【活動報告】高津小学校で防災クラブを開催しました

 去る6月21日に益田市立高津小学校で、本年度第2回目の防災クラブを開催しました。
 今回は地震を体験できる起震車が益田地区に来ていたので、消防署にお願いして子供たちに実際に地震がどのようなものかを体験してもらいました。
 子ども達が体験した地震は東日本大震災と阪神淡路大震災。どちらも震度7の地震ですが、東日本大震災は海溝型、阪神淡路大震災は活断層型と、発生した原因が異なるために揺れ方も違います。
 最初は遊園地のアトラクションを待つように楽しそうな子供達でしたが、実際に揺れを体験してみるとかなり驚いたようで、起震車から降りてもまだ揺れている気がする子や、他の人が体験しているのを食い入るように見ている子もいました。
 この体験をした後で普段学校でやっている避難訓練での揺れた時に机の下に隠れることができるかや、先生が言われるような避難ができるかについて聞いてみると、「無理!」という回答が返ってきました。
 それまでは漫然とやっていた訓練でも、実際に揺れを体験してみたことで考えるところがあったらしく、すごく真剣に考えていました。
 イメージできなかったことがイメージできるようになってくると、訓練する様子もだんだん変わってきます。今回の起震車体験が今後子供たちの安全確保につながるといいなと考えています。
 今回起震車を配車してくださった益田広域消防本部の皆様、クラブ担当の先生、そして参加してくれた子供たちにこころからお礼申し上げます。

行政の避難所対策

 研修会などで過去の災害での避難所の写真を参加者にお見せすることがあるのですが、それを見た人の感想というのが「どれがなんだかわからない」というものです。
 もちろん写真の雰囲気である程度の時代はわかるのですが、そこに出てくる風景というのは、それを除けばほとんど変化がないものになります。
 大きな体育館のような場所にござや敷物が敷かれていて、不安そうな顔の避難者が無秩序にプライバシーのない状態で過ごしているという状態。
 もしもお時間があるようでしたら、インターネットで検索してみるといろいろ出てくると思いますので見てみてほしいのですが、これだけ災害の多い国なのにもかかわらず、避難所については何の進歩もないのかなとちょっと悲しくなってきます。
 幸か不幸か、新柄コロナウイルス感染症の流行に伴って避難する最初の時点から空間を仕切るということが行われるようになりました。
 その結果は、避難所の収容人員の大幅な減少ということになり、避難所難民といった言葉が登場したりすることになったのですが、そもそも避難が必要な危険な場所に住んでいる人が相当な数がいるということが、貧弱な避難所の状態の大元になるのかもしれません。
 避難する場所があるだけでもいいというのは確かにそうなのですが、それでも難民キャンプでの最低限人道的な生活を送るための基準、いわゆるスフィア基準を下回るような状態は決してあるべき姿ではないのではないでしょうか。
 現在言われている南海地震・東南海地震が起きた時、どれくらいの人が被災者になって避難所に押しかけてくるのかはわかりませんが、人口が都市部に集中してきている現状を考えると、過去の大災害よりも悲惨な状況になることが予測されます。
 避難所は最後の手段と考えて、被災しないと思われる知り合いなどの家や被災地外の宿泊施設、また、そもそも被災しそうな場所に家を建てないなどして、避難所への避難が選択肢の一番最後になるようにすることと、避難所を細分化すること、そして避難所を設置するためのパーテーションやテント、トイレや生活空間の確保など、個人で準備すると持っていない人とトラブルになりそうな部分については、できるだけ行政が資材を準備しておくこと、そして避難所の運営についてはできる限り地元やボランティアに任せていくこと。
 そのためには、平時にいろいろな準備をしておく必要があるはずなのですが、あなたのお住いの自治体は大丈夫ですか。

知っていること、できること

 災害対策に限りませんが、どんなことでも知っているということとそれができるということはまったく異なるものです。
 防災に関しても、多くの人は頭ではやらないといけないことは理解していると思うのですが、頭で理解しているだけで、いざというときにはまったくできていないということが非常に多いです。
 災害後によく「想定外だった」や「想像していなかった」「予想していなかった」「まだ大丈夫だと思っていた」といったコメントがほぼ必ず毎回出ているのは、頭で理解していると思っていたことができていなかったということの証明になるのではないでしょうか。
 避難訓練や災害対策のあれこれは、わかっているからしなくても大丈夫という方が結構いらっしゃいますが、知っていることとできるということが違うということを理解しておいてほしいと思います。
 頭でわかっているつもりでも、実際にやってみるとさまざまな齟齬が発生するものです。齟齬が出るからこそ、しっかりとした訓練をするわけですし、訓練後の修正点や反省点を確認したり、対策について見直したりすることをしておかなければいけないのです。
 訓練はうそをつきません。
 知っているだけではできませんし、訓練をやっている分だけは、いざというときにも体がしっかりと動くはずです。
 知っていることとできることは全く違うのだということを理解したうえで、防災活動にしっかりと参加していってほしいと思います。

機能を止めない方法を作っておく

どのようなお仕事でも、その仕事が無くなったら困るという方が必ずいるはずです。
特に人にかかわる仕事の場合には、災害でその機能が止まるとさまざまなところに大きな影響が発生しますので、平時に対策をきちんと立てておくようにしてください。
特に保育園やこども園といった小さな子供を預かる施設、高齢者を受け入れるデイサービスなどは、その機能が止まってしまうと家族はその世話をすることになってしまって、おうちの片づけすらできないことになってしまうので、代替策を準備し、災害が発生した時には速やかに代替手段に切り替えるようにして、家族が復旧に専念できるような体制を構築しておく必要があります。
そのためには、保育園やこども園、デイサービスといった施設の職員さんのおうちの災害対策がしっかりとできていなければなりません。
施設のBCPはその施設だけで完結するものではなく、施設にかかわるあらゆる人やもの、組織といったところも含めての対策を作る必要があります。
施設だけではなく、さまざまな企業や組織においても同様です。
自分のところの仕事だけでなく、周囲の人やもの、組織とも連動してBCPを構築することが、地域の素早い復旧のための重要な項目となります。

地震とそれ以外で対応を分けること

 災害時に備えていろいろと準備するように言われていますが、気をつけないといけないことがあります。
 それは災害によって備えるべきパターンをわけておくこと。
 より具体的には、地震とそれ以外の災害にわけて考えることが大切になります。
 地震は来た時には勝負がついています。つまり、建物やブロック塀などの耐震補強や逃げ込める場所の確保といった、どれくらい事前の準備ができているかで結果が決まります。
 対して、それ以外の災害ではある程度予測や予兆がありますので、対策をする時間があります。
 「マイタイムライン」はまさにこの予測できる災害に備えた災害時行動計画になり、これを整備しておくことで自分が助かる可能性が上昇します。さらには、状況に応じてさまざまな行動パターンが作れるのも予測ができる災害対策の利点です。
 いきなり来ると言われる火山の噴火でも、さまざまな映像を見る限りは噴火の開始から1分~数分の猶予はありますのから、その間にできる限りの退避行動をとることはできます。また、事前の準備である程度生存率を上昇させることもできると思います。
 さまざまなところがやっている災害の研修会では、結構この部分がごっちゃになって説明されているので、なかなか理解してもらうのが難しいのではないかと思っています。
 地震は事前準備と発生時から治まるまでを分けて考え、それ以外の災害では時系列で行動を整理していく。
 これをわけるだけでも考えるのにかなり楽になります。
 もしも何から手を付けていいのかわからない人がおられるのなら、地震とそれ以外でまずは切り分け、それぞれにどのような対策がいるのかについて考えてみてください。

スマートフォン用の充電池を持っていますか

 好き嫌いにかかわらず、最近ではさまざまな情報を得るのに使われているツールがスマートフォンです。
 電話、といいながら、さまざまなアプリで情報交換したり、音楽を聴いたり、写真を撮ったり、ゲームをしたりと、一台で何役も仕事をしてくれる優秀なアイテム。
 ないと困るという人も多いと思います。
 ところで、災害が起きると問題になるのがこのスマートフォンの充電方法。
 スマートフォンを大規模災害後もそのまま使えるようにするためには、スマートフォンを充電できる充電池を持ち歩いておくほうがよいでしょう。
 中には大容量のバッテリーを持つスマートフォンもありますが、そういったものでもない限りは、大規模災害後に電源を入れっぱなしにしておくと、びっくりするくらい電池を消耗します。
 これは基地局を探すためにアンテナの出力を自動的に上げることで起きるものだそうで、対策としては使わないときには機内モードにするか、あるいは電源を切っておくことが有効です。
 ともあれ、情報を集めるにしても安否確認するにしても暇つぶしするにしても、バッテリーが切れてしまってはただの箱。
 そうならないように、充電池を一緒に持ち歩くようにしてください。
 ちなみに、避難所では避難所にあるコンセントを勝手に使って充電することはできません。大規模災害の場合には、手持ちの電池で何とかするしかありませんので、充電池だけでなく、可能であれば太陽光発電装置なども用意しておいた方がよさそうです。
 自分のスマートフォンのバッテリーをどうやって持たせるのか、普段から意識して準備するようにしてください。

【活動報告】長浜まちづくりセンターで防災研修会の講師をしました

 2023年5月13日、浜田市の長浜まちづくりセンターで地震に対する備えを中心とする防災研修会の講師をしました。
 当日は18名くらいの方にご参加いただき、予定していた起震車が雨天で来れなかったので、みっちり2時間に渡って研修をさせていただきました。
 長浜地区は山あり海ありで地区内でもさまざまな条件があり、それぞれに備えが変わってくるところです。
 参加者にはご家族連れ、特にお子様が多く、プログラムを子供向けに急きょ振りなおして、台車を使った揺れ体験や、地震の時の防御姿勢、部屋の見取り図を描いて危険な場所を探してもらう「おうちの安全チェック」などを体験してもらいました。
 休憩時には、参加してくれていた子供から「地震のとき、机の下でどんな格好したらいいか教えて」というご質問をいただき、その場にあった会議机を学校の机に見立てて、机の下での防御法を説明しましたが、実物があるともっとわかりやすかったかなと思いました。
 いざというときに自分の身を守るのが、大人でも子供でも変わりません。
 「地震の時には先生の言うことを聞きましょう」と学校では教えていますが、それでは先生がいないときには子供は自分の命を守ることができませんので、きちんとした地震の時の防御姿勢やその後の避難の方法などを、子ども達が自らできるように、しっかり伝えていきたいなと思っています。
 今回お声がけいただきました、浜田市の長浜まちづくりセンター様に、こころからお礼申し上げます。

地震の時の防御姿勢

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 あちこちで地震が起きていますが、あなたがお住いのところは大丈夫ですか。
 さて、地震が起きた時に最も怖いのが怪我をすることです。
 転倒したり、落下物の下敷きになったりして怪我をしないように、例えば小学校では「机の下に入る」や「ダンゴムシのポーズ」などを教え、姿勢を低くして頭を守る行動を教えています。
 迅速に動けない方でも、姿勢を低くすることはできる人が多いと思いますので、できる範囲で姿勢を低くすること、そしてそれも無理なら周りの丈夫なものにしがみつくなどして、揺れで体がひっくり返らないようにしておきましょう。
 ところで、こういった防御姿勢ができていても、頭上から防御力以上の落下物が落ちてくると怪我をしますので、防御姿勢をとる前には周囲の安全確認をしっかりとしておきましょう。
 例えば、瓦やブロック塀、自販機のある周りにいたら、そこからは離れることや、駅やデパートなど吊り天井のところでは、できるだけ柱や壁などしっかりした部分に近づくなど、落下物から身を守る場所を選ぶようにします。
 また、職場や家などでは、そもそも落下物ができるだけ発生しないように、棚は低めにすることや、高いところに重たいものを置かないなどの対処をすることが大切です。
 周囲の安全確認と自分の防御姿勢をとることを一瞬で判断して行動するのは難しいですから、なんでもないときから周囲の安全確認をするくせをつけておくといいですね。
 ともあれ、地震の揺れで怪我をしないように、事前の対策をしっかりととるようにしてください。

古い神社は避難所です

 もしあなたの周りに古い神社があったとしたら、そこはさまざまな災害からあなたを守ってくれる場所になるかもしれません。
 工事などで神社が移転した場合を除くと、古くから神社がある場所は周囲に比べて安全な場所にあるはずです。
 というのも、神社のご神体ががけ崩れで埋もれたり水害で流されたりした後、二度と同じ事態にならないように、多くの場合それらの被害に遭わなかった場所に神社が移転しています。
 その結果、古い神社は周りで一番安全な場所に動いていき、被害のない場所に鎮座したのです。
 そういう経緯から、氏神様を祭る神社は、少し前の時代までは避難所の性格も持っていました。いざというときに安全に逃げ込めるように、参道の掃除は欠かさなかったですし、避難所のような公共性のある建物だからこそ、建て替え時には周辺の家々に寄付が回ってきていたのです。
 太平洋戦争のあとの政教分離と、無神論の広がり等に伴って、多くの神社が宮司も氏子もおらずに朽ち果てていっている現状ですが、避難所と考えて、そういった場所の整備をするのもありなのかなと思います。
 宗教的なあれこれは置いておいて、もしあなたのいる場所が安全な避難場所や避難所から遠いのであれば、近くの古い神社を選択肢にしてもいいのではないでしょうか。
 ちなみに、古くても合祀などで移転している場合もありますので、事前にハザードマップなどで安全かどうかは確認しておいてくださいね。

地震が起きた後

 石川県珠洲市を中心とする地域の地震が頻発しているようで、現地の方は落ち着かないと思います。
 規模の大きな地震の場合、発生後数日~数か月は揺れが断続しておきますので、怪我をしないように十分気を付けてください。
 おうちのお片付けのときには、なるべく高いところに荷物を片付けないようにすることや、壊れやすいものはなるべく低いところに置く、寝るところには家具や落下物になりそうなものは置かないなど、怪我をしないことに注意してください。
 また、被災家屋の応急判定がされていると思いますが、貼られた張り紙の色が赤だけでなく、黄色のおうちも続く揺れに耐えられないことがありますので、十分に気を付けてください。
 それと、家と家の周りの点検も必要です。
 揺れが何度も起きると、柱や屋根にも損傷が起きることがあります。特に屋根は損傷すると雨漏りが発生し、そうなると家自体にも悪い影響が出ます。雨漏りしないようにしっかりと点検をし、損傷があるなら手当をしておきましょう。
 家の周りでは、亀裂などの変化に気を付けてください。庭や家の基礎が上がったり下がったり動いたりしている場合には、続く揺れで思わぬダメージが発生することがありますので、早めに業者さんに点検してもらうようにしてください。
 地震だけであれば、現在の日本の建築基準にあっていれば大きな損害は起きにくいです。慌てずに、落ち着いて状況を確認して、自分の安全確保を第一に行動するようにしてください。