッドライトは非常に便利です。もしも懐中電灯を一つだけ用意するのであれば、高くても性能のよい、登山用ヘッドライトをお勧めします。

非常食は何がいい?

非常食の一つの缶パン。吉賀町で作っている。ちょっと甘めが疲れたときにはうれしい逸品。

 結論から書くと、非常食は「自分のモチベーションが維持できる食べ物」を準備しろということになります。
 よく非常食として「アルファ米」や「乾パン」などが挙げられますが、これらの食事は本当の非常用です。
 例えば、地震が起きて家が倒壊してしまったといった非常事態に、調理器具が無くても食べられるこういった非常食を準備しておこうということで、災害で避難したら、何が何でもこれを食べなければならないというものではありません。
 台風や水害などでは、災害発生までの時間が割とあることが多いですので、一食分のお弁当を作ることもできると思います。
 この作ったお弁当も非常食になりますし、食べ慣れた味は自分のモチベーション維持にも貢献してくれますから、余裕があるならそういったものを準備することも大切です。
 また、普段食べないような高級食材の缶詰なども非常食にしておくといいかもしれません。非常事態だからといって、食事まで貧相にしたり非常事態に落とさなくてもいいのです。できるだけ自分が好きなものを食べて、避難中のモチベーションを落とさないようにしてください。
 ただ、多くの人がいる場所になりますので、臭いには気を遣う必要があります。あなた自身が良いにおいだと思っていても、周りにはそれが大嫌いな人がいるかもしれません。そうなると喧嘩になったりしますので、臭いの強いものは避けた方がいいでしょう。
 そして、もう一つ。
 大好きだからといって、お酒だけは避難中は飲まないでください。
 気持ちに不安がある状態での飲酒は、精神的にも肉体的にもよくありません。
 お酒は状況が落ち着いてから飲むことにして、間違っても非常食には加えないようにしてください。
 災害の起きる可能性のある期間は長くても数日ですので、自分が楽しくなるようなものを非常食にしておくとモチベーションが維持できていいと思います。
 あれこれ探して、自分が楽しくなる非常食を用意してみてくださいね。
 最後になりますが、お弁当を作る際には衛生には充分に気を遣ってください。保冷剤などで弁当が傷まないようにして、食べ残したものは処分するくらいの衛生管理でお願いしたいと思います。
 同じ理由で、生ものは止めた方が無難です。

高齢者等避難の意味

 昨年改正された避難レベルですが、その中のレベル3に「高齢者避難」というのがあります。
 改正前は「避難準備・高齢者等避難開始」という名称でしたが、「避難準備が目立っているのはいかがなものか」という偉い人達の議論の結果、高齢者避難からも「開始」が無くなってしまいました。
 ともあれ、高齢者等避難自体は改正前も改正後も変わりません。
 「このまま雨が進むと逃げる必要性が出てくるから、問題のある地域に住んでいる高齢者等準備に時間のかかる人は避難を開始して下さい」という意味合いですので、該当する人は準備して避難しましょう。
 もちろん健常者であっても早めに避難することは原則ですが、わざわざ「高齢者等」と謳っているには意味があります。前にもちょっと触れましたが、この「等」には高齢者の他に、障がい者や妊婦、乳幼児連れといった、準備にも移動にも時間がかかる人全てが含まれています。
 高齢者と若い人で考えてみたらよくわかるのですが、若い人と高齢者が同じスタートで準備したら、事前準備をしっかりとしていない限り、動きの速い若い人の準備の方が先に終わります。
 そして、移動するスピードも若い人の方が速いですから、避難所にたどり着くのも若い人が先になります。
 同時スタートになると、高齢者等が避難所にたどり着いた頃には、若い人で一杯で避難所に入れないという事態が起こります。
 でも、実際に避難所で手厚い支援が必要なのは若い人ではなく高齢者等に該当する人達なので、避難所に居る人と支援が必要な人がズレてしまうという問題が起こります。
 そこで、時間のかかる人達には早めに避難準備を始めてもらい、準備ができ次第避難をしてもらうというのが、この「高齢者等避難」に込められている意味なのです。
 もちろん、早く発表されるということは空振りの確立もそれなりにあります。でも空振りでも「何もないのに避難させやがって」ではなく「たまたま何もなくてよかったね」と考えて、馬鹿正直に発表されたら避難をしてください。
 人を安全に避難させ、そして必要な人を確実に避難所に収容するための警戒基準。
 それが高齢者等避難だと覚えておいてください。

梅雨時期の大雨情報

天気が読みにくい日が続いていますが、2022年6月1日から気象庁が線上降水帯予想を発表することにしたそうです。
線上降水帯は大雨をもたらす雲が次々に沸き、気象衛星の写真などではまるで線に見えることからこの名前がついています。
ここ最近の大雨は、これが原因で起きているものがかなりあるようなので、事前にこういった情報が出されることは安全な避難を考えたときに大きな武器になると思います。
ですが、今回はとりあえず半日前程度で「中国地方西側」といったざっくりとしたエリアについて予想を出してみるとのこと。
最終的には都道府県単位を目指しているようですが、元々どこにできるかわからないものを予測するのですから、それだけでもすごいことだと思っています。
線上降水帯ができると、できた部分では確実に大雨が降ります。この予想が出たら、こまめに気象情報をチェックして、雨雲レーダーなどで線上降水帯の気配が出たら、危険な場所に住んでいる人は避難の準備をするようにしてください。
ちなみに、避難情報を発表している地方自治体も私たちも、手に入る情報に差違はありません。その情報が出たらどうするかを決めてあるかないかだけの違いなので、気象庁の情報や都道府県等の土砂災害警戒情報を見ていると、避難情報が出そうかどうかの予測も可能です。
情報を上手に使って、安全に避難できるように準備して下さいね。

線状降水帯予測の開始について(気象庁の報道発表資料のウェブサイトへ移動します)

顕著な大雨に関する気象情報(気象庁のウェブサイトへ移動します)

逃げる? 逃げない?

 地震はともかく、予兆がある台風や水害の場合には、高齢者避難や避難指示が致命的な被害が発生する前に予め発表されると思います。
 行政としては、○○地区という言い方しかできないので、「○○地区に避難指示を発表」といった表示になるのですが、では、○○地区の人は全員がその場から避難しなくてはいけないのかというと、必ずしもそうではありません。
 同じ地区内でも、急いで逃げなければ大惨事になる場所もあれば、避難せずに自宅待機している状態で充分だという場所もあるでしょう。
 ただ、その判断は行政がするのでは無く、避難を判断する各個人が個別にやらなければならない作業です。
 お手元に行政機関が作成したハザードマップや防災計画書を見ていただくとわかりますが、指定避難所には、とてもその避難所に収容しきれないだろうという人数が割り振られていることがあります。
 これは、該当する地区の人口を直接当てはめてしまっているだけで、実際に収容できるかどうかは問題にしていません。
 なので、実際には災害が発生しそうだからといって避難したら避難所に入れなかったといった出来事が発生することもよくあります。また、家はなんともなかったのに避難中に遭難してしまったという事例も、自分が避難すべき対象者かどうかをきちんと確認していなかったことが原因だといえます。
 お手元のハザードマップと、今自分のいる場所をしっかりと確認してもらい、該当する災害で避難すべき場所にいるのかどうかをしっかりと精査し、必要に応じて避難するようにしてください。