社会的弱者こそ自己防衛する

 小はアレルギーから大は人工呼吸器まで、日常生活を送る上において何らかの支援や配慮を必要とする人がいます。
 普段の生活ではそこまでの苦労はされていないと思いますが、災害時にはこういった人達に対する支援や配慮は無くなってしまいます。
 ある程度復旧して人心が落ち着いてくればそうでもないのですが、被災直後の混乱の中では社会的弱者に対する支援や配慮は忘れ去られてしまうことが多々あり、社会的弱者の人は精神的にも物理的にも悲惨な状態になることもあります。
 そういう人達は、あらかじめ自分で対応策を準備しておかないと救助や支援の流れから取り残されてしまうことになります。
 大規模災害における支援活動は、大多数の人を救済することが主となりますので、さまざまな理由で少数派になっている人達に対する支援はどうしても遅れてしまいます。
 一例を挙げてみると、食物アレルギーを持っている人は、普段の生活ではアレルゲンを排除した食生活をしていると思いますが、被災後に何も用意が無ければ、アレルゲンが入っているかもしれない食事を食べるか食べないかの判断の要求されることになってしまいます。
 避難所で支給される弁当にはアレルゲン表示がある場合もありますが、食べない、食べられないという選択をした場合には代わりに食べられるものが存在しないのです。
 そういったとき、自分でアレルゲン除去してある食事を持っていれば、ひもじい思いもいちかばちかの悲惨な選択もしなくて済みます。
 普段の生活で透析が必要な人はどうでしょうか。自分だけでは対応が難しいかもしれませんが、いざというときにかかりつけの代わりに透析してくれる病院をあらかじめ紹介しておいてもらえば、被災後にその病院へ移動して継続して透析を受けることができるでしょう。
 社会的弱者は、災害からどのように身を守るのかということについては、そうでない人よりも真剣に対応策を考え、準備しておかなければなりません。
 災害時には人間関係が先鋭化します。その時に生け贄にされないためにも、自分で身を守るための対策を普段から考えておきたいですね。

災害後のトイレ、使えるか使えないか。

 唐突ですが、あなたのいる場所のトイレはどういった汚物処理をしているかご存じですか。
 大きく分けると、くみ取り型、浄化槽型、そして下水型にわかれると思いますが、それぞれの処理方法によって災害後に使う方法が異なるので注意が必要です。

 いちばんシンプルなのはくみ取り型で、この場合には例えばくみ取り槽に水や汚泥が溜まってしまうような水害でも、くみ取り槽に溜まった汚泥や水を吸い出せばすぐに使えるようになります。
 また、他の災害でも水があればくみ取り槽へ流すことが可能なので、トイレに関して受けるダメージは少なくて済みます。
 もちろん最終的な点検は必要になりますが、とりあえず水さえあれば簡易トイレなどを使わなくてもトイレを使うことが可能です。

 次は浄化槽型。水害で汚泥などに浸かった場合には浄化槽の整備と点検が必要になりますので、それが終わるまでは使うことはできないと思ってください。
 浄化槽自体が水に浸からなければ、曝気槽のポンプに通電することで浄化槽の機能事態は維持することが可能ですので、流す水とポンプを動かす電源があればトイレを使うことは可能です。

 最後に下水型ですが、これは基本どんな災害でも使えなくなっていると思ってください。
 下水管は非常に詰まりやすいので、水で汚物を流し込むと途中で詰まってしまいます。そうすると大規模な修繕が必要となってしまうので、下水管の点検が終わるまでは全面的に使用禁止になります。
 また、マンホールトイレなどもありはしますが、下水処理の構造上あまり汚物を落としすぎると詰まってしまうので、マンホールトイレを設置する場合には設置しても良い場所をあらかじめ選定しておく必要があることを覚えておいてください。
 被災後、点検が終わるまでは携帯トイレや簡易トイレを使うようにしましょう。

 おまけですが、集合住宅のトイレでは、2階以上のトイレは使用不可です。もしも上層階でトイレを使った場合、途中の汚水管が破損していると破損した場所から汚物が噴き出して大惨事が起こります。
 そういった事態になった場合、汚物が噴き出した場所の住人から汚物を送り込んだ住人が訴えられたりすることがありますので、集合住宅の場合は処理方法を問わず、点検完了まではトイレは使用禁止です。
 トイレに関するさまざまな情報はありますが、まずは自分の住んでいる場所や普段でいるしている場所の環境を確認し、災害後に自分が汚物で二次被害を出さないように充分気をつけてくださいね。

誰でもできる感染症対策

 新型コロナウイルス感染が広がっているようで、連日マスコミが騒いでいますが、新型コロナウイルスに限らず、感染症対策の基本は手洗いになります。
 石けんと流水を使って手をしっかり洗うこと。これが感染症対策の基本となります。
 あとはマスクの着用。これは周囲にウイルスをまき散らさないために必要なものです。また、気休めですが防除できるかもしれません。
 この二つがしっかりとされるとどうなるのかを表した図があります。
 国立感染症研究所のインフルエンザ流行レベルマップの2018~2019年と2019~2020年(現時点では「今シーズンの動き」にあります)の流行状況を比較してみてください。
 新型コロナウイルス対策が叫ばれ始めてから、インフルエンザの感染者数が明らかに減っており、収束も早くなっていました。
 このことを考えると、手洗いをしっかりとすること、そしてマスク着用が有効であることがわかると思います。感染対策としては、できればフェイスシールドで顔を覆えば、飛んでくるウイルスの顔への付着を防ぐことができますのでより安全になるのではないかと思います。
 また、飲み会の席で酒が入ればどうしても大声で騒いでしまうことになりますので、飲み会では無く食事会にし、食べている間は静かに食べて、それから、マスクをつけてゆっくりおしゃべりをするようなスタイルだと安心できると思います。
 これからまたインフルエンザや感染性胃腸炎などが流行る季節になります。
 新型コロナウイルス対策だけで無く、冬に流行するさまざまなウイルス対策として、石けんと流水での手洗い、マスク着用、できればフェイスシールドの着用をして感染しないようにしたいですね。

参考:インフルエンザ流行レベルマップ(国立感染症研究所のウェブページへ移動します)

支援物資の物流について考える

 災害後の復旧が速やかに進むかどうかは被災者の安心をいかに獲得するかにかかっています。
 必要なものがきちんと手に入る、衛生環境が確保できるといった条件が満たせれば、とりあえずの混乱は防ぐことが可能です。
 そのためには、支援物資を輸送するための物流網を確保する必要があります。
 大量に支援物資を運び込み仕分けをして被災地へ輸送する物資集積拠点、そして被災地内で小分けし、各避難所へ配送する物資集積基地、最後は避難所にできるデポ。
 これらが上手につながることが必要となってきますが、こういった物流網を行政が設計・管理することは、人的にもノウハウ的にもほぼ無理です。
 立て続けの災害のおかげで、物資集積拠点や物資集積基地の指定や運用は運送業者さんに任せた方が効率的だと言うことが認識されてきたようですが、物資集積基地からもよりのデポ、そしてデポから被災地の住民に物資が渡る部分が現在うまくつながっていないところが多いです。
 運送屋さんが避難所まで持ってきた物資をいかに早く確実に必要とされる人の手に届けられるのかというところは、被災前にどれくらい物流について真剣に考えてきたかに比例しますから、避難所運営委員会がそこまで考えて運営設計をしているかどうかが鍵になります。
 避難所は物資と情報の両方が集積する場所ですから、それらを避難所への避難者だけではなく、被災地域の人達に物資や情報を届ける必要があります。
 災害対策のラストワンマイルと呼ばれる避難所から地域の被災者への物資や情報の伝達方法を、一度検討してみて欲しいと思います。

ハザードマップの検証をしていますか

DIGの風景
地域の強み弱みを知って考えよう

 各自治体ではハザードマップを作成して自治体内の世帯に配布していますが、あなたは見たことがありますか。
 ハザードマップは特定の条件下での被災状況を図化したもので、自治体や地域の避難計画作成の基礎となる資料の一つです。
 これには地震や浸水害、土砂崩れの危険性が色分けで表示されていて、とりあえずの危険な場所がわかるようになっており、あなたが避難計画を作るときには必ずこれを見ているはずです。
 ハザードマップの検証では、自宅からの避難だけでは不十分です。勤務先や通学先、途中の経路、よく買い物や遊びに行くところ、そして自分が避難すべき避難所の災害対応状況といったものも確認しておかなければいけません。
 避難所は災害から身を守るために避難するところなので、避難すべき避難所がどのような災害に対応しているのかを正確に把握しておかなければ、避難した避難所で被災したと言うことになりまねません。
 想定される災害のハザードマップに、地域の災害伝承の情報を追加すると、より安全な避難を行うことができるようになりますので、分かる範囲で確認して追加しておきましょう。
 避難経路は状況や環境の変化によって常に見直しが必要ですし、地域としての防災マップ作りも必要となるでしょう。
 今住んでいる場所だけでなく、自分が行きそうな場所の経路と安全性を確認しておいて、いざというときに備えたいですね。

パーソナルカードを作っていますか

 自分の情報や家族を始めとする大切な連絡先、家族の写真などをまとめて一枚のカードにしたものをパーソナルカードと言いますが、あなたはパーソナルカードを持っていますか。
 被災して動揺すると、知っているはずのことが思い出せなかったりすることがあります。そのとき、このパーソナルカードを確認することで非常時の連絡先や家族の集合場所、かかりつけ医などの情報を確認することができます。
 また、子どもやお年寄りに持たせておけば、非常時にそれを確認することで安否確認などの連絡を取ったり身元の確認をすることができます。
 こういった書式で作る、という指定されたものはありませんが、自分の名前、住所、血液型、家族構成、家族の連絡先、災害時の集合場所、持病や常備薬、かかりつけ医やかかりつけ薬局などの情報、そして家族写真を一緒にしておくと非常に役立ちます。
 とはいえ、このパーソナルカードは個人情報の塊ですから、いざというとき以外人に見られたくない方もおられると思います。
 そのため、作ったものをラミネートパウチしておいて、使うときにははさみで切って中を確認するといった方法をとることもあります。
 大切なことは、非常時に自分が誰で家族が誰で、どこへ連絡すればいいのかなどがわかることですから、作ったものを普段持ち歩くカバンや財布にいれて、いざというときに使えるようにしておきたいですね。

乾パンと氷砂糖

 最近でこそさまざまな防災食が登場していますが、少し前までの防災食の定番は乾パンが多かったです。
 長期保存が利いて湿気ない、そして単価が安くお腹がふくれるということで、サイズや量のあれこれはあっても、定番商品として君臨していました。
 長期保存の乾パンはだいたい缶詰になっているのですが、その中に乾パンと一緒に氷砂糖が入っていることをご存じですか。
 乾パンは名前の通り乾燥したパンなので、そのまま食べると唾液をみんな給水してしまいます。被災時には手持ちの水も無いことが多いので、乾パンだけだとのどが渇いて困ることになります
 氷砂糖はショ糖という糖の塊で、くどくない甘さが持ち味です。これを舐めることで唾液を呼び出すことができますから、乾パンを安心して食べることができます。
他にも乾パンの単調な味に変化をつけたり、甘いもので気分を落ち着けたり、成分はショ糖という糖分なので疲労回復もしてくれます。
何よりも、湿気に気をつければ半永久的に食べることができる究極の保存食でもあります。
 乾パンは固くて食べられないという子どもさんもいるようですが、乾パンも砕けばクラッカーのようになりますから食べることができると思います。また、氷砂糖なら舐めることができますから、非常用持ち出し袋に一袋、乾パンと氷砂糖を入れて置いてもいいかもしれませんね。

【活動報告】第3回高津小学校防災クラブを開催しました

 去る11月4日、益田市立高津小学校様で防災クラブの第3回目を開催しました。
 今回は「止血法と搬送法その2」と「校内安全点検」、それに「ビニール袋工作」の3つから子ども達に選んでもらう形にしたのですが、見事に3つにわかれてしまい、結局代表者がじゃんけんして「止血法と搬送法その2」をやることになりました。
 前回は直接圧迫止血法と前屈搬送法をやりましたが、今回は間接圧迫止血法といすを使った搬送法、そして実際にけが人の手当から搬送までを演習してみてもらいました。
間接圧迫止血法は止血帯を使った止血方法ですが、実際に子ども達がするの危険なので講師の腕に止血帯を巻き付け、止血帯を締める前と締めた後の手の温度を確認してもらい、締めた後手が冷えていくことを確認してもらって血流が止まっていることを知ってもらいました。

階段での搬送では、担架を水平に保つことはかなり難しい。二人では水平に保てないことを実際にやってみて理解してもらう。実際には運ぶ人の他に担架の状態を確認する人や進路を確認する人など、それなりに人手が必要。

 また、担架の搬送法ということで、階段での搬送を実際に担架を使ってやってみてもらい、二人では階段で水平が維持できなくなること、そして運び手の数が多いほど危険が少なくなることを実際に体験してもらいました。その後いすによる搬送をやってみて、担架での搬送がどれくらいやりやすいのかということを体験していました。
 最後は担当の先生をけが人役に見立てて圧迫止血から担架搬送までを実際にやってみてもらいました。

練習でやってみるのと、実際に倒れている人にやってみる演習ではかなり感じが違っていた様子。特に大人をどうやって運ぶのかについては一度しっかり考えてもらった方がいいかもしれない。

 先生の腕と足を怪我しているという想定で、実際に怪我している部分を圧迫止血し、血が止まったら包帯を巻いて固定してもらったのですが、なかなか思ったようにできずに苦戦していました。
 搬送では、床から担架へ先生を移動させるのにいろいろと試行錯誤していましたが、なんとか無事に載せて搬送することができました。
 実際にやってみると、なかなか思ったようにはできないということと、声をかけあわないと危険だということを理解してもらえたと思います。
 子ども達はノリノリでやってくれているのですが、そのノリを生かせないことにもどかしさを感じ、講師としてはまだまだ未熟だなと反省しきりでした。
 ともあれ、今回防災クラブでつきあってくださった先生と子ども達に感謝します。

風と汗と防寒と

 寒い日でも身体をしっかりと動かすと暑くなって服を脱いで温度調整したりするものです。汗をしっかりかいた状態で上着を脱ぐと涼しくて一息つくことができますが、そのままの状態で身体を冷やすと必要以上に冷えてしまって慌てて服を着込むことになったりします。
 もしも汗をかいてしまったら、服を脱ぐのと一緒に汗をタオルなどで拭き取るようにしてください。汗を拭くことで身体の乾燥が保たれ、必要以上に熱が逃げることを防ぐことができます。
 また、なるべく風に当たるのを避けることも大切です。
 最悪なのは汗をかいた状態で冷たい風に当たってしまうことで、へたをすると低体温症まっしぐらになってしまいます。
 冬の風は冷たく乾燥していて熱をいくらでも持って逃げてしまいますから、夏以上に風対策が必要となることに注意してください。
 上手に調整しようと思ったら、厚手の服を着るのでは無く、薄い服を重ねて着ることです。体温調整もしやすいですし、服の間に空気の層ができますから厚手の服を着るよりも暖かくなります。
 一番外側に着るものが風を通さない素材だと、冬でも非常に快適に活動をすることができます。
 一番良いのは、肌着と一番外側の服を発汗製素材にしておくことです。そうすることで、肌に当たる部分が濡れるのを防ぎ、ある程度までは水分を外へ放出できます。
 低体温症になると、自分一人ではまず対策は不可能です。
 そうならないために、自分に最適な重ね着の方法を作っておくといいと思います。

絆創膏と応急処置

 先日とある小学校の防災クラブで応急処置の練習をさせていただきました。
 怪我と手当の方法を考えてきてもらったのですが、その中で「擦り傷は洗ってから絆創膏を貼る。持っていなければ人からもらう」というのがありました。
 その子自身は絆創膏は持っていないとのことで、ではどれくらいの子が絆創膏を持っているのかを聞いてみると、参加者14人中、持っていたのは1人でした。
 ハンカチで止血処置をするということでハンカチを持参してもらうようにお願いしておいたのですが、うまく伝わっていなかったようでハンカチを持っていない子が数人いました。
 少し気になったのが、この子達は怪我をしたときにどのように手当をする気なのだろうかと言うことです。
 自分が子どもの頃には、絆創膏を普段から持って歩いている子が結構いたように記憶しています。当然それだけ擦り傷や切り傷などの生傷が絶えない状況だったのでしょうが、今の子はあまり生傷に縁がないのかもしれないなと感じます。
 怪我をしなければ怪我の手当もする必要はないのですが、怪我をしたときにいざ手当をしようと思っても、手当をするための部材がなければ手当が難しいように感じます。
 今回の練習では、ガーゼを用意して傷口の圧迫止血を行い、その後に包帯を巻いて応急処置をするということを行いました。
 ガーゼや包帯は普段の生活ではあまり使うことはないと見えて最初はかなり手こずっていましたが、慣れてくるとくるくると包帯を巻き、上手に留めるところまでできていました。

初めて巻いた包帯。初めてにしては上出来な巻き方。

 いきなりでは無理だと思いますが、練習していれば本番でもきちんとできるということだなと思っています。
 普段の生活ではさまざまな形で守られているので、応急処置についてもあまり意識することはないかもしれませんが、いざというときには誰かに頼ることはできません。
 自分が主役となって自分や周囲の人を助けていかないといけないことを考えると、クラブだけでなく学校の授業の一つとして取り組んでみてもいいのかもしれないなと思います。