【活動報告】有害鳥獣対策への対応、その後(~7月14日)

 住宅地に出没するイノシシを防除してほしいというご依頼で、ご依頼主に誘因物撤去をお願いしたところ、その場所にはイノシシは出なくなったのですが、その後周囲の住宅地に出没することから捕獲してほしいというご依頼がご依頼主と市役所様の双方からあり、箱わなを展開して試行錯誤。
 えさを変え、わなを工夫し、イノシシに壊され、イノシシに遊ばれ、またわなを工夫してと、当研究所の猟師とイノシシとの知恵比べが続いていましたが、このたびやっと一頭捕まえることができました。
 監視カメラの映像ではかなり大きそうな感じでしたが、捕獲後に測定したところ70kg超の雄でした。

箱罠のトリガー部。下が普通の状態。上はイノシシにひん曲げられたもの。

 同じような大きさのイノシシが後2頭確認されているので、施主様及び市役所様からは引き続き捕獲作業を行ってほしいとのご依頼をいただき、引き続き捕獲業務を行うことになりました。
 今回は防除、捕獲の条件が非常によかったので対応ができていますが、そんな場所ばかりではありません。
 イノシシに限らず、野生動物は一度居着くと排除するのがかなり大変です。
 事故を防ぐためにも、不要な果樹の撤去や伐採、生ゴミを放置しないなど、えさとなるものを出さないような対策が必要だなと考えています。

防災用猪まるごとリゾットを食べてみた

作っているのはタケダ猪精肉店さん。アレルゲンフリーとアレルゲン27品目不使用の表示がついている。

 益田市内には防災食として使えるイノシシ肉を使ったレトルトパウチの玄米カレーリゾットを作っているところがあります。
 先日、いくつか手に入れることができたので、試しに食べてみることにしました。

一つ開封して盛り付けてみたところ。一袋230gあるので、お椀に軽く2杯分は取れる。

 見た目は普通のカレーリゾット。香りが良く、美味しそうです。
 味付けはスパイシー。辛いのが好きな人は大好きだと思います。
 肉はイノシシ肉としたら殆ど臭いはないのですが、鼻のいい人は少し気になるかもしれません。
 また、結構しっかりと玄米が混じっているので、食感は若干もごもごします。栄養価は高くて非常食としてはよいのですが、もごもご感が苦手な人、玄米が苦手な人は食べにくいと思います。
 当研究所の試食では、臭いに敏感な研究員Sと玄米の食感が苦手な研究員Mは一口食べてパスしていました。筆者を始めカレー好き、肉好きの研究員達には評判がよかったのですが、万人受けする味ではないのかもしれません。
 防災食としては分量が多いので、食の細い人だと2食分取れるかなと思います。

裏面。温めずにそのまま食べることができると書かれていて、原材料の中にも油が見当たらない。

 レトルトパウチなのでこのままでも食べることができますが、暖めた方がおいしいのは間違いありません。
 若干クセはありますが、玄米に抵抗がない人ならおいしくいただけると思います。
 地元のスーパー、キヌヤさんなどで扱っていますので、気になる人はぜひ買って食べてみてください。

【活動報告】有害鳥獣対策への対応、その後(~5月28日)

 ご依頼を受けてから約一月半。罠を仕掛けてから敷地内には出なくなったということですが、数日前に自宅前に現れたというお話をいただきました。
 「ブヒブヒ言ってた」との証言があったので確認したところ、ご自宅の前の庭を掘り返した跡があり、痕跡から見てイノシシがやったものと確認できました。
 ただ、イノシシ檻を出すには場所が狭く、防除用の電気牧柵は小さい子どもさんがいて危険だと判断し、しばらく様子を見てもらうことにしました。
 また、裏山からも夜に獣の音がするということで、そちらの方も対応することにしました。
 裏山と敷地の間にはイノシシ柵が展開されているので裏山側からのイノシシの侵入はできないだろうと見ていますが、何が来ているのか気になったので監視カメラを仕掛けてみたところ、おおきなイノシシが来ていることがわかりました。


 このイノシシのうちの一頭がイノシシ柵沿いに移動してご自宅前を掘ったのかもしれませんが、確証はもてません。
 幸い、裏山には一台稼働休止状態のイノシシ檻がありましたので、所有者とお話をさせていただき、当方で維持管理させていただくことを条件にお借りすることができましたので、現在そちらに重点をおいて対応をしています。
 敷地内の檻は、このまま出なければ休止から撤去に向かいますが、対応エリアが裏山に移動して、イノシシとの知恵比べは続きます。

ダニに気をつけよう

 暖かくなって人の活動が活発になってくると、よく出会うようになってくるのがダニです。
 出会うだけならいいのですが、ダニ類は病気を媒介することが多い生物ですので、かまれないように注意する必要があります。
 マダニでは「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」「日本紅斑熱」「ライム病」、同じダニの仲間のツツガムシが媒介するツツガムシ病なども有名なところです。
 イエダニではせいぜい咬まれてかゆいくらいですが、マダニやツツガムシに咬まれると、かゆい上に取れない、その上病気にかかる可能性がありますので、できるだけ咬まれないように注意する必要があります。

1.マダニの種類

 マダニと言っても種類はいろいろありますが、中国地方では主にフタトゲチマダニやタネガタマダニなどが見られるようです。


 また、ツツガムシもいます。
 大きさは3~8ミリと大きく、目で確認できます。また、硬い外皮に覆われているのも特徴です。

2.咬まれないようにするためにはどうするか

 ダニは森林や草むら、藪、畑などに生息しています。そのため、そういった場所に立ち入るときには肌の露出をなるべく防ぐように長袖長ズボン、長靴や帽子、手袋などを着用するようにします。
 ダニに潜り込まれないように服の裾は露出しないようにしておきます。
 また、ダニがとりついたことがすぐにわかるように、着用する服はなるべく明るい色にし、ダニがつきにくい化学繊維素材でできているものがよいでしょう。
 それらを装備した上で、マダニに効果のある防虫スプレーをしっかりと吹いておくことが必要です。
 ディートやイカリジンといったマダニが忌避するような成分が入っているものを使うようにし、使うときには必ず使用上の注意を読んで正しく使うようにしてください。
 帰宅したらすぐに服を着替え、脱いだ服は直射日光を当てるか乾燥機で乾燥処理するようにします。
 ダニは乾燥に弱いので、乾かすことで万が一連れて帰ってしまった場合でも確実に殺すことができます。
 また、着替えと併せてお風呂に入って身体にマダニがついていないかをチェックして下さい。

3.咬まれていたらどうするか

 不幸にしてマダニがかみついているのを発見したら、なるべく早くマダニを撤去する必要があります。
 マダニをそのまま放っておくと、マダニが取れなくなってしまうからです
 ただ、マダニは構造上刺し口が皮膚の中にしっかりと入っているため、無理して取ろうとすると刺し口だけが皮膚内に残って取り除くのが非常にやっかいなことになる場合があります。
 皮膚科に行って取ってもらうのが一番確実ではありますが、休日や夜間などで病院にかかれない場合もあります。
 そんなときにはかみついているマダニの上からたっぷりのワセリンを塗ってやりましょう。
 塗ってから30分もたつと、マダニが簡単に取れるようになります。
 ワセリンだけでなく、油脂性のクリームやバターなどでも同様にマダニを取れやすくする効果が期待できます。

4.病気になるとどうなる?

ダニに咬まれたあと、そのダニが病原体を持っていた場合に発症します。
山に入ったことやダニに咬まれたことを医者に説明して、早めの診察と治療にとりかかってもらわないと、危険になる病気が多いので注意が必要です。

1)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTSでは、咬まれてから6~14日程度で発熱や食欲低下、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など消化器官系の症状がでます。
重症になると死ぬこともありますので、発症したら早めの処置が必要となります。

2)日本紅斑熱

日本紅斑熱は咬まれてから2~8日程度で発熱、発疹、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。
ツツガムシ病によく似ている症状のため、確定がなかなか難しいようですが、早めの治療は必須です。

3)ライム病

ライム病は咬まれてから数日~数週間で発症します。初期には的のような紅斑が現れることが多く、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感など、インフルエンザにかかったかのような症状が出ます。
一月もすると皮膚や神経、眼の症状や不整脈、関節炎などのさまざまな症状が現れます。
最終的には慢性関節炎や皮膚炎、慢性脳脊髄炎などが発症します。

4)ツツガムシ病

ツツガムシ病では、咬まれてから10~14日程度で悪寒をともなう高熱が出ます。頭痛、筋肉痛、全身倦怠感なども出ます。
発症2~3日後には全身に紅斑や紫斑がでます。
放置しておくと、脳炎や肺炎、心不全などで死亡する事例もありますので、早めの処置が必須です。

マダニは野生鳥獣、特に鹿が多い地域では非常にたくさん発生しています。
荒廃した農地や野生鳥獣の増加によって、ダニが好む環境が作られ、数が増えていると考えることができます。
ダニに咬まれないようにすることで、ダニが持っている病気にもかからずに済みます。
マダニの生息域に入る前には、しっかりとした防除する体制を取るようにしてくださいね。

【活動報告】自然観察会を開催しました

山頂から島根県側を望む。中央右の丸い山が青野山。

 2021年4月25日、山口県山口市阿東町にある十種ヶ峰で自然観察会を行いました。
 十種ヶ峰はこのあたりの単独峰で、地下には青野山造山帯に連なる火山ドームがあるとされていて、そのドームの形成によってできた山だとされています。


 この山には荒れた斜面に生えるヤマシャクナゲと言われる花の群生地があり、ちょうど花の時期だったことから、ヤマシャクナゲを観察しながら鉄砲水の出た痕跡や地面の変化などを辿りました。


 当日は天気がよかったこともあり、ヤマシャクナゲだけでなく、イカリソウやヒトリシズカ、カンアオイといったさまざまな花もゆっくりと観察することができました。


 また、ここ数年の大雨による川の掘削なども確認でき、土地の成り立ちによってさまざまなリスクや生態があるということを学習することができました。
 現在は会員向けということで、なかなかお声がけすることが難しかったのですが、参加してくださった皆様に感謝します。

【活動報告】有害生物への対応作業を行いました・その3

 4月7日から対応をしているイノシシ対策ですが、4月18日の点検の際、依頼人様から現在の状況についてお知らせをいただきました。
 それによると、一時期来なかったイノシシですが、現在は深夜~早朝にかけて様子見に現れているとのことで、動きを見ているとやはり餌を探しているように見えるとのこと。
 餌に釣られてきているのであれば、餌を追加することによって捕獲、または忌避させることができるのではないかという話になり、一般的にイノシシが好むと思われる少しにおいの強い餌を追加で設置してみました。
 環境の変化にイノシシはかなり敏感ですが、興味を持って檻にかかるか、もしくは怪しんで来なくなるか、しばらく様子見が続きます。
 有害鳥獣対策において檻を出すと最初にかからなければ長期戦になることが多いので、定期的に点検・監視を行いながら対策をしていきます。

【活動報告】有害生物への対応作業を行いました・その2

 先日イノシシ対策についてご依頼いただいた作業の続報です。
 4月7日の説明後、地面にたくさん落ちていたドングリ類については、依頼主様が一生懸命回収され、土に埋もれているもの以外は殆ど片付けてくださいました。
 4月10日に監視カメラを確認したところ、ドングリを回収した後はイノシシが寄ってきていないことがわかりましたが、彼らは定期的にえさ場を確認しにくるため、念のため檻をかけてみました。
 当初研究員始め依頼主様達にもご協力いただき、現地にイノシシ檻を一基展開させていただきました。
 人がかなりばたばたした痕跡が残るので、この後イノシシは出ないかなという気もしていますが、しばらくはこれで様子見をすることにしました。


 檻をかけることは、そこにえさを撒くことになるので、ターゲット以外にもさまざまな動物を不用意に寄せることになってしまうので、設置についてはよく検討を行う必要があると考えています。
 これでイノシシが来なくなれば依頼は終了ということになりますのですが、しばらくは定期的に監視カメラの映像確認と檻の維持管理をすることになりそうです。
 また動きがあれば報告したいと思っています。

【活動報告】有害生物への対応作業を行いました

 当研究所の定款には「有害生物への対応」というのがあります。
 有害生物と言ってもさまざまなのですが、基本的には人の営みを行う上で問題となる野生生物が人の営みに影響を与えないような対応を行う作業で、現在のところは陸生生物を対象にしています。
 このたび、敷地にイノシシが出ており、人に被害を与えては困るので対処をしてほしいというご依頼をいただき、去る4月7日の早朝、現地確認をさせていただきました。
 当研究所での有害生物対応は「防除」が基本です。そのため、まずは防除ができないかを確認します。
 防除と言ってもそんなに難しい作業ではなく、誘因物を撤去する、通り道を潰す、隠れ場所をなくすといったことで、やり方さえわかればどなたにでもできる内容です。
 今回のケースでは、土地が肥えていて地中に大量のミミズがいてあちこち掘り返していること、敷地におおきなシイの木などを中心とするドングリの木が複数あり、地面に落ちたものだけでも相当な量であることから完全な撤去は困難と判断しました。


 ご依頼主様には敷地への侵入阻止を提案しましたが、人が出入りできないのは困ると言うことで、侵入阻止も対応が無理だということになりました。
 電気牧柵についても敷地内で子ども達が遊ぶことがあるため難色を示され、やむを得ず捕獲を行う方向で作業を行うことになりました。
 現地での生態を確認するためにトレイルカメラを設置。出ているイノシシが同一個体なのか、出没する時間やどのような動きをしているのかについて確認をしていきます。

イノシシが来そうな場所にセンサーカメラを仕掛ける。何が映るのかは仕掛けてみないとわからない。

 状況が特定できた時点で捕獲作業を開始しますが、捕獲駆除はうまくいかないこともありますので、今後のことも考えて不要な木の伐採、イノシシが嫌がるような目線の通る空間を作るための剪定などを依頼主様にはご説明し、検討していただけることになりました。
 今後どうなるのかはわかりませんが、敷地に出なければいいというご依頼主様のご希望ですので、そのご要望にそった形で対応したいと思います。
 余談ですが、有害鳥獣の駆除については該当市町村から有害駆除許可を受ける必要があります。当研究所は所長を含めて複数の猟師がおり、益田市役所様との協議で指定エリアの有害駆除許可を得ることができたため、今回は捕獲という選択肢がとれました。
 許可を得ずに野生鳥獣を捕獲することは、特定の条件を除いて鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(通称:鳥獣保護管理法)違反となりますのでご注意ください。