ポンチョと雨合羽

 非常用持ち出し袋に入れるものの中に雨具があるでしょうか。
 災害後の避難や避難生活でかなりいろいろとお世話になるかもしれないアイテムなので、できれば一つ用意しておくといいと思います。
 よく比較されるのが、ポンチョと雨合羽です。
 この二つ、表向きの機能は同じ雨避けとなっているので、どちらを準備すればいいのか迷うことも多いのではないでしょうか。
 結論から言うと、ポンチョの機能を持つ上着と雨合羽のズボンを組み合わせると最強になるということです。
 できるなら、両方準備しておくと非常に使い勝手がよくなります。
 ポンチョは、身体の上半身にすぽっと被る雨具です。そして雨合羽は上着とズボンに別れていて、全身を覆うことのできる雨具です。
 構造上、ポンチョは雨の中の移動では足下はびちょびちょになります。また、防寒着としても雨合羽に比べると開口部が大きいため、あまり役には立ちません。
 では、なぜ準備するのかというと、雨具以外の使い道がポンチョには非常に多いからです。例えば、授乳時の目隠しや簡易トイレでの用足しでの目隠し、簡易タープや簡易テントと、いろいろなことに使うことができます。また、徒歩での避難時に歩けなくなった乳幼児をおんぶするときにも、子どもと一緒に雨を凌げるのはポイントが高いと思います。
 選ぶポイントは、透けないことと丈の長さ。安いものだと百円均一ショップでも売っているのですが、多用途に使おうとすると透けるのはちょっと困りますので、透けないものを選ぶことが大切になります。また、その目的上、丈が長めの方が安心できると思います。特に女性や乳児のいるご家庭では、最低一着準備しておくと困らなくて済むと思います。
 雨合羽は、構造上雨をしっかりと弾いてくれます。また、雨を通さないということは風も通さないということなので、防寒着としても機能を果たしてくれます。
 また、粉じんが身体につくのを防いでもくれます。
 代わりに、着る以外の用途に使うことはかなり難しい構造ですので、できるだけ非常時の荷物を減らしたいという人は、ポンチョの方がいいかもしれません。
 災害対策としてアイテムを選ぶときの参考になれば幸いです。

情報提供とリスク

 自治会や自主防災組織による地区防災計画の策定でネックになるのが、個人の情報をどうやって提供してもらうのかということです。
 隣近所がわからないこのご時世、そこに誰が住んでいるのかは情報の提供を受けない限り、さっぱりわからないものです。
 もちろん自治会に入っていれば家族構成はある程度わかりますが、そこに住んでいる人がどのような状態で災害時にどのような支援がいるのかは、恐らく誰にもわかりません。
 普段の生活でも支援のいる要支援者については、福祉と防災と地域が連携して要支援者の支援計画を策定することになっていますが、普段の生活はできているが、災害時の避難などに支援のいる人についてはどこも拾うことができません。
 ただ、家族の状態を知られるのがあまり嬉しくない人もいらっしゃるので、放っておいてくれと情報提供を拒否されることもあると思います。
 また、個人情報を気にする人にとっては、情報は行政が持つべきで近所の人が知るべきではないと考えている人もいますので、文字通りの地区防災計画を策定しようとしても一筋縄ではいかないのが現状です。
 ただ、地区防災計画というのはその地区全てが該当者になるわけではなく、地区防災計画の策定に関わった人に対する計画だということに留意して下さい。
 つまり、賛同者だけで計画を策定しても法律上は何の問題もないということになります。
 逆に考えれば、地区防災計画は一人で作っても「自分の地区防災計画」として認められますので、他の人が策定した地区防災計画に従わなくてもいいということで、情報提供はしなくてもいいということになります。
 ただ、その場合には何か起きても全ての責任は自分に降りかかってくるということを肝に銘じておかなければなりません。
 家屋が倒壊してもまず助けてはもらえませんし、状況によっては安否確認すらしてもらえないでしょうが、その覚悟を持ったうえでご自身の情報を提供しないという選択肢を選んで欲しいと思います。
 どこも人手が足りない今、正確な情報を提供して非常時には助けて欲しいとお願いしている人と、自分の情報は出さないが非常時は助けて欲しいという人では、助ける優先度が変わります。
 そういったリスクがあることを考えた上で情報提供について考えて欲しいと思います。

地震とライフライン

 3月16日夜の地震の続報がいろいろと出ているようですが、現地の生活が早く復旧されることを願っています。
 さて、今回の地震でもそうなのですが、電気や断水、ガスの供給停止というのは大きな地震が起きるとほぼ100%どれかが発生しますが、その理由を知っていますか。
 揺れによる損壊ももちろんあるのですが、地震が起きた結果、地面が上下左右にズレることによって管が破損や切断状態になってしまうことによってトラブルが発生するのです。

地震の種類と地面の動き

 径の大きな配管であればあるほど影響も大きくなるので、水道本管や下水本管、ガス本管、製油所の送油管などが破断すると、断水や火災などが起きてこまったことになってしまいます。
 日本は地形的にどこにいても地震が発生する可能性がありますので、地震が起きないところへ移転するというわけにはいきません。
 水道や下水、ガス、送油などを止めるわけにもいかないので、実際のところは地震が起きてから復旧するまでの時間をどれくらい短くすることができるかということくらいしか対策ができません。
 個人としては、飲料水の確保や下水道の代わりになるようなトイレの準備、カセットガスとコンロの準備といったところでしょうか。
 最近では災害が頻発しているので、災害が発生したときの給水車の手配や仮設トイレの準備などは過去では予測できないくらい準備が早くなっています。
 とはいえ、大規模災害になると何が起きるかわかりません。
 自分の命を繋ぐ水やトイレくらいは、予め準備しておいた方がよさそうです。

おうちの中の避難経路図を作っておく

 3月16日の夜に宮城県や福島県を襲った震度6強の地震ですが、被害に遭われた方にはこころからお見舞い申し上げます。
 今回のように大きな地震では、揺れが収まったらいったん建物の外に出ることが安全確保に必要だとされています。
そのため、人の集まる施設や宿では避難経路図が作られていて、その経路図に示された経路は安全に避難ができるように他の場所よりも注意を払って管理がされています。
 では、あなたのおうちでは、地震後の屋外避難をするとき、どの経路を使って外に出れば安全を確保できるかを理解していますか。
 小さかろうが狭かろうが、避難経路がきちんと確保されているかどうかの確認は家族みんなでやっておくことをお勧めします。
 ものが多いおうちでは、どこもかしこもすっきりと片付けることは難しいと思います。でも、避難経路に指定した場所だけを意識して片付けるのであれば、そこまで難しくは無いと思います。
 また、避難経路を考えることで思わぬおうちの問題に出会うこともありますから、こういった点検は定期的にやって、避難経路にものが置かれていないかなどをしっかりと確認しておいてください。
 余談になりますが、耐震補強や耐震建築物と呼ばれている建物は、震度6強から震度7に耐える構造になっていますが、それは1回被害にあっただけの場合です。
 2回目以降は倒壊しないという保障がありませんので、耐震補強や耐震建築物であっても、いったんは建物の外に逃げて様子をみたほうが良さそうですよ。

災害報道のワナ

 大規模な災害が起きると、マスコミ各社はこぞって被災地へ押しかけ、ありとあらゆる情報を得ようとします。
 報道の自由という言葉があるとおり、活動自体は自由なのですが、ちょっとだけ考えて欲しいことがあります。
 それは、視聴者は提供される情報を選べないということ。
 マスコミの特性として、よりセンセーショナルな報道をしようとする傾向があります。被害の大きい現場とそうでない現場があったとしたら、被害の大きな現場を報道したがるのです。
 その結果、被害の大きな報道されたところばかりに支援が集まり、他の場所は置き去りにされてしまうという事態が発生します。
 例えば、2018年の西日本豪雨では報道の繰り返された岡山県倉敷市真備町と広島県呉市天応地区には大量のボランティアが集まりましたが、それ以外の被災地域ではボランティア不足という深刻な問題が発生しました。
 報道の仕方だけではないと思いますが、マスコミの人には気をつけてもらいたいなと思う部分です。
 センセーショナルな絵は視聴率という数字を稼ぐ元になります。
 ですが、災害報道に関しては視聴率を追うのを止めて、現地の状況を公平に、冷静に息長く伝えていって欲しいなと思います。

【活動報告】第3回外遊びごはんの会を開催しました

 去る2022年3月13日、島根県立万葉公園で第3回目の外遊びごはんの会を開催しました。
 今回も直前になってとある事情からキャンセルが出ましたが、それでも総勢19名の子ども達と一緒に遊んだりご飯を作ったりして楽しみました。
 新型コロナウイルス感染症対策として、今回は当研究所のネイチャーゲーム指導員から接触せずに一緒に遊べるネイチャーゲームをしてもらい、それからお馴染みのビニール袋炊飯をして、秘密基地づくりと豚汁づくりを行いました。

 秘密基地づくりは、過去に参加した子ども達がさまざまな情報ややり方をお互いに交換して、過去3回でもっとも丈夫でかっこいいテントが完成し、他のサイトのキャンパーの方が「あれもいいね」とお褒めの言葉をもらう完成度となりました。

 また、今回の豚汁は、同じ豚汁だった第1回目とは趣向を変えて、被災地に出かけて炊き出ししたらというテーマで各種材料を準備し、調理好きな子ども達と一緒に調理をしました。
ご飯のときには沈黙で食べていましたが、途中で缶詰を登場させると、おうちで見たことがない子もいたらしく、開け方や食べ方について知っている子ども達が教えたりもしていました。
今回は前二回とは異なるサイトを使わせてもらったのですが、どの子も初めてのフィールドということで、スタッフを連れてあちこちに探検に出かけ、あっという間に終了の時間となりました。


最初は硬い表情の子も多かったのですが、帰るときにはお互いに楽しそうに挨拶を交わし、初めてとは思えないくらい仲良くなってくれていました。
第3回までは、島根県NPO活動推進室様の補助金を採択していただいたおかげでこれだけのイベントができました。採択いただきましたことに心から感謝します。
最後に、今回参加してくれた子ども達、保護者の皆様、会場を貸していただいた万葉公園様、当研究所のスタッフとお手伝いの皆様、そして悩んだけれど事情を汲んで参加を辞退した子ども達と保護者の皆様、陰日向に今回のイベントを後押しして下さった皆様に、こころからの感謝をします。
本当にありがとうございました。

【終了しました】【お知らせ】サヒメルで「あなたのとなりのエイリアン展」が開催されます。

 当研究所では有害生物対策をメニューの一つにあげていますが、では、有害生物というのはどのようなものかご存じですか。
 読んで字のごとく、有害生物は人に不利益を与えて害をなす生物の総称なのですが、この有害生物の中には外来種が含まれています。
 日本の生態系を破壊することから、これら外来種は積極的に駆除しなくてはいけないことになっており、アライグマやヌートリアなどは基本的にその場で処分が義務づけられています。
 また、河川敷などでよく見るオオキンケイギクやアメリカセンダングサなどっもこの外来種のカテゴリーに含まれる生物です。
 ただ、ぱっと見てもそれが日本の在来種なのかそれとも外来種なのかは判別がかなり難しいと思います。
 そこで、3月19日から三瓶自然館サヒメルで開催される企画展「あなたのとなりのエイリアン」をぜひ見学して下さい。
 この展示ではさまざまな外来種が紹介されていて、みるだけでも相当知識を得ることができ、山歩きなどをする人にとってはかなり参考になると思います。
 5月29日まで開催しているそうなので、外来生物をしっかりと覚えていただき、見つけたら適切な処分を行えるようにしておきたいですね。

あなたのとなりのエイリアン」展(三瓶自然館のウェブサイトへ移動します)

避難所と避難場所

 避難所と避難場所。一文字違いですが、内容はずいぶんと異なる性格を持っています。ただ、この二つ、普通の住民だけで無く、災害担当をしている行政職員でもごっちゃになっているケースがあり、ややこしい問題が大規模災害の後で毎回起きています。
 では、この二つはどう違うのか。
 避難場所は災害が発生しそうな状況から災害が収まるまで、自分の安全を確保するための場所です。場所と書かれているとおり、必ずしも施設の中というわけでは無く、公園や大きな駐車場、校庭といった場所もよく指定されています。
 そして、避難所は、災害によって何らかの事情により生活を送るべき場所が失われてしまった人が新しい住居が見つかるまでの仮の生活空間として準備されるものです。
 そのため、避難所は施設が指定されています。
 ただ、避難所で生活するにはかなりの気力と体力が必要だということに、いい加減に気づいて欲しいと思います。
 というのも、日本の避難所には基本的にプライバシーは無視されています。他人の視線を遮るような布や生活空間を仕切る段ボールがあったとしても、自分がほっとできる空間を作れているわけではありません。
 最近の新型コロナウイルス感染症のおかげでようやく避難所内に家族で過ごせるようなテントが配備されるようになってきましたが、基本的には24時間自分の行動が誰かの目にさらされているということになります。
 知らない人の目があるのに毎晩ぐっすりと眠れる人はそういないと思います。結果として、睡眠不足による活動量低下が起きてしまいます。
 それから、食事の問題。

 気力や体力を維持するためには温かな食事は必須なのですが、実際のところはおむすびや菓子パン、油ものたっぷりの配給弁当という冷たい食事のローテーションが行われていて、仮に避難所に台所があったとしても、食中毒を恐れて避難者に調理は一切させないというのが現実です。
 せめてキッチンかーなり炊き出し班なりが毎食作ってくれれば良いのですが、資金、場所、資材、そしてさまざまな平時の法規がその手の活動を妨害しています。
 「避難者に贅沢をさせると避難所から出て行かない」ということを言われる偉い人がいますが、避難者は誰も避難したくて避難しているわけではありません。
 仕事がなくなったり、住む場所が再建できなかったりといった、事情を抱えて行き場のない人達が最後まで残るだけなのです。
 自分だけの安心できる空間と睡眠、そして暖かでおいしい食事。これが的確に供給されれば、今のような避難所地獄は消えていくのではないかと思っています。
 そうでなくても年をとると環境の変化に弱くなるのですから、気力や体力がきちんと維持されるような対策を平時にしっかりと行っておきたいですね。

災害遺構を訪ねて17「益田川ダム」

 厳密に言うと「災害遺構」というのとはちょっと違う気がするのですが、災害がきっかけとなって作られた、洪水対策に特化した益田川ダムをご紹介したいと思います。
 益田市というところは、高津川と益田川に挟まれた地域に市街地が広がっています。
 二つの川がもたらす良質な耕土は流域に豊かな田畑を作ってくれましたが、同時にちょっとした雨でも水没する、水害多発地帯でもあったのです。
 戦前からさまざまな治水事業や改良事業が行われてきたのですが、その想定を超える豪雨や台風に襲われて、流域が水没することが繰り返されていました。
 益田川ダムを造る計画自体はかなり昔からあったようですが、昭和58年の島根県西部水害が決め手となって益田川ダムが造られることになったそうです。
 このダムが面白いのは、洪水対策の単能ダムだということ。
 元々は他のダムと同じような多目的型の湛水するダムだったそうですが、紆余曲折の末に普段は水をためない穴あきダムになったそうですが、その後の雨の降り方を見ると、これで正解だったのではないかという気もします。

ダムを上流部から見る。湛水していないのがよくわかる。

 吐水口はダムの低い位置で常に開放状態となっていて、流域に大量に雨が降ったときでも、吐水口から排出される水の量は一定のため、下流域に影響が少ないことです。
 昨今のダムの緊急放水による下流域の水没事故などの話を聞くと、このダムの優位性がよく分かるのではないかと思います。
 普段は地元の人のお散歩やダムマニアの人くらいしか見かけない場所ですが、このダムができてから後、益田川での大きな氾濫が起きていないことを考えると、効果はあったのだろうなと思います。

【お知らせ】地域防災力強化の講演を見ることができます

 一般財団法人日本防火・防災協会様の主催で、地域防災力の充実強化のための講演について、オンラインで見ることができますのでご紹介します。
 日本防火・防災協会は毎年防災に関する講演会をやっているのですが、新型コロナウイルス感染症が流行していることから、今年度はオンラインでの開催になったようです。
 講演の内容は自主防災組織や女性と災害史などさまざまですので、リンク先からあなたが聞いてみたい講演を選んで聞くのもよいのでは内かと思います。
 詳細はリンク先をご覧下さい。

地域防災力の充実強化のための講演(日本防火・防災協会のウェブサイトへ移動します)