大雨への備えをしておこう

2020年の氾濫危険水位まで上昇した高津川高角橋付近。このあと雨がやんで事なきを得たが、今年はどうなるかわからない。

 令和3年5月15日、中国地方は梅雨入りしました。観測史上、2番目の早さだそうです。
 ちなみに、一番早かったのは1963年5月8日だそうで、その次が2011年5月21日となり、今回の梅雨入りが2番目の早さとなったということでした。
 さて、ここ最近の雨の傾向を見ると、短時間にピンポイントで大雨が降るというのが続いています。
 排水能力を超えて内面越水をしてしまうケースも増えていますので、家の雨どいや側溝の掃除は早めにしておいた方がよさそうです。
 その上で、水没しそうな環境にあるのであれば、土のうや水嚢の準備、そして貴重品の階上への移動は早めにやっておきましょう。
 そして、線上降水帯には要注意です。これが発生すると、局所的な大雨が降り続くことになり、水害の危険性が増してきます。
 避難所だけでなく、安全な宿泊先への移動など早めの避難をするようにしてください。特に高齢者の方や普段の生活に人の支援が必要な方については、災害時に備えて万が一の受け入れ先や受け入れ体制、被災後の生活場所について予め詰めておきましょう。備えて使わなくてすむことを目標にして避難計画を作ることです。人や地域によっては備えることが害悪のようなことを言われる方もいらっしゃいますが、考えたくないから備えないというのはあなたや周囲の人の命を危険にさらす行為です。
 できる範囲でしっかりと備えて、いざというときにも命を守る、命をつなぐ行動ができるようにしておきたいですね。

線上降水帯に気をつけよう

 ここ最近の水害の傾向として、短時間にピンポイントで大量の雨が降って起きるというのがあります。
 これは線上降水帯が作られることによって特定の地域に次々に大雨をもたらす雲がやってきて雨を降らしていくことで発生しているもので、なかなか予測しづらく被害が大きくなりやすい現象です。
 この線上降水帯は南からの暖かい湿った空気と北からの冷たい空気がぶつかることで空気中の水蒸気が一気に雨となって降り注ぐのですが、雨雲レーダーや天気図を見ると、ちょうどその部分に三角形の形ができているのがわかります。
 雨がひどく降る場合には、この三角形が真っ赤に表示されることから、まるでにんじんのようだということで、にんじん雲と呼ばれることもありますが、このにんじん雲が天気図上や雨雲レーダーで自分の住んでいる地域の上空に確認できたら、急傾斜地や土砂災害警戒区域にお住まいの方はできるだけ早めの避難をお勧めします。
 できるだけ早めに避難して、身の安全を確保すること。
 これから雨のシーズンに入り、場合によっては線上降水帯も発生することがあると思います。
 雨が気になったら、雨雲レーダーや気象衛星の写真などを確認して、なるべく安全を確保するようにしてくださいね。

大雨警報の基準を確認しておこう

 そろそろ大雨に備えて準備をしておいても良い頃かもしれませんが、あなたの大雨対策は大丈夫ですか。
 大雨で行動を判断する一つの基準として、大雨時の警報があります。
 今日はこの大雨警報の基準を確認しておきたいと思います。

 

毎回書くことではありますが、自治体はどうしても地域を面で見ているので、点であるあなたの居場所がどうなのかは、自分の目で見て判断するしかありません。
 大雨では、気象庁が発信している情報や都道府県などが発表する土砂災害警戒情報などを元に地元自治体が避難の判断について発表をしていますので、見方を変えると判断に必要な同じ情報を自分でも得ることができると言えます。
 自分のいる場所の災害特性をしっかりと知った上で、気象庁や都道府県の基礎情報を見ることで、もしかすると地元自治体よりも早く行動を起こすことができるかもしれませんから、情報を得られる環境であるならば、天気がおかしいと感じたときに積極的に情報を調べるようにしてください。
 そのちょっとした行動が、あなたや家族、周りの人の命を救うことになります。
 とりあえずは大雨の基準を確認しておいて、いざというときの行動について再確認しておいてくださいね。

【活動報告】大神ヶ嶽で自然体験会を行いました

大神ヶ嶽から立石への縦走路で見かけた景色。ツツジが咲いていた。

5月4日、前日津和野町の青野山に引き続いて、益田市匹見町の大神ヶ嶽で会員向けに自然観察会を行いました。

 かつては修験者が修行したと言われる山系ですが、麓までは林道がついているため、登山口までの時間はかかりますが車で近くまで行くことができます。
 当日は大神ヶ嶽を登りながら、頂上付近にたくさんある岩や植物の植生、この地域を中心に住んでいる西中国個体群のクマ、寄ってきて隙あらば血を吸おうと狙っているブヨなどについてお話をさせていただきました。

 大神ヶ嶽から縦走すると大きさ50mくらいの立石という奇岩をみることができます。

立石と呼ばれる奇岩。上にある石は高さが50mくらいあるという話。

 この立石へのアプローチは少しきついので、登山道から眺めて折り返し、無事に下山することができました。

 参加者の中には3日の青野山に引き続きという方もおられて少々お疲れの様子ではありましたが、きれいな山の空気を始めさまざまなことをたくさん吸収していただけたと思っています。
 ご参加いただきました皆様に感謝します。

【活動報告】青野山で自然体験会を開催しました。

青野山から日原方面にまっすぐ伸びる弥栄断層。その上に国道9号線がある。

 去る5月3日、島根県鹿足郡津和野町にある青野山で自然体験会を開催しました。


 前日までの雨がうそのように晴れ渡った天気の中、会員様、そして会員様のご友人などにご参加いただき、賑やかに青野山を登山しながら春の山野草の観察をし、また、途中の視界が開けた場所では弥栄断層についても説明させていただきました。


 各自弁当の昼食をいただき、下山後は津和野城趾に登り、そこから本日登った青野山を別角度から眺めるオプションも実施。
 少々厳しい行程でしたが、参加された皆さん笑顔で終了することができました。
 この場をお借りして、ご参加いただきました皆様に感謝いたします。

通勤・通学経路を確認しよう

 家の安全についての検討が終わったら、次は家と職場を結ぶ通勤・通学路を確認してみましょう。
 普段意識することのない高低差や建物からの落下物の可能性、陥没や倒壊など、災害というフィルターを通すと普段と違った風景になってくると思います。
 特に車での通勤・通学をしている場合にはアンダーパスに気をつけてください。
 アンダーパスは、大雨時には周囲から雨水が流れ込んで大きな池になってしまうことがあり、意識せずに普段どおりに運転していると水没したアンダーパスに突っ込んでしまうケースが非常によく起きています。
 短時間で大量の雨が降る場合には、管理者の通行止めの措置が間に合わない場合もよくありますから、通勤経路を見直すときにそういった場所は外すようにするか、または大雨時には必ず迂回するということを常に忘れずに考えるようにしておいてください。
 他にも、風が吹いたら飛んだり落下しそうな屋根や看板、増水時に落ちてしまうかもしれないマンホールや側溝、地震時に倒壊しそうな塀や建物など、どういった経路にすれば一番自分が安全に移動できるかを考えてみましょう。
 小学校などでは通学路が決められていることも多いのですが、筆者の知る限り交通事故対策は考えていても防犯や防災の視点は取り入れられていません。

子どもによる通学路の安全点検の一コマ。

 そのため、子どもがいる場合には一緒に通学路を点検しておく必要もあるでしょう。 おうちの防災計画では、家から避難所までの安全な避難路を検討することがあると思いますが、普段使っている道の危険を知って安全対策をしておくことはとても大切なことです。
 災害対策は普段の生活の中にあるものですから、何かを考えるときには災害対策の視点を加えてみてほしいと思います。

災害対策で最初に家を考えるわけ

耐震化してないと、家具の下敷きになることも

 災害対策、特に地震では対策をするときに一番最初に言われるのは耐震補強、または耐震化という話です。
 家の倒壊を防いで命を守るということが一番の目的ですが、被災後にできるだけ避難所に避難しなくても済むことも大きな理由の一つです。
 もしお手元に避難所一覧があれば確認していただきたいのですが、避難所の大きさと収容人員を比べてみてください。その避難所の建物の中に、全ての避難者が生活スペースを確保して収まるでしょうか。
 多くの避難所は収容能力を超える避難者が割り当てられています。
 公的な施設に全ての住民を納めるとこうなりますということなのですが、実際に災害が起きると避難者が収容しきれずにあふれ出してしまうという事態が発生しています。
では、もしも家から避難しなくて済むとしたらどうでしょうか?
 家の安全が確保されているのであれば、避難時に危険な目に遭う可能性のある避難所への移動はしなくてもよくなります。
 また、住み慣れた家ですからどこに何があるかも知っているし、他人の目も気にしなくて済み、ストレスも少なくて済みます。
 できるだけ自宅から動かなくて済むように準備することが、災害対策のとても重要な位置をしめているのではないかと、筆者はそんな気がしているのです。
 もっとも、全ての家が安全な場所に建っているわけではありません。水害や台風などで被害を受ける場所にあるおうちだってあるでしょう。
 幸い、地震以外の災害では、大抵の場合何らかの前兆があります。自分の住んでいる場所がどうなったら危険なのかをあらかじめ調べておいて、どうなったら安全な避難所への避難行動を開始するのかを決めておけば、とりあえずの安全を確保することは可能になります。
 あなたのお住まいの家は地震に強い作りになっていますか。
 そして、他の災害で被災が予測されるような場所ではありませんか。
 災害対策は、それを確認するところから始まります。

【活動報告】自然観察会を開催しました

山頂から島根県側を望む。中央右の丸い山が青野山。

 2021年4月25日、山口県山口市阿東町にある十種ヶ峰で自然観察会を行いました。
 十種ヶ峰はこのあたりの単独峰で、地下には青野山造山帯に連なる火山ドームがあるとされていて、そのドームの形成によってできた山だとされています。


 この山には荒れた斜面に生えるヤマシャクナゲと言われる花の群生地があり、ちょうど花の時期だったことから、ヤマシャクナゲを観察しながら鉄砲水の出た痕跡や地面の変化などを辿りました。


 当日は天気がよかったこともあり、ヤマシャクナゲだけでなく、イカリソウやヒトリシズカ、カンアオイといったさまざまな花もゆっくりと観察することができました。


 また、ここ数年の大雨による川の掘削なども確認でき、土地の成り立ちによってさまざまなリスクや生態があるということを学習することができました。
 現在は会員向けということで、なかなかお声がけすることが難しかったのですが、参加してくださった皆様に感謝します。

災害対策は小さなことの積み重ね

 災害対策というと「面倒くさい」という言う人や「準備するだけ無駄」「やらなくても問題ない」「災害が起きたら何をしてもどうせ死ぬから」といった感じで対策を最初からやらないという方も多いです。
 確かに、いっぺんにいろいろとしようとすると、ものすごく手間がかかりますし面倒くさいものではあります。
 でも、その手間や面倒を惜しむほど、あなたの命は安いものでしょうか。
 例えば、自分が住んでいるところの地形やハザードマップの確認は5分もあればできると思います。
 建物が地震に耐えられるかどうかは、簡単な判定基準が公開されていますので、それを使えば耐えられるか耐えられないかの予想はつきます。
 災害対策は、一気に全てきちんと準備できているのが理想ですが、毎日少しずつ行うことで気がついたら準備ができているという感じでも全然問題ありませんし、そちらのほうが心理的負担は少ないかもしれません。


 例えば、そのあたりの棚に直接置いてあったものを、かごに詰めて棚に貼った耐震ジェルの上に置く。これだけでも確実にその場所の安全度は上昇します。
 タンスの固定や倒れる方向の修正、寝室の安全確保など、ちょっとした作業で効果のある方法をとっておくと、あなたの命を守れる確率は簡単に上昇するのです。災害対策というと、どうしても災害や避難の知識に偏ってしまいがちですが、知るだけでなく行動することが、災害対策では非常に重要なことなのです。
 何か行動を起こすことは、0から1への変化です。0には何をかけても0ですが、1に整数をかけるとその分だけ数字は大きくなり、あなたの安全度は上昇していきます。
 一度にたくさんのことをするのは難しくても、毎日一つだけ危険度を下げる何らかの行動をすることで、あなたが安全に災害をやり過ごせる可能性はあがります。
 昨今の災害を考えると、いつあなたが被災者になっても不思議ではありませんから、ちょっとずつでいいので災害対策を始めてほしいと思います。

内水氾濫に気をつけて

 水害が起きる「氾濫」には、堤防等の治水施設が壊れることによって起きる「外水氾濫」と排水能力が追いつかなくなって水が溜まっていく「内水氾濫」があります。
外水氾濫は水が一気に押し寄せて起きる水害で、多くの人がイメージする「水害」はこちらだと思います。
 ただ、いくら堤防を強化しても起こってしまう水害があります。それが「内水氾濫」と言われるもので、こちらは排水能力を超えた水が流れ込むことによって排水路から水があふれ出して周囲が水没するものです。

数分間で大量の雨が降ったため、溢れてしまった側溝。降り続けると水没する。


 外水氾濫は河川や池沼などがなければ心配する必要はないものですが、内水氾濫は周囲と比して低地にいるのであれば起こりえる水害であることに留意してください。
 また、内水氾濫は静かに起こるため、気付いたときには周囲が水没しているということがよくあります。
 平時にあなたがいる場所の高さについて確認しておき、もし低地にいるようであれば、大雨時には周囲により注意を払うようにしてください。

 そろそろまた雨の季節がやってきます。
 雨の時期に入る前に、側溝や水路、雨樋といった排水に関わる部分の点検や掃除、そして海抜高度の確認をしておいてくださいね。