避難は日のあるうちにする

 予測できないような突然の大雨というのもありますが、最近は結構高精度で振り出す前に大雨の予報が出ています。
 特に夜間に大雨が予測されるような場合には、夕方までの日のあるうちのところで大雨に関する情報が出されることが多いです。
 これは早めの避難のために行われるもので、低地や水害の発生が予測されるような場所に住んでいる人は、自分のいる場所でこういった情報があったら、早めに避難を開始することを検討してください。
 夜間の避難は非常に危険です。特に大雨の場合には視界が全く効きませんので、徒歩の避難もかなり難しいです。
 指定避難所の開設は自治体が行いますので、ひょっとすると開設がされていないかもしれませんが、そういったときには高台にあるホテルや旅館といった宿泊施設や知り合いの家などを確保して避難するといいでしょう。
 また、どうにもならない場合には、車中泊ということで高台の駐車場に移動し、車で一晩過ごすという方法もあります。健康に不安のある方にはお勧めできませんが、危険を回避するという点では一つの選択肢です。
 避難方法や避難先はいろいろとありますが、可能な限り日のある明るいうちに避難を完了しておくことが肝心です。
 夜間はまったく見えない、移動はできないという前提で、自分の行動計画を考えるようにしたいですね。

面と点

 大雨に関する警報があちこちで出ていますが、あなたのお住まいの地域は大丈夫ですか。
 あなたがお住いの場所の危険をハザードマップなどで確認し、何に対して備えておけばいいかについてしっかりと確認しておくことをお勧めします。
 ところで、もしもお住いの場所が浸水するような地域の場合、避難する基準は自分で準備しているでしょうか。
 というのも、避難情報の「高齢者等避難」や「避難指示」はお住いの地域の自治体が発表するもので、あくまでも地域という面で考えられています。
 ただ、自分が住んでいる場所という点がどうかは考慮されていませんので、避難情報が出る前に家が浸水しているといった事態は十分に考えられます。
 安全に避難するためには、普段から家の周りの雨や水の様子を確認しておいて、どれくらい雨が降るとどんな感じになるのかを知っておきましょう。
 そして、ちょっと危険だなと思ったら、自治体の避難情報を待つことなく避難を開始してください。
 ひょっとすると、自治体が開設する指定避難所はまだできていないかもしれませんが、その場合には自分が安全だと思える場所に退避しておいてください。
 例えば、ハザードで見る限り安全だと思えるような日帰り入浴施設や図書館といったような時間が過ごせるような場所に移動して様子を見てもいいでしょう。
 自分の安全を自分で確保することが、災害に対する備えとしては非常に重要になります。
 何もなければそれでよし。
 万が一に備えて、早め早めの行動をとるようにしてくださいね。

あふれた水には触らない

 あちこちで大雨が続きさまざまな被害が出ているようですが、あなたのお住いの場所はいかがですか。
 洪水時には、基本は早めの避難ですが、外に出ることができないくらいの激しい雨が降っているケースも増えてきていますから、そんなときには二階以上に避難する垂直避難も避難時の検討に加えておいたほうがいいと思います。
 よく、あふれた水の中を避難する人たちの映像が出ていますが、このあふれている水は普通の川の水とはかなり異なることを知っておいてほしいと思います。
 一番の違いは、汚水が混じっているということ。あちこちが浸かると、浄化槽や下水管などの汚物も一緒にあふれてきます。こういった汚物が混じった水は、雑菌が繁殖しやすく、破傷風菌などもかなり増えていますので、万が一怪我をしたり、傷口が浸かるようなことがあればそこから化膿することや死に至る場合があります。
 よく防災講演会などでは水の中を歩くときには杖を使ってなどと説明されますが、どうしても避難が必要な場合を除いては、水があふれてきたら水の中は歩かないという風にしたほうが安全です。
 サンダル履きではなく、靴を履けといった話がありますが、それ以前に汚れた水の中は歩かないこと。
 それを前提にしてどのような避難ができるのかを検討してほしいと思います。

危険なくらげを知っておこう

 お盆が過ぎると、海の雰囲気が一気に変わって泳ぐのには悩むような波が出るようになります。また、クラゲが岸に寄ってくることもあって、海水浴場は閉鎖される場合が多いと思います。
 すでにそんな時期に入っていて今更感があるのですが、普段見かける危険なクラゲについて、今回はちょっとだけ触れてみたいと思います。
 泳ぐときに「クラゲが刺した」といわれることがあります。
 普段見慣れているミズクラゲも刺胞は持っていますので、刺されることがあり、肌の弱い人など腫れてしまうことがあるようです。
 はっきりとわかるような痛さの場合には、日本海側の場合だとアカクラゲやアンドンクラゲが該当する場合が多いようです。
 今日はアカクラゲとアンドンクラゲについて、ちょっとだけ知っておいてほしいと思います。なお、生きているクラゲは島根海洋館アクアスに展示してあるものを撮影しています。

1.アカクラゲ

 傘の部分に赤い線が入っていることからアカクラゲと呼ばれています。
 刺されると非常に痛みを感じ、みみずばれができます。
 乾燥したものがよく石に張り付いていたりしますが、乾いていても毒の有効成分は生きているので、できるだけ触らないようにしてください。

2.アンドンクラゲ

 傘の部分が四角形で行燈に似ていることからアンドンクラゲと呼ばれています。
 海水浴シーズンの後半頃から海水浴場に出現することがあります。
 複数個体でまとまっていることがあるので、それらに取り囲まれると体中がみみずばれになってしまうので、見つけたらすぐに陸に上がるようにしてください。

 不幸なことに、クラゲにもしも刺されたら、何をおいてもまず陸に上がって様子をみてください。
 クラゲの毒も蜂などと同じようにアナフィラキシーショックを引き起こすことがありますので、陸に上がって少なくとも15分から30分程度は様子をみてください。
 もしもクラゲの触手や刺胞がくっついているなら、様子を見ながらはしやピンセットなどでそっと取り除いてください。絶対に素手で触ってはいけません。
 また、痛痒い状態になると思いますが、クラゲの毒は40度以上の温度になると患部を40度以上にできれば痛痒い状態を緩和することが可能です。
 酢や水をかけるという記事を見ることもありますが、クラゲの種類によってはさらなる痛みを招く場合がありますので、何にやられたのかわからないのであれば、やらないほうが無難です。
 いずれにしても、様子を見て悪化したり、本人の様子がおかしいようなら、病院を受診するようにして下さい。
 前回虻やブユに対するところでも書きましたが、できるだけ素肌を露出しないことが刺されないことにつながりますので、ラッシュガードなどを着ておくのは有効だと思います。
 また、砂浜に不思議な色をした餃子のようなものが落ちていることがありますが、それはカツオノエボシの浮袋の場合があります。
 カツオノエボシの強力な毒はそんな状態になっても効果はそのままですので、絶対に触らないでください。

危険がわかるかどうか

動物園で見るとこんな感じだけど、実際に出会うとかなり怖く感じるのがクマという生き物。

 ラジオを聞いていたら、恐怖体験として「山でこぐまに出会ったので必死に逃げた」という話をしていました。
 パーソナリティーの方は「子供でもくまですからね。小さいけど」といった感じだったのですが、それを聞いていて、クマの生息域に住んでいる人やそういうところを登山する人ならこの話の本当の怖さがわかるのになと感じ、わからないというのはこういうことなのかと妙に納得しました。
 「子グマがいる」というのは、別に子グマが脅威なわけではありません。いえ、子グマでもよほど小さな個体でない限りは人間よりも力が強くて十分脅威なのですが、それ以上に怖いのが、その子グマのすぐ近くに母グマがいて、状況によっては問答無用で襲われるということなのです。
 たぶん、山に登る人も同じような印象を持つのではないかと思いますが、子グマは無警戒にいきなり現れます。そして、理不尽なのですが母グマは人を見ると子グマに対する脅威と見なしてかなり警戒していて、ちょっとでも母グマが子グマが危険だと感じたら、即座に攻撃をしかけてきます。
 話をしていた人はそのことを前提にしていたと思うのですが、子グマには気を荒くしている母グマがついているということを知らなければ、単に「かわいい小さなクマがどうして怖いんだろう?」という印象になってしまうのでしょう。特に動物園ののんびりしたクマしか知らない人もいるわけで、そうなると怖いということが理解できないのかもしれません。
 人が危険を感じるためにはそのことが危険であるということを知っておかないといけないのだなと、今回の話でちょっと考えさせられました。
 危険を知ること、できれば危険な目にあってみること。
 人が的確な判断をするためには、そういった経験が重要なのかもしれません。

虻とブユ

 水遊びの楽しい季節ですが、水辺には大体の場合刺す虫が待っているので気を付けておいてください。
 特に上流部ではそれが顕著で、虻とブユはほぼ確実に出てくると思われますので、できるだけ肌を露出させないようにしたほうが無難です。
 虻もブユも血を吸うという点ではその辺の蚊と変わりませんが、これらが刺すとかゆい上にものすごく腫れます。
 そして腫れたら何をしてもなかなか治りません。
 薬もあまり効かないので、非常にやっかいな状態が続きます。
 彼らは肌の露出部を狙ってきますので、できるだけ肌を露出させない格好をしておいてください。
 実は先日の水難事故防止講習会&水遊びでも、当研究所のスタッフが1名、虻とブユの両方にやられてしまいました。
 写真を出せないような場所がやられてしまっているのですが、強力なステロイド系の塗り薬を使っても腫れは引かず、かゆみも収まらずないことから、なかなかてこずっているようです。
 虫よけはしっかりと吹いていたのですが、水遊びしたら流れてしまったようで、虫よけの効果にも限界があるようですから、肌の露出はなるべく避けることくらいしか手が思いつきません。
 特に川の上流部での水遊びではいかにして地肌を隠すかを意識するようにしてくださいね。

避難所と新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症の流行が避難所の環境改善をしているのはかなりの皮肉。

 スフィア基準というのがあることをご存じでしょうか。
 スフィア基準とは、スフィアプロジェクトによって国際的な人道支援の計画や管理、実施に携わる支援活動従事者向けに作られたスフィアハンドブックに記載されている、避難所や難民キャンプなどでの人道的と考えられる最低の基準のことです。
 実際にはこのとおりになってはいませんが、できるだけこの基準に近づくように、世界中のNGOや難民キャンプを運営する人たちが日々努力しています。
 さて、このスフィア基準によると、大人一人当たりの占用スペースは最低3.5平方メートル必要だとされています。
 この面積からは例えば調理場所やお風呂、トイレや洗濯場所といったものは含みませんのが、これらの設備を含んで計算する場合には、4.5~5.5平方メートルは必要だとされています。
 内閣府の「避難者に係る対策の参考資料」によると、日本の避難所は、一人当たり1.57~2.93平方メートル、多くは畳一畳分の2平方メートル前後が確保できればいい設計です。
 スフィア基準で考えると、日本の避難所は残念ながら「非人道的」な避難所となってしまいます。過去では阪神淡路大震災が一番ひどくて、一人あたり1~1.7平方メートルしかないときもあったとのことで、これではまともに体を横にして眠ることすらできなかったことがわかります。
 ただ、最近は新型コロナウイルス感染症の流行で、人同士の距離を最低2mは確保しなくてはならなくなったため、一人当たりの占用面積が5~7.7平方メートルに拡大し、スフィア基準を満たすようになったのはかなりの皮肉な感じです。
 一つ問題なのは避難所において一人当たりの占用面積が増えるということは収容能力が下がるということで、実際に避難所に入れなかった事例もあるようです。
 このことからはっきりといえるのは、自分が避難すべき対象なのかという把握と、入れる避難所を探すことになるかもしれないことを考えると、複数の避難先の設定と、早めの避難開始をすることが必要になるということです。
 以前は避難対象地域は問答無用で避難と言われていましたが、現在は基本は自宅待機で自宅が危険な人が避難所へ避難するというものに変わっています。
 平時にしっかりと自分の環境を確認しておいて、いざというときに途方にくれなくても済むようにしておきたいですね。

スポーツドリンクと経口補水液

 連日暑い日が続いていますが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 気温が上がると、体は体温を維持するために汗をかくようにできています。
 この汗には、さまざまなミネラル分も一緒に流れて出てしまうので、水だけだとミネラル不足になってしまい、いくら水を飲んでものどの渇きが収まらないという状態になってしまいます。
 そのため、筆者が学生の頃には塩入麦茶が運動部の定番飲料となっていました。
 最近ではそういった手間がなくても、スポーツドリンクや経口補水液がありますから、のどが渇く前にそれらをちょっとずつ飲むことで水分とミネラルの補給が行えるようになりました。
 ただ、摂取方法を間違えると効果半減またはまったく効果がなくなってしまうことがあるので、ちょっとだけ注意が必要です。
 よくある話では、「スポーツドリンクは甘いので水で割る」というもの。
 スポーツドリンクは運動後に体が失った水分やミネラル分、カロリー分を効率的に補うように作られています。
 つまり、体に一番いい状態は「そのまま飲むこと」です。
 水で割ることで体への浸透圧が変わり、水分はともかく、ミネラル分やカロリー分などを効果的に補えなくなってしまうのです。
 逆に、動かない、汗をかかない人がスポーツドリンクを常飲すると太ってしまうことが多いのは、水分やカロリーが効率よく取られているせいですから、飲むのを控えたほうがいいでしょう。
 スポーツドリンクが甘く感じるのであれば、スポーツドリンクではなく経口補水液を飲むようにしてください。
 ただ、この話をするとよく言われるのが「経口補水液はまずい」というもの。
 経口補水液はちょっと前までは医薬品扱いになるくらい体への吸収がしやすく作られています。
 経口補水液がまずいということは、体がそれを必要としていないということで、少しずつ飲める範囲で飲めば大丈夫ということです。
 体の中のバランスが崩れているときには、この経口補水液が非常においしく感じるので、そうでないということは体が正常だというふうに考えてください。
 水だけだと体に負担がかかりますし、スポーツドリンクや経口補水液は少し飲みにくいという方は、古来から運動部に伝わるレモンのはちみつ漬けや塩入麦茶を試してみるといいと思います。
 どんなものを飲むのであれ、水分と同時にミネラル分を補給できるようにすることで、体のトラブルを減らすことができます。
状況に応じて、それぞれ使い分けるようにしたいですね。

体験と経験

 当研究所では「災害対策」「自然体験」「有害生物対策」の3本柱で事業を行っていますが、いまいちこの関係性がわからないといわれることがあります。
 これらの共通点は「実際にやってみないと効果が出てこない」というもので、成功するかしないかはとりあえず置いておいて、実際に動いてやってみることで状況が動いていくというものです。
 また、いずれも自然と人間との関係から発生してくる問題でもあります。
 災害とは、自然現象のうち人の生活に悪影響を与えるものですから、まずは身の回りの自然がどうなっていて何に対策をしなければならないのかを知る必要があります。
 その周囲の自然を知ると、災害対策や有害生物対策をどのようにしていけばいいかが見えてきます。
 自然体験は、今人と距離の空いている自然について、いいところも悪いところも知ることができます。災害対策と有害生物対策の入り口にあるのが自然体験だと考えてもいいと思います。
 当研究所が特にえり好みしているわけではないのですが、自主開催するイベントのほとんどは子供向けです。
 これは子供のうちに自然を知り、見方を覚えて、そのうえで災害対策や有害生物対策の方法を考えられるようになってほしいと考えているからです。
 幸い、参加してくれる子供たちは楽しんでくれているようで、毎回笑顔で帰ってくれます。おうちに帰ってから、自分が体験したさまざまな内容を家の人に話し、そして家の人が子供にいわれて災害対策を始めてくれるというメリットもあります。
 また、遊びながら自然や災害対策を知り、危ない場所や危ない行為を体でも覚えてもらうことで、いつかその時に出くわしたとき、考える前に体が動いてほしいとも思っています。
 体験や経験、本当は親や祖父母、近所の人や先輩などから教わったほうがよりリアルになるのですが、残念ながら、現在はそういう人たちも体験や経験が不足しています。
 そのため、当研究所を含めたさまざまなNPOや団体が体験や経験の積める活動を提供して、少しでも次世代にしっかりと伝えてほしいと頑張っているのではないかと思っています。
 災害対策というとどうしても座学のイメージがありますが、体を動かしたり、実際に体験しながら考えることで、座学よりもたくさんのものを身に着けることができます。
子供たちに限りません。親でもその上の世代でも、体験や経験したことは必ず生きてきます。
 いろいろな場所でさまざまな体験や経験をできる場が増えてきていますので、億劫がらずに体験や経験を積んでほしいなと思っています。

【活動報告】水難事故防止講習会&水遊びを開催しました

 去る8月7日、高津川支流の匹見川上流部で、今年度の「水難事故防止講習会&水遊び」を開催しました。
 今年度は大規模周知をかける直前で新型コロナウイルス感染症の流行が始まってしまったため、主に事前周知できた当研究所研究員達の参加となってしまいましたが、水への浮き方や救助の待ち方の確認をし、川の危険な場所について目視や実際にその場所に行って水の深さや川の流れを確認していました。

流されたら「浮いて待つ」ことが大事。

 ただ、講習に入る前に投棄された釣り針を研究員が発見して確保。こういった投棄された釣り針も危険だねという話もすることができました。

釣り針の不法投棄は危険な事故につながる。

 そのあとは恒例の水遊び。川にいるゴリを網で取ったり川流れ、沢登り、淵への飛び込みなどを思い切り楽しみ、暑い中ではありましたが、楽しい時間を過ごすことができました。

沢の中を歩いたり、流されたり。全身の感覚を研ぎ澄ませて登っていく。

 途中昼食休憩のときにゴリの入った虫かごを置いておいたら、盗まれるといったハプニングもあり、今回は事故防止だけでなく防犯対策についても考えることのできる会となりました。

毎年恒例の豚汁は今年も大好評。スイカの差し入れもいただき、川の水で冷やしたスイカも堪能しました。

 日程の都合上、本年度はこれで終了となりましたが、また来年、今度は一般の親子ふれあいも兼ねてにぎやかにできたらいいなと思っています。
 今回参加してくれた研究員と子供たちに感謝すると同時に、水の事故が少しでも減るといいなと思っています。