災害時にどのような行動を取るのかについては逃げ地図やマイタイムライン、目黒巻きや地区防災計画に至るまでさまざまなアイテムが用意されています。
ただ、割と多くの人が災害時の行動については頭の中にはあっても目で見えるようにはしていないみたいです。
災害時を含む非常事態というのは、トラブルが加速度的に増えていきますので、早め早めに対応しないと行動ができなくなってしまいます。
早めの行動というのは、考えていたことを目で見えるように書き出しておくことで、考えなくてもそれを見るだけで行動に移せることです。
非常事態や緊急事態に備える必要のあるところには、ほぼ100%非常事対応マニュアルというのが用意されていて、考えられるさまざまな出来事と対応策、対応する順番が整理されていますが、これは非常時にはどんなにしっかりとした人でも100%の能力は発揮できないこと、そして考えられなかった異常事態が起きたときにそちらに対応するための能力を集中させるために存在しています。
例えば、マイタイムラインを作成すると、備える必要のある災害、取るべき行動、そして最終的な対応まで一目でみることのできる一枚紙ができます。
この紙を、玄関や冷蔵庫、トイレなどに貼っておくと、無意識に中身を見て覚えることができ、その結果、そこに書かれた事態になったときに考えなくても行動を取ることができるようになり、結果的に身を守ることができるのです。
平時にあれこれと考えて対応策を決めるのであれば、それは必ず書き出して目で見えるようにしておきましょう。
そうすることで、少なくとも災害時の行動に迷うことはなくなると思います。
カテゴリー: 地形情報
地区防災計画ってなんだ?
最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
そのようなイメージで作るのが本筋です。
行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。
みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)
みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)
地域を知ることから始めよう
NPO法人には定款という活動する範囲を定めたものが存在し、その定款の範囲でさまざまなアクションを起こしています。
当研究所の定款の中には、防災関係のものに混じって「自然体験活動」と「有害生物対策」という二つが加えてあって、恐らく他の防災活動をしている団体様にはない特徴だと思っています。
災害対策はお住まいの地域、お住まいの場所、そしてお住まいの方によってやり方が変わってきます。同じ地域で隣り合うおうちであっても、備えなければいけない対策は異なっているのです。
このことを理解してもらった上で対策のお話をしないと、聞いている側には内容がイメージできません。イメージできないから備えが進まないし、何かが起きたときには「こんなはずでは・・・」という方を産むことになってしまうのです。
当研究所の自然体験活動は、地域を知るために必要だと考えて定款に加えてあり、山登りや雪遊び、川遊びなどを行っています。住んでいる地域の地質、山、森、川、海、気象条件、そして過去に起きた災害や最新のデータに基づく危険な場所まで、一緒に地域で遊びながらどのようなものかを体験し、そこから災害対策を考えているのです。
海に面していなくても津波は来るかもしれませんし、山の中でも低い場所は大雨では浸水したりもしますが、それは地域を知らなければ体験的に理解できないことだと思っています。
災害対策は、まずはその地域を自分の目で見て理解することがスタートです。できれば地域の人みんなでその地域で身体を使って見て回ることで、初めて災害対策の目線あわせができるのではないでしょうか。
「そこに住んでいるから、その地域のことはわかっている」という常識はとりあえず疑ってみてください。地域で遊ぶ時間がないようなら、せめて地図を持って散歩してみて下さい。
そうすることによって、あなたが命を守るために必要な条件が見えてきます。
もしあなたが災害対策を本気で考えようとしているのであれば、まずは住んでいる地域を知ることから始めて下さい。
それから、通学先や勤め先、普段よく行くところなど、手を広げていくと、いざというときにあなたが自分の命を守る前提条件を揃えることができるはずです。
大雪に備える
今年の冬はホワイトクリスマスになるかもしれないという予測が出ていますが、その後の天気はかなり激しいものになりそうだとも予測されています。
大雪になると、あらゆる交通が麻痺するのは予想されていると思いますので、急がない用事であれば、お出かけはしないほうが無難です。参考までに、島根県作成の動画を添えておきます。
ところで、家にいる場合でも、停電が起きる可能性がありますが、あなたのおうちの暖房器具はどのようなエネルギー源を使っているでしょうか。
もしも電気のみである場合には、停電に備えて冷えないための準備をしておいたほうがよいと思います。
それなりの蓄電池を準備しておけば、電気座布団や電気毛布であれば蓄電池を使って熱を作ることができます。
コンロがIHしかないのであれば、カセットガスコンロを準備しておくと、いざというときに湯たんぽが作れますし、調理もできて暖かいものが安心して食べられます。
普段使いするものに少しプラスすることで、生活の質を必要以上に落とさなくて済みますので、寒さをしのぐための対策について、大雪になる前に備えておいてくださいね。
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食べられる山野草を知っておく
大きな災害が起きてから復旧を始めると、困るのが野菜の補給です。
炊き出しや配給される弁当などは、思ったよりも野菜が少ないことが多く、特に冬場になると被災地では野菜は手に入りにくい状態になってしまうので、避難が長期化すると肌荒れや便秘、逆むけや唇のひび割れなど、野菜不足による身体の不調が発生してきます。
ただ、野菜はなくても食べられる山野草はどんな季節にも存在していますから、その辺に生えている山野草の判別が出来れば、野菜不足をある程度補うことができます。
ポイントは、食べられる山野草ではなく、食べると危険な山野草を知っておくこと。
タイトルと矛盾していますが、食べられる山野草によく似た、食べると場合によっては命に関わるような山野草がいろいろと存在しています。
食べると危険な山野草を知っておけば、それ以外は食べられる山野草になりますので、あまり難しく考えなくてもいいことになります。
よく見てみると山野草はあちこちに生えていますから、ポケット図鑑などを持って、お散歩のついでにおうちのまわりを調べて食べると危険な山野草を知っておくと、いざというときに非常に心強いと思います。
避難の場所を考えておく
ハザードマップなどに記載されている避難所や避難場所に避難するのに自動車がないと無理、というおうちは多いのではないかと思います。
特に地方に行けば行くほどその傾向が強くなるので、自治体が開設する避難所や避難場所に避難を考えているのであれば、避難レベル3が発表された時点で避難を開始しないと、避難できなくなる可能性が高いです。
でも、あなたの住んでいる場所に災害発生危険箇所、いわゆるハザードがないのであれば、家にいた方が安全です。
また、遠くにいかなくても、近くに安全な場所がないかを確認しておいて、いざというときにはそこへ避難するのもいいと思います。
避難するための施設がなければ、その安全な場所へ車で移動して、車で過ごしてもいいと思います。
車を避難施設と考えて、車の中に防災グッズを載せておけば、避難先でも安心して過ごすことができると思います。
避難は大丈夫?
気象災害が起きそうな予測が出ると、被災する可能性のある地域の人に対して避難指示が出されますが、あなたは自分の避難先について決めていますか。
また、避難するための経路と方法をきちんと決めていますか。
自治体から避難指示が出されたときにいくつかの避難所が避難先として開設されますが、お住まいの場所によってはその避難所に避難するのに、例えば氾濫するかもしれない川にかかっている橋を越えたり、土砂崩れするかもしれない崖の横を通るなど、発生が予測されている災害で危険な状態になりそうな場所を通らなければいけない場合ががあります。
避難レベル3での早めの避難開始であれば危険度は低いですが、避難レベル4での避難となると、避難経路に危険が生じる可能性について考えておかなければなりません。
そして、避難は避難所に行くために行うのではなく、あなた自身の身を守るために安全な場所へ移動するものです。
もしも自治体が開設した避難所に行くのに危険が伴いそうなら、近くの安全な場所を選んで避難してください。
また、そもそもあなたに避難が必要な災害なのかも、ハザードマップや地域の地図を見て確認しておくようにしましょう。
日本は災害列島であり、どこにいてもなんらかの災害は必ず起こりえます。
何も無いときだからこそ、非常時に備えて地図を見て、避難先や避難経路を決めておくようにしてください。
自分だけは死なない災害
災害が起きると、不幸にして亡くなる方が出る場合があります。
亡くなった方も、死のうと思って亡くなったわけではなく、何らかの事情で災害に巻き込まれて亡くなっていることが殆どです。
例えば、大雨の時に田の水を見に行ったり、川に様子を見に行ったり。出かける途中や出かけた先で溝や川にはまってしまっています。
災害で人が死ぬかもしれないという認識は殆どの人が持っていると思うのですが、不思議なことに、自分が死ぬかもと思っている人はまずいません。
自分が死ぬかもしれないという意識が持てないのです。
死ぬとは思っていないから、無意識に危険な行動を取ってしまい、そして亡くなってしまうことが起こるのです。
もしかしたら、非常時に平時の感覚で行動してしまうせいなのかもしれませんが、災害は誰にも程度の差はあれ危険をもたらします。
災害から身を守るには、「行政が言うから行動」ではなく、「自分の身を守るためにはどういう行動が必要か」をふまえた上での自分の判断で行動をしないと、手遅れになったり避難途中で遭難することになったりします。
「自分だけは死なない」のは、今までがたまたま運が良かったからで、単なる偶然でしかありません。
災害時の考え方は「自分が助かるにはどうすればいいのか」です。
考え方を間違えないようにしたいですね。
火山登山と監視体制
最近火山活動が活発化しています。
福徳岡の場や西の島、硫黄島などでかなり活発に造山活動が起きていますし、本日2021年10月20日午前11時43分には阿蘇山で大きな噴火がありました。
登山していた方に被害はないとの報道もありますが、大きな被害が起きないことを願っています。
ところで、日本は火山大国なのをご存じだと思いますが、火山だと言われている山がどれくらいあるかご存じですか。
気象庁によると、現在日本にある火山活動をする可能性のある山、いわゆる活火山は111峰。
中国地方では三瓶山と山口県の阿武火山群が指定されています。
この中で、噴火が起きるかもしれないということで常時監視対象になっている山は50峰。
こちらには三瓶山も阿武火山群も対象に入っていません。
本来は活火山は全て対象にすべきなのでしょうが、観測するための予算も火山学者も足りないことから地元自治体及びその火山のある管区気象台がリモートで監視しています。
ただ、観測して予兆があっても、それが噴火の予兆なのかどうかという判断は難しく、正確な噴火予知ができていない現状があります。
その結果起きたのが2014年の御嶽山噴火での登山者の犠牲ですが、そういった災害が起きても状況はあまり変わらず、現在に至っています。
ちなみに、三瓶山や阿武火山群では、何か異常が起きると観測機材を持ってきて監視を始めるという体制になっていますが、実際にしっかりとした観測体制を取ることが可能かどうかはその時になってみないとわからないと思います。
今回の阿蘇山の噴火では警戒レベル1で噴火が起きました。御嶽山の噴火でも噴火直前の警戒レベルは1。
ただ、事前に火山性地震は観測されていますので、こういった山を登山するときには、噴火警戒情報だけに頼るのではなく、そこで何が起きているのかを調べた上で出かけることが重要だと思います。
防災工事の勘違い
公共工事で行われる、例えば急傾斜対策工事や地すべり対策工事、砂防工事や防波堤、堰堤などを作る防災工事は、その工事を行うことにより周囲の被害を防ぐことができるようなイメージがあります。
このイメージは完全な間違いというわけではないのですが、これらの工事も想定される雨量や水量といったものを前提に設計・施行されているため、その想定を超える雨や水量が出れば当然被害が発生します。
「工事の施工完了=100%災害が起きない」というわけではないのです。
もちろん工事をしていないよりはしてある方が災害が発生する確率は格段に下がりますから、やれればやったほうがいいのですが、やってあるから絶対に大丈夫とは考えないでください。
どちらかというと、これらの施設はあなたが逃げる時間を作り出していると考えた方が正解です。
土砂災害が起きる予兆を感じたら、まずはそこから逃げること。
仮に施設が破損したとしても、あなたが逃げて命が守れたのであればその施設はきちんと目的を果たしていることになるのです。
防災工事をしたから災害が起きないという勘違いはしないでください。
あくまでも逃げる時間を稼ぐための施設と考えて、しっかりと情報を集め、早めに避難するようにしてくださいね。