正常性バイアスの功罪

 車の運転免許を持っている方は、免許を取得する過程や更新講習などで「『だろう』ではなく『かもしれない』運転をしてください」と言われていると思います。
 「大丈夫だろう」ではなく、「何かあるかもしれない」と考えて安全に運転するという意味なのですが、災害対策でも同じことが言えます。
 同じことが繰り返されると、人間の行動は「それまでと同じ」という前提で考えてしまいがちです。これは正常性バイアスの一つで、考えることを減らすために無意識にパターン化している自分の中の事実に当てはめて考えてしまうことなのですが、災害時にはこの正常性バイアスを打ち破ることができるかどうかが生き残ることのできる鍵となっていることに留意してください。

 何か起きたとき、人は自分のそれまでの生活や行動を変えようとせず、その状況の中から普段と同じものを見つけ出そうとします。また、行動を変えないで済む理由をいくつも作り出そうとします。
 それが正常性バイアスと言われるもので、この正常性バイアスのおかげであまり考えずに普段の生活を送ることができるのですが、これが度を過ぎると非常事態なのに常時のルールで判断しようとして危機的な状況を生み出してしまいます。
 常時と非常時を切り分けることは、実は非常に困難な作業です。どこまでが常時でどこからが非常時なのかは、その人ごとに違うからです。
 ですが、非常時にどうするかを決めておかないと、正常性バイアスによって非常時が常時の延長にされてしまう可能性は非常に高くなります。
 切り替えるためのスイッチと切り替え後の行動をどうするのかを決めておくことで、正常性バイアスから逃れて身を守ることが可能になりますので、自分の中の常時と非常時の線引きについてきちんとしておくことをお勧めします。

行動パターンを正しくはめる

 災害が起きそうなとき、自分の命を守るために避難をすることがありますが、一つ気を付けておきたいことがあります。
 それは、「行動パターンを正しくはめておく」ということです。
 例えば、水害で川から水が越水しそうな状況を考えてみてください。住んでいる家が低地であれば水没する可能性は高いですから、直ちに避難を開始する必要性があるでしょう。では、どこへ避難するのか。答えは「安全を確保できる高いところ」です。多くの人は近くの避難所への避難を選択すると思うのですが、「避難=避難所」ではないことに注意してください。
 漫然と「避難=避難所」と考えている人の場合、避難先の避難所が安全かどうかの検討はしていない場合がほとんどです。最近では避難所にその避難所がどのような災害なら安全かについて表示されているところも増えてきましたが、この表示はハザードマップの情報を前提にしてされていますから、それが常に正しいとは限りません。ハザードマップの想定を超えていれば、当然被災する可能性があるということは意識しておくべきです。

吉賀町の避難所所の一つ、吉賀高校体育館にある避難所表示。土石流と崖崩れ・地すべりの時には使えないことがわかる仕組み。この適応表はハザードマップがベースになっていることに留意。

 東日本大震災で多くの教員や生徒が犠牲になったとある小学校では、その小学校が避難所になっていてハザードマップでは津波でも水没しないとされていたことから、避難所を開設するしないで揉めているうちにみんな津波に飲まれてしまったという話(詳しくはwikipedia「石巻市立大川小学校」を参照)もあります。今いる場所に危険が迫っていて避難するときに必要な行動パターンは「避難所へ避難する」のではなく、「安全な場所へ避難する」です。
 緊急時にはどこへ避難するかを時間はありません。
 水害でも津波でも、より高い場所へ避難してあなたの安全を確保すること。結果的にその場所が無事だったとしても、高台に逃げてはいけない理由は何もないのです。
 同じように、避難しなくてはいけない災害が起きたときには、どのようにすれば自分の安全を確保できるのかについての行動パターンを作っておいてくださいね。

「行動を起こす鍵」を決めておく

 現在国会で新型コロナウイルスへの対応を巡っていろいろな話をしているようですが、滅多にない大規模な感染症ということなのか、政府の動きがなんとなく後手後手に回っているような気がします。
 以前にもSARSや新型インフルエンザ対策などで大騒ぎしたはずなのですが、そのときに得た教訓は「行動を起こす鍵」を決めておくということです。
 「行動を起こす鍵」は「トリガー」や「引き金」とも言われますが、さまざまな想定で検討をしておいて、どんな状況になっても発生したらすぐに行動に移すことができるようにパターン化して行動を決め、その行動を起こすための鍵となる事象を決めておく作業をさします。
 例えば災害対策では「BCP(事業継続化計画)」と言われる状況と対応の計画書がそのままこれに当たります。
 もちろん状況は動きますし、設定した状況と100%同じ事態が起きることはまずないでしょうが、いろいろと検討しているうちに備えなければいけないことがはっきりと見えてきますので、その対応をするための行動を起こす鍵をしっかりと決めておく。これは平時にこそ準備しておくもので、非常時に慌てふためかないために必ず検討して準備しておいた方がよいものです。
 「Aが起きたらBを実施」という考え方はプログラムのようですが、BCPというのはまさにプログラムで、設定された状況に従って行動をするためのツールとして考えてみるとわかりやすいかもしれません。
 慌てている会社や自治体はこのBCPがうまく機能しておらず、落ち着いて手を打っている会社や自治体はBCPがうまく稼働していると考えていいと思います。
 BCPがないのにうまく対応している会社は、この「行動を起こす鍵」をはっきりとさせていて、それを従業員や顧客にも周知徹底がされているところでほぼ間違いないはずです。
 企業のBCPだけでなく、家族やあなたの生存継続化計画を作るときにも、この「行動を起こすための鍵」を意識して計画を組んでみてください。
 難しくてややこしくて専門業者に丸投げしていた企業のBCPが、そんなに難しくないと感じると思いますよ。

被災後の生活リズムをきちんと作る

 避難所での生活では、食事と消灯時間は避難所全体で決定されますが、それ以外の時間は各自で過ごすことになります。
 また、自宅避難の場合には、全てが自分の思うように時間を使うことができます。
 ただ、そうなってくると乱れてくるのが生活リズム。それまでの生活ではなんとなく生活リズムが決まっていたと思うのですが、被災後はさまざまな要因から生活リズムが狂ってしまいます。
 でも、それをそのままにしておくと、落ち込んだり、寝不足や会話がないことによる精神不安、寝て過ごすことによる身体機能の低下、支援物資のお菓子をひたすらつまむことによる肥満など、あなたの心身にとってよくないことが起きてきます。
 生活や明日の不安があるときだからこそ、無理矢理にでも生活リズムを作って気持ちを切り替えるようにしておかないと、気力体力を維持することはかなり難しいです。
 起床時間、寝床から出て起きている時間、歩く時間、食事や洗濯の時間、トイレの時間、就寝時間など、とりあえずでいいので、自分の生活表を作ってそのとおりになるように生活をしましょう。
 そして、片付けやこどもの見守り、炊き出しなど、自分ができることを見つけて身体を動かすようにしてください。
 そうすることによって生活に張りが出てきます。
 大規模な災害で被災するとこの世の終わりのような気持ちになるものですが、それでも生きている以上は生活をしていかなければなりません。
 いち早く生活リズムを作って気力を取り戻し、自分が思うような普段の生活を取り戻すようにしたいものですね。

避難所へ避難するための判断基準

 「被災しそう、または被災したら避難所へ避難する」というのが災害対策ではよく言われますが、自治体が作っている避難所の圏域人口と収容人員にかなりの開きがあることをご存じですか。
 自治体の作る地域防災計画では、避難所は自宅が倒壊したりひどい損傷を受けて生活の場にすることができない、または他所から来て帰宅できるまで生活できる拠点がないという人を収容する想定で考えられています。
 そのため、台風や水害などあらかじめ避難する場合を除いては「在宅避難」が前提とされています。家屋の耐震補強が勧められているのも、地震で家屋がつぶれないようにすることで生活者の命を守ること、そして在宅避難ができる環境を維持することが目的と考えることができます。
 そう考えると、地震で被災したときには2段階で避難所へ避難をするかどうかの検討をする必要があります。

1.家屋の危険度を見極める

 家屋本体にどのような損害が出ているのかを確認します。
 次に周辺家屋が自分の家屋に被害を与えないか、火災・液状化現象・津波などの二次災害が起きていないかを確認します。

以上の確認をして、とりあえず建物が余震に耐えられそうかどうかを確認します。
本格的な被災状況の確認は自治体が実施する「応急危険度判定」に任せるとして、とりあえずは目で見て問題がなさそうなら次の確認を行います。

2.生活できるかを確認する

 自分の家屋の内部が生活可能かを確認します。他人の支援が必要な人や健康に不安のある方は、自身の生活が維持できないと判断したら避難所へ避難します。
 片付ければ住めるのであれば、生活できる空間作りを優先し、在宅避難をするようにします。例えば窓ガラスが割れていて散乱しているようであれば、割れたガラスを片付けて、窓ガラス代わりのブルーシートなどを使うことで、居住空間を確保することは可能です。
 また、自宅が住めなくても納屋、テントを張れるような庭などがあれば、そこを居住空間にすることが可能です。

 避難所への避難は、被災者全員では無く、生活弱者や住む場所を失った人が行うようにします。そうしないと、避難所に人が収容しきれずに避難所としての機能が麻痺することになってしまいます。
 よく騒動の元になることなのですが、「避難所に避難しないと支援物資がもらえない」は誤りです。避難所は支援物資の拠点になっていますが、そこで物資を受け取ることができるのは、避難所への避難者だけではなく、在宅や避難所以外に避難している被災者全てです。
 このことは災害対策基本法にしっかりと明記されている(災害対策基本法第86条の7参照)のですが、自治体職員も含めて知らない人が多いので、避難所運営訓練などでは避難所への避難者以外も対象になることをしっかりと関係者で情報共有しておく必要があります。

 また、避難所へ避難する場合には、電気のブレーカーやガスや水道の元栓をしっかりと締め、できる限りの戸締まりをしっかりとしてから避難するようにしましょう。

避難所の運営は誰がする?

 災害が起きて避難所が設置されると、それからは避難所運営という仕事ができます。
 ただ、この避難所の運営については誰が行うのかが結構曖昧な状態で置き去りにされていて、避難所になった施設の職員や教員、行政の職員、自治会関係者、どうかすると「自分以外の誰か」という方までいらっしゃいます。
 避難所は、本来はその避難所に避難する対象となっている地元の自治会や自主防災組織が運営をすべきなのですが、残念ながら開設時に準備した人がそのまま運営に巻き込まれてしまうというのが実際のようです。
 ただ、施設の職員や学校の教職員、行政職員は本来は災害時、災害後にやらなければならない業務が山積していて、避難所の運営にかかわっている場合ではありません。
 例えば、熊本地震ではある市町村で職員が全て避難所運営に出払ってしまったために応急復旧や被災地支援、支援受け入れといった本来行政がやらなければならない業務が全て停止し、現地に応援で派遣された他所の行政職員によってその市町村の災害対応業務が行われることになり、さまざまなことが遅れに遅れる結果となりました。
 また、ある学校ではその地に転勤してきたばかりの教員が避難所運営に巻き込まれてしまい、何も分からないまま右往左往する羽目になりました。
 その地元をよく知っている人が運営の主体となり、施設職員や教員、行政職員はそれぞれの立場から運営を支援するという状態を作れていれば、それぞれが自分の得意な部分で復旧や支援に取り組むことができるようになります。
 また、地域を知っているからこそ避難所の機能である「避難者の受け入れ」と「被災地区の物資や情報支援」という業務を効率よく行うことができます。
 「自分たちは素人だから」とか「税金払ってるんだから行政がやればいい」というスタンスだと、いつまでも復旧が前に進まず、結果的に自分が苦しむ羽目になっていきます。
 避難所をきちんと運営するためには、避難所の訓練だけでなく、いろいろな組織や行政との連絡や段取りをつけ、それを的確に避難者や住民に伝える必要があります。
 防災訓練をするのであれば、そこまで踏み込んだ訓練を行って、いざというときにきちんと機能する避難所運営をしていきたいものですね。

避難所には何がある?

避難所でよく出てくる体育館。生活するためのものは一切無いのが普通。

 「危険を感じたら非常用持ち出し袋を持って避難所または避難場所へ避難しろ」というのは、災害対策で出てくる基本的な部分の一つです。
 避難場所は文字通り「避難するための場所」なので一時的に避難ができることが条件になっており、学校の校庭や公共施設の駐車場など、露天の場所が指定されていることも多いです。
 では避難所はどうでしょうか。避難所は災害後に家が壊れたり何らかの事情で住めなくなった人が一時的に生活空間を作る場所であり、地域の支援物資の集積所であり、情報や人の集積所にもなっていますが、今回は「避難所で生活するとしたら?」を考えてみて欲しいということを取り上げてみたいと思います。
 まず最初に、あなたはあなたが避難する避難所のことをどれくらい知っていますか。どのようなものが準備されていて、誰が運営して、どのような支援が受けられるのかを知っていますか。
 この質問をして全てにきちんと答えられる状態であれば、可否はともかくその避難所のことを理解できていると言ってもいいでしょう。
 一般的には、田舎の小さな集落ほど避難所として使える施設は日常の生活空間に近くなり、都会で人口の多いところに行けば行くほど過酷な避難環境になると考えて間違いありません。
 田舎で避難所に指定されるのは、たいがい集会所や公民館で、こういったところは畳部屋や給湯施設がきちんと整備されていて、座布団や毛布などもあり、とりあえずはそのまま寝っ転がってもなんとか生活できる資材があることが多いです。

パーソナルスペースを作るための段ボール間仕切りの設営訓練の風景。
この間仕切りさえない避難所がほとんど。

 でも、例えば避難所が学校という場合には、支援物資は何一つ備蓄されて折らず場所貸し状態というところが結構ありますから、雨露をしのぐだけの場所と考えての準備が必要となりそうです。
 つまり、避難すべき避難所の状態によって自分で準備すべき身の回りのものが変わってくるということです。座布団や毛布がある畳敷きの部屋なら、寝具関係はなくてもなんとかなりそうです。でも、タイル張りの床に座るスペースしか無いとうことであれば、敷物や断熱材を用意しておかないと床の冷えを拾ってしまったり、堅い床に寝ることで身体を痛めたりすることになります。つまり設備のある避難所に避難するのであればその部分の準備は簡単にしておけばよさそうですし、設備がない避難所であれば、自分の身を守るためのさまざまな装備も持っておかないといけないということが理解できると思います。避難所に電源がなければ自分でそれも確保しておかないといけませんし、食事や飲料水などは当然準備が必要です。
 避難所の状態を確認して非常用持ち出し袋の準備を整えておくと、いざというときに困ることが少なくなると思います。
 とりあえず、自分が避難しようと思っている避難所に一度歩いて移動してみて、避難所ができたらどんな状態になるのかについて確認をしておいてくださいね。

手を洗おう

 衛生管理の基本は手洗いです。消毒ではなく手洗いです。石けんをつけて、流水でしっかりと洗うこと。衛生管理の第一歩はここから始まります。
 被災地でさまざまな感染症が流行するのは、この手洗いをするための充分な水が手が入らないために発生するもので、アルコール消毒液を置いていても感染症を防ぐことができていないことから、流水による手洗いの効果のすごさがわかると思います。
 さて、世の中は新型コロナウイルス対策ということなのか、手を洗うのに充分な水も石けんも確保できるというのにアルコール消毒液がなくなっているという不思議な現象が起きています。もしかしたら、手洗いの仕方がわからないのかもしれません。
 今回は手洗いの仕方を教えてくれる動画をいくつかご紹介しますので、気に入ったものを確認してしっかりと手洗いをするようにしてくださいね。どの映像もやっていることは同じですが、この前提となる部分には、最初に水洗いで手の汚れをざっくりと落としておくことが必要となりますので注意してください。

 繰り返しますが、アルコール消毒はしっかりとした手洗いができていることが前提で初めて役に立つものです。
 アルコール消毒液も石けんでの手洗いと同じ段取りを踏まないとしっかりとした除菌はできません。石けんでの手洗いとの違いは、流水で汚れを落とした後、手をしっかりと乾燥させる必要があること。アルコール消毒は手が水で濡れていると効果がなくなってしまいます。乾燥させた手に、石けんと同じような段取りで消毒液をつけ、もう一度乾燥させて初めて衛生的な手になります。アルコールで濡れている状態では、殺菌ができていないことに注意してください。

参考:厚生労働省「手洗いで感染症予防(PDFファイル)」

 本当は石けんの方が手早くきれいに洗えるはずなのですが、アルコール消毒の方が手軽で確実だと思われているのが現状です。石けんはどこに行ってもまだまだ売っていますから、アルコール消毒液がないからといって諦めず、しっかりと石けんで手洗いするようにしてくださいね。

家具を固定しておこう

 新型コロナウイルスばかりが毎日話に出てきますが、東海・東南海地震や首都直下型地震など、今後30年以内に起きるとされている大規模な地震が発生しなくなったわけではありません。
 新型コロナウイルスの話が出る前には地震ネタばかりが世間を賑わせていましたが、新型コロナウイルスが流行して以来、ぱたっと止まってしまいました。現在の報道のあり方についてこれでいいのかしらと思うこともあります。
 ともあれ、いくつかの都府県では緊急事態宣言がされたようですが、さまざまな理由で家にいないといけない状態なのであれば、重要度は高いけれど普段の生活には直接支障のない家具の固定作業をしてみてはどうでしょうか。

L字金具による固定。方法はいろいろある。

 寝室については倒れたり落ちたりするものは置かないにこしたことはありませんが、さまざまな理由でなんらかの家具を置かないといけないこともあるでしょう。
 対策としては、家具をしっかりと固定しておくことです。地震の時にそれらの家具が倒れてきてしまっては、そこからの脱出に貴重な時間を取られてしまうことになります。阪神淡路大震災では、多くの家が倒壊しましたが、倒れた家具の下敷きになり、その上家の下敷きになってしまって救助が間に合わなかったというケースがたくさんありました。
 家の倒壊は耐震補強しか手がありませんが、家具の下敷きになるのは部屋から家具を追い出したり、しっかりと固定することで防ぐことが可能です。また、さまざまな部屋にある家具をしっかりと固定しておくことで、地震の際に自分の安全を確保することができます。

突っ張り棒と固定具を併用した固定方法。複数の方法で固定する方が効果が高い。


 家から出られず、テレビ見ても気が滅入るだけですから、普段できないけれどやっておいたことがいいことのひとつ、家具の固定をしておいてくださいね。
 なお、固定が難しい場合には背の低い家具や収納ボックスに変えるという方法もあります。自分の生活スタイルにあわせていろいろと検討してみてください。

情報を伝える方法

 情報を伝える方法はいろいろとありますが、大きく分けると「文字」「音声・音」「写真や動画」「五感」にわけられると思います。
 この中で一番冷静に内容を伝えることができるのは、おそらく「文字」になるでしょう。感情やリアルタイムさを感じるのは「音声・音」ですし、一目で状況を伝えられるのは「写真や動画」、そして自分の安全判断の基準としては「五感」が上げられると思います。
 日々の情報はこれらの内容を組み合わせてあなたに伝えられ、そしてそれを元にあなたの行動が決められていくわけですが、伝えたい内容と伝える手段が間違っていると、あなたが何を伝えたいのかが相手に理解されないことが起きてしまいます。
 災害発生時、避難行動をしないといけないときに自撮りをしても見た人があなたが伝えたいことを理解できるとは思えませんし、避難先でどのような状況にいるのかは、文字情報よりも写真の方が知りたい情報を見ることができて便利です。元気かどうかを確認するのなら声を聞かせるのが一番でしょうし、自分の安全確保は五感の情報を付け加えてやるとイメージがしやすくなります。
 学校や施設など、人を預かっている場所で被災した場合には、第一報は文字情報、落ち着いてから写真や動画、音声情報という風にすると受け取る側の混乱を防ぐことができます。
 災害時にラジオを使うのは、それがあなたの行動を止めずに情報を得られる道具だからですが、冷静に状況を判断するためでもあります。被災した映像や写真を見てしまうとその映像や写真に意識を取られてしまって自分の取るべき安全対策ができなくなってしまいます。また、あまりにひどい状況だと将来への希望や望みを最初から失ってしまうことにもなりかねません。
 情報は複数の経路で伝えることが基本ですが、状況に応じて適した提供方法を採るようにしたいものです。また、どのような情報であれば受け取る側が判断しやすいのかについても、支援者や保護者とお互いに確認し合って、いざというときに備えるようにしてくださいね。