「生きている」という情報を発信する

 「便りがないのは無事な証拠」と言いますが、こと大規模な災害にあったときにはそういうわけにもいきません。
 いち早く自分が無事、あるいは怪我はしているが生存していることは自分の知り合いに伝えておいた方がよいと思います。
 特に被災地外から見ると、被災地はどうなっているのかさっぱりわかりませんので、あなたが生存情報を発信することで、とりあえずは大丈夫だという安心感が確保でき、余計な気を揉ませずにすみます。
 一番安心できるのは声の聞ける音声電話あるいはテレビ電話なのでしょうが、大規模災害では通信規制が行われてまともに通じなくなります。
 そうすると、メールや災害時伝言ダイヤル、災害時伝言掲示板、SNSといったものに頼る必要が出てくるのですが、停電などで無線通信設備が止まってしまうと使うことができません。
 また、いずれも通信規制がされる可能性が高いので、うまく発信できても受信する側にいつ届くのかは神のみぞ知るといった感じになります。
 それでも発信しないよりは遙かにマシですから、自分が無事だと伝えるためには、積極的に情報を発信します。できれば複数の情報発信手段を持っておくといいでしょう。
 生存情報は、可能であれば文字情報だけで。通信規制時にメールやSNSで写真を送ると通信環境にかなりな負荷をかけてしまうので、写真は状況が落ち着いてから発信するといいと思います。
 生存情報としては「あなたが生きている」ということと、わかれば現在位置、これからどこへ避難するのかといった情報を出しておくと、あなたの関係者の人達はとりあえず安心すると思います。
 被災地外から被災地への連絡は、いろいろな通信手段はありますが、基本的には殆ど通じないと考えていいです。ただ、被災地から被災地外への情報発信は逆よりはかなり速やかにできるはずなので、被災して生きているなら、どんな手段でもいいのでまずは「生きていること」を発信するようにしてください。

ハザードマップを確認しておこう

 梅雨入りし、雨が続く毎日になりそうな感じですが、あなたがお住まいの場所はどんな災害の場合に避難しなくてはいけないのかを知っていますか。
 避難する対象としては、地震、水害、台風、そして土砂崩れや火事等があり、それぞれに安全に逃げる経路や安全な避難所を検討していることと思います。
 このうち、雨で気をつけないといけないのは、水害と土砂崩れ。
 水害では浸水を、土砂崩れでは巻き込まれることに注意しておかないといけませんので、これらの情報が一目でわかるハザードマップを確認しておきましょう。
 ハザードマップでの水害は、ある条件下での浸水状態を表しているもので常にそうなるとは限りませんが、急傾斜地や地すべりなどの土砂崩れが起きるかもしれない場所については影響範囲と危険な場所がしっかりと明記してありますので、お住まいの地域にある場合には、しっかりと把握しておいてください。
 これは避難時に限らず、通勤通学経路を決めるときにも確認しておき、できる限りそういった場所を避けて経路を設定しておくようにしてください。
 ちなみに、小学校の通学路に指定されている経路は安全という方もいらっしゃるのですが、小学校の通学路は車との事故を防ぐことを主眼にして設定されていることが多く、もう何十年も見直されていないといったものもざらにありますので、あまり信用しない方がいいと考えます。
 ハザードマップを元にしてできるだけ安全な場所を移動経路にしておくこと。そして自分が安全だと思われる避難場所を確認しておくこと。
 これからの時期、さまざまな災害が起きる可能性がありますから、それに備えて確認しておいてくださいね。

防災グッズと代用品

代用品作りの一つとして防災クラブでやっているゴミ袋で作る防寒着作成の一コマ。あるのなら普通に合羽の方が確実で安心。あくまでも代用品を知ることが目的の講座。

 防災グッズは防災用のためにだけ準備すると考えると場所をとってしまう厄介者になってしまいます。
 ローリングストックという言葉もありますが、必要なものを少し多めに準備することである程度以上はものを増やさず、生活の質も下げずにすむような災害への備えができると思っています。
 ここでよく聞かれるのが代用品の話ですが、代用品はあくまでも代用品でしかなく、そのために作られた道具と比べるといろいろな意味で不便を生じることになるので注意してください。
 よくあるのが、おむつの作り方。
 おむつがないときにビニール袋とタオルで作るよう書かれているものが多いのですが、避難生活を過ごすときにその代用品で凌ぐとすると、いったいどれ位の材料が必要になるでしょうか。
 タオルは吸水力はそこまで大きくありませんし、ビニール袋は蒸れて子どもの肌がかぶれたりします。汚れたタオルはそのままにしておくと汚臭が出てきますので、その処理についても対応が必要となります。
 本当に緊急時何も無い状態ならともかく、手間や発生する問題を考えると、紙おむつを1週間分くらい余計にストックしておいた方が役に立ちます。
 布おむつ派の人も、災害時には布を洗うことが難しい場合もよくありますから、数日程度凌げるだけの紙おむつを準備しておくようにしておきましょう。
 そして、心配だからといって大量にストックするのも御法度です。
 おむつが必要な年齢の子どもは、あっという間に大きくなりますので使える期間は短いです。そのため、目安としては1週間または普段使っているおむつを一袋多く準備しておくといいと思います。
 サイズアウトしたおむつは、例えば子どもの通っている保育園や子育て支援センターなどで使ってもらえないか聞いてみて下さい。割と喜んでもらってもらえることが多いです。
 そして、引き取り手がなかったからといって捨てる必要はありません。給水部分を何枚か重ねると、大人用の非常用トイレを作ることができます。これも代用品の一つですね。代用品のことは知っておいた方が絶対にいいですし、作り方もマスターしておいたほうがいいです。
 でも、最初から代用品で対応することは考えず、可能な限り普段使っているもので対応できる方法を考えておいてください。
 ちなみに、代用品としてよく出てくるビニール袋は、最近では地球温暖化やエコ問題から災害時に確実に手に入るとは限らない状況になっていますから、必要があれば非常用持ち出し袋に備えておくことをお勧めします。

避難勧告の廃止と警戒レベル

 今国会で議決された災害対策基本法の改正点については、報道発表の情報などを元にちょくちょく書いてきましたが、令和3年5月20日からいよいよ適用されます。
 ここ最近の災害と対応を検証した結果がいろいろと反映されているのですが、市町村が発令する警戒レベルについて大きな変更があるのでもう一度書いておくことにしました。


 市町村が発令する警戒レベルは、発生している状況に応じてレベル1から5まで区分されています。
 このうち、レベル3以上の記載が変更になっています。
 順番に見ていきましょう。
 まずはレベル3「避難準備・高齢者等避難開始」は「高齢者等避難」という表示になりました。
 正直なところ、これは元のままのほうがよかったのではないかという気もするのですが、住民がやるべきことは変わらずで、高齢者以外の人も避難準備や、可能であれば自主的に避難を開始することになっています。
 次にレベル4。「避難指示(緊急)」と「避難勧告」の二つがこの中に存在していたのですが、今回の改正で「避難指示」にまとめられ、従来の避難勧告のタイミングで発令されることになりました。
 「レベル4の発令=すぐ逃げろ」となったわけです。
 最後にレベル5。「災害発生情報」から「緊急安全確保」に変わり、レベル5ではとにかく身を守る行動をしろという風になりました。
 状況は変わっていないので、要約すると「災害が発生しているからとにかく身を守れ」ということです。
 今までのレベル5では「屋内の安全な場所に避難する」となっていましたが、今回の改正に併せて「屋内または近くの堅牢な建物等の安全な場所に避難する」と修正され、屋内避難にこだわらないようになっています。
 詳細はリンク先の資料をみていただければと思いますが、警戒レベルと行動の内容が全体的に前倒しされています。
 避難した結果、何も起きなかったのならただの笑い話。避難せずに災害に巻き込まれたら、そこで命が終わることも起こり得ますので、今回の警戒レベルの変更についてはしっかりと確認して置いてください。

避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月10日)(内閣府防災のウェブサイトへ移動します)

新たな避難情報に関するポスター・チラシ(内閣府のウェブサイトへ移動します)

熱中症対策をしておこう

経口補水液やスポーツドリンクは熱中症対策に重要。でも、飲み過ぎ注意!

 暑くなったり寒くなったり忙しい天気ですが、どうやらだんだん暑くなってきているのは確かなようです。
 寒かったものが徐々に暑くなっていくのであれば、身体が馴化していくので大きな問題にはならないのですが、寒かったところがいきなり暑くなると、身体がついていけなくなります。
 それだけならいいのですが、温度変化に適応できないと熱中症になる危険性があるので注意することが必要です。
 炎天下に日差しの下に長い時間いないことや、水分補給、休憩をきちんととること、そして何よりも無理しないことが大切になってきます。
 ある程度馴化すると、身体が楽になるのですが、それまでは行動するときには時間に余裕を持たせることや睡眠不足を防ぐこと、飲料水を常に持ち歩くこと、そして万が一に備えて経口補水液や冷却剤を用意することを忘れないようにしたいものです。
 体温調整がきかなくなって身体がオーバーヒートしてしまうのが熱中症です。事前の予想である熱中症警戒アラートも以前にご紹介していますので、そちらも参考にして、できる限りの備えを持っておいてくださいね。

線上降水帯に気をつけよう

 ここ最近の水害の傾向として、短時間にピンポイントで大量の雨が降って起きるというのがあります。
 これは線上降水帯が作られることによって特定の地域に次々に大雨をもたらす雲がやってきて雨を降らしていくことで発生しているもので、なかなか予測しづらく被害が大きくなりやすい現象です。
 この線上降水帯は南からの暖かい湿った空気と北からの冷たい空気がぶつかることで空気中の水蒸気が一気に雨となって降り注ぐのですが、雨雲レーダーや天気図を見ると、ちょうどその部分に三角形の形ができているのがわかります。
 雨がひどく降る場合には、この三角形が真っ赤に表示されることから、まるでにんじんのようだということで、にんじん雲と呼ばれることもありますが、このにんじん雲が天気図上や雨雲レーダーで自分の住んでいる地域の上空に確認できたら、急傾斜地や土砂災害警戒区域にお住まいの方はできるだけ早めの避難をお勧めします。
 できるだけ早めに避難して、身の安全を確保すること。
 これから雨のシーズンに入り、場合によっては線上降水帯も発生することがあると思います。
 雨が気になったら、雨雲レーダーや気象衛星の写真などを確認して、なるべく安全を確保するようにしてくださいね。

大雨警報の基準を確認しておこう

 そろそろ大雨に備えて準備をしておいても良い頃かもしれませんが、あなたの大雨対策は大丈夫ですか。
 大雨で行動を判断する一つの基準として、大雨時の警報があります。
 今日はこの大雨警報の基準を確認しておきたいと思います。

 

毎回書くことではありますが、自治体はどうしても地域を面で見ているので、点であるあなたの居場所がどうなのかは、自分の目で見て判断するしかありません。
 大雨では、気象庁が発信している情報や都道府県などが発表する土砂災害警戒情報などを元に地元自治体が避難の判断について発表をしていますので、見方を変えると判断に必要な同じ情報を自分でも得ることができると言えます。
 自分のいる場所の災害特性をしっかりと知った上で、気象庁や都道府県の基礎情報を見ることで、もしかすると地元自治体よりも早く行動を起こすことができるかもしれませんから、情報を得られる環境であるならば、天気がおかしいと感じたときに積極的に情報を調べるようにしてください。
 そのちょっとした行動が、あなたや家族、周りの人の命を救うことになります。
 とりあえずは大雨の基準を確認しておいて、いざというときの行動について再確認しておいてくださいね。

災害で起きる問題と事業継続化計画(BCP)

 災害時に備えて事業継続化計画(BCP)を作る理由はいろいろとありますが、その大きな目的の一つに「発生する問題を可能な限り早く解決する」ことがあります。
 問題というのは、発生したのに無視し続けると、多くの場合は問題が問題を生んでしまって収拾がつかなくなります。
 特に災害などの緊急時においては、一つの問題放置が後々大問題になることもありますから、できる限り一つの問題のときに対応して処置しておかなければなりません。
 災害時に発生する問題は多岐に及ぶので、どんなにBCPを作っても100%問題は起きないと言い切ることは無理ですが、過去のさまざまな災害から、災害が発生したときに自分たちが対応すべき問題は何かと言うことはある程度予測が可能です。
 予測した問題には予め解決方法が考えられているわけですから、それに従って手順を踏めば、基本的には対応者が誰であれ解決できるはずです。
 BCPの手順書は、そういった目線で作成する必要がありますので、「わかりやすく」「明確に」を考えて作成してください。
 そして、BCPがあれば、その場の指揮官は突発的に起きる事態に対応を専念させることができます。その結果、さまざまな問題が小さいうちに終息できて、復旧や復興が予定通り、または予定以上に早く完了できることになり、そのために作成するものです。 BCPを作っておくことは、今ある戦力でどれだけのことができるのか、そして何を優先して対応するのかを明確化することと、問題対応の手順を予め定めておくことです。
 現状を維持する方法ではなく、何から優先して対応すべきなのかを常に頭に置きながら作成するようにしてください。

【活動報告】青野山で自然体験会を開催しました。

青野山から日原方面にまっすぐ伸びる弥栄断層。その上に国道9号線がある。

 去る5月3日、島根県鹿足郡津和野町にある青野山で自然体験会を開催しました。


 前日までの雨がうそのように晴れ渡った天気の中、会員様、そして会員様のご友人などにご参加いただき、賑やかに青野山を登山しながら春の山野草の観察をし、また、途中の視界が開けた場所では弥栄断層についても説明させていただきました。


 各自弁当の昼食をいただき、下山後は津和野城趾に登り、そこから本日登った青野山を別角度から眺めるオプションも実施。
 少々厳しい行程でしたが、参加された皆さん笑顔で終了することができました。
 この場をお借りして、ご参加いただきました皆様に感謝いたします。

「逃げなきゃコール」をご存じですか

 自分で避難の判断をすることはなかなか難しいものですが、顔見知りから避難しようと言われると、なんとなくそうしようかなという気になるものです。
 特に高齢者の方の場合にはその傾向が強いようですが、ご近所やただの知り合いだと、夜遅くや朝早くにはなかなか避難の声をかけにくいもので、その結果として逃げ遅れてしまったりすることがあります。
 そんなとき、遠方にいるご家族や親しい人から「避難して」という電話が入ると、逃げないといけないのかなという気になりやすいですし、早朝や夜間でもそこまで失礼とは感じないものです。
 そこで、「逃げなきゃコール」の出番です。
 電話をする相手が住んでいる自治体の防災メールに登録しておいたり、スマホアプリの「NHKニュース防災」「Yahoo!災害情報」、「au登録エリア災害・避難情報メール」で条件を登録することで、遠方で起きている各種災害の情報が入ってくるようになります。
 6月からはNTTドコモもユーザーが指定した地域で緊急速報を告げるエリアメールが出されるとショートメールでお知らせしてくれるサービスが始まるそうですから、そういった情報を上手に活用して早めの避難を促すようにしてほしいなと思います。
 避難すべき場所に住んでいる人の「避難」という行動を起こすために背中を押してあげる「逃げなきゃコール」。
 大切な方を守るためにも活用して欲しいなと思います。