避難カルテを作ってみよう

 益田市では先般新しいハザードマップが配られました。いろいろと新しい情報が追加されているので、これを利用してあなたの避難カルテを作成してみませんか?
 避難カルテというのは、避難に関するいろいろなことを一枚の紙にまとめておくもので、いざというときにこれを見るだけで避難すべきかどうかやどの経路を使って避難すればいいかなどがわかって慌てなくてすみます。
 今回は、高知県黒潮町で作られている避難カルテを参考に、順番を追って避難カルテができるように説明をしていきたいと思います。

1.まずは書式を印刷します。「避難カルテ」の書を用意してみました。これをプリントアウトしてください。

2.最初に家族構成を記入します。世帯の全員の名前、性別、年齢、自力避難ができるか否か、家族の力で避難できるか否かを記入します。また、避難場所までの避難方法を決めておきます。原則は徒歩ですが、場所によっては自動車やバイク、自転車でないとたどり着けないことがあるかもしれませんし、移動するのに自力では難しい場合、例えばシニアカーや車いすといった避難手段を記載しておきます。

3.自宅の情報を確認します。いつ建てられたのか、耐震診断はされているか、耐震補強はされているか、家具は固定されているかを記入します。また、ハザードマップを確認して危険と思われる災害を確認して書き出しておきます。

4.避難するときの情報を記入します。避難場所欄に名前を記入し、その避難場所がどのような災害に対応しているのかを確認して書き写します。
予想される災害に備えるため、複数の避難場所を決めておきましょう。また、家からそこまでの避難訓練をしている場合には、いつ頃、どれくらいの時間がかかったかも記入します。

5.近所で助けてくれる人を洗い出しておきます。助けてくれる人の名前と連絡先を書き出しておきます。

6.次に住宅地図を用意します。googleやyahoo!などの地図を自宅と避難所及び避難所までの道がわかるように印刷をします。

7.6の地図に、ハザードマップを参考に浸水地域や土砂災害警戒区域などの危険箇所を記入していきます。

8.自宅から避難場所までの避難経路を8で作った地図に記入していきます。その際、7で記入した危険箇所は避けるような経路を作ってください。また、可能であれば避難経路は複数作っておいた方が安心です。

9.作成した地図を元に実際に歩いてみます。避難経路を自分がきちんと歩けるか、目で見て危険な場所や危険なものはないかを確認し、あれば地図に記入してきます。

10.もう一度地図を見直して、安全と思われる避難経路を確認します。その上で、一度自宅から避難所までの移動時間を計ってみます。

11.移動時間を4で記入した避難所の「避難所までの所要時間」に記入してください。


 以上で避難カルテは完成です。年に1回は内容を確認し、記載する情報を更新してください。
 また、これに非常用持ち出し袋や非常用備蓄品などのリストもつけておくと、一度に確認ができて便利ですよ。
 是非一度作ってみてくださいね。

飲むおにぎりを食べてみた

 いつぞや、どこかでみたテレビで忙しいときに便利な食事特集というのをやっていて、その中に「飲むおにぎり」というのが紹介されていました。
 片手で飲めて手も汚れず、保存期間も長めという夢のような食事だというような触れ込みだったように記憶しているのですが、これは水不要の災害食として使えるのでは無いか、きっとそのうち地元のコンビニでも売ることになるのだろうなと思っていたのですが、その後特に見かけないまま忘れていました。
 ある日、ネットショッピングでたまたまこの「飲むおにぎり」を見つけてしまい、当時忙しかったこともあるので朝ご飯代わりに使えると便利だなと思って、購入ボタンをぽちりと押して買ってみました。

飲むおにぎりはよくドリンクなどであるラミネートパウチに入っている。

 届いたものは写真の二種類。味は「梅カツオ」と「梅昆布」で賞味期限は1年くらい残っています。
 6パックセット、送料込みで3,000円ちょっとでしたので、一つが500円くらいでしょうか。コンビニのおむすびの4個分の値段なので、備蓄品なら許容範囲と感じます。カロリーは280kcal、分量は通常のおにぎり1.5個分だそうです。

 さっそく蓋を開けて覗いてみます。おにぎりというよりも、海苔の佃煮という感じです。

 お皿に出してみました。あまり食欲をそそるような見た目ではありませんが、口から直接飲むものなので問題なしとします。
 さっそく飲んでみました。
 ・・・塩辛い。味が均等にされているせいかどこまで飲んでも同じ味。お米の芯が残ったような感じもなんとも言えず、途中で少し気持ち悪くなりました。ご飯は上手にたかなければということと、おにぎりの塩気の濃い部分薄い部分が食欲を増進させていたんだなぁと感じさせられました。
 半分ほど飲んだのですが、どうにも受け付けなくなってギブアップ。
 通りかかった当所の研究員達が興味を示したので、「梅昆布」を提供して飲んでみてもらいました。
 その結果。薄味好きのS研究員は「味が濃い」として一口で終了。濃い味好きのH研究員はぺろりと嘗めた後、お茶碗にご飯をつけて佃煮代わりに使っていました。最後のM研究員は、一口食べてちょっと考えてからおもむろにお水を飲んでいました。
何でこんなに塩辛いんだろうと言うことで、改めて成分表を見てみると、梅昆布の食塩含有量は3.37g。

写真はうめかつお。食塩相当量は3.47gで、梅昆布よりも食塩量が多い。

 厚生労働省が推奨する一日の摂取目安が7.0g~8.0gですから、それは塩辛いはずです。
 貴重な水なしで食べられるかと考えていたのですが、このまま飲んだらのどが渇いて仕方が無いという結論になりました。
 ただ、アルファ米白米に混ぜれば、おいしいご飯ができるかなとも思います。
 また、汗をかいた時や濃い味が好きな人なら、ひょっとしたらおいしく食べられるのかもしれません。当研究所の所員はみな薄味になれていることもあると思います。味の好みは人それぞれですので、よかったら一度飲んでみてください。

栓抜きの使い方

栓抜きにはいろいろな形がある。

 最近は殆ど見ることがなくなった栓抜きですが、缶切り同様、被災地に入ってくる支援物資の中には栓抜きが必要なものがくることがあります。
 先日、当研究所で久しぶりに瓶ビールを準備したら、研究員達がどうやって開けるのか栓抜きを見て首をひねっていましたので、今更感はありますが、今回は栓抜きの使い方についてご説明したいと思います。
 使える方はご存じだと思いますが、栓抜きを使うのに難しいことは何もありません。
 栓抜きの頭部分を王冠に乗せ、引っ張る部分を王冠の端にかけてテコの原理で上に引き上げれば、簡単に栓は外れます。

栓抜きの右側の部分が支点になる。左側下にある爪を王冠の横に引っかけてテコの原理で栓抜きを上に動かすと、王冠が曲がって取れる仕組み。


 注意点とすれば、瓶をしっかりと支えておかないと栓を抜いた瞬間に瓶がひっくり返って中身があたりにこぼれてしまうことくらい。
 さっきのビールは、S研究員が開けるときに瓶が横倒しになりそうになって慌てて周りが瓶を押さえてました。
 ところで、栓抜きと缶切り、おうちに置いてありますか? そして、正しく使うことができますか?
 どちらも最近ではほぼ出番のない道具ではありますが、被災時にはいろんな場面で出番が多いアイテムです。
 使わないかもしれませんが、災害用備蓄品の一つに加えておいてもよいのかなと思っています。
 そして、たまに練習しておくといいですね。

アウトドア用ガスバーナーの注意点

シングルバーナーは個人用鍋であるコッヘルに収まるように作られていることが多い。

 前回はカセットコンロについて触れてみましたが、今回はアウトドアで使うガスコンロ、ガスバーナーについてです。
 アウトドア用のガスバーナーはカセットボンベではなく、アウトドア用のガスカートリッジを使います。
 巷ではカセットボンベをCB缶、アウトドア用のガスカートリッジをOD缶と呼ぶそうなのでここではその表現を使わせていただきますが、OD缶はCB缶に比べると次のような違いがあります。

1.取り付け口が違う

OD缶はバーナーとねじで繋がっていることが殆ど。

 CB缶はマウントに取り付けて押しつければガスの供給が始まりますが、OD缶はガス圧が高いためか取り付け部分がネジ状になっていて、マウントはねじ込んで接続するようになっています。
 このおかげで缶とバーナーがしっかり固定され、缶をバーナーの支えに使うことが可能になっています。

2.内容量が多い

大きいタイプは470g。CB缶は250gなので、ほぼ倍入っている。

 アウトドアで使う都合上、一般的にはカセットボンベよりも内容量が多く重たいことが多いです。

3.CB缶よりも手に入りにくい

 カセットボンベはどこででも手に入りますが、ガスカートリッジは売っているところが限られています。サイズもいろいろあります。

4.寒冷地でも使える

 CB缶の寒冷地仕様よりもOD缶の寒冷地仕様の方が温度の低下には強いようです。OD缶には、缶を暖めるための専用ヒーターもあったりします。

5.値段が高い

OD缶はその目的上、コンパクトで軽量という機能が要求されることが多いです。
そのため、カセットコンロよりもかなり値段が高くなっています。

次に、OD缶を使ったガスバーナーを使うときの注意点は次の通りです。

1.なるべく純正カートリッジを使うこと

基本的には自社のガスカートリッジが推奨されています。接続部の形状はまったく同じなのですが、内部に一部違いがあるということです。
ただ、メーカーによっては汎用性がある取り付け部にして、ガスカートリッジはどこでも大丈夫というようなものもあるようですので、買うときには確認した方がよさそうです。

2.あまり重たいものは乗せない

 ガスバーナーは前提条件が一人または数名の料理を作るという目的ですので、安定性よりも持ち運びのしやすさが優先されています。
 そのため、バーナーの上に大きな鍋などをのせると重心が高くなって不安定となりひっくり返ってしまうことがよくあります。
 その場合にもガスの供給は止まらない場合が多いので、大火事になることが想定されます。

低い位置で使えるようにOD缶と離れて使えるようになっているバーナーもある。

3.手に入りにくい

CB缶のようにどこででも売っているわけではありません。メーカーによりますが純正品が手に入りにくいものもあります。

 ここで書いているOD缶のガスバーナーはシングルで持ち運びが簡易なものを指していますが、オートキャンプなどではこのOD缶が取り付けられるコンロ、ツーバーナータイプもあります。
 CB缶に比べると高くて重たいOD缶ですが、CB缶よりもガスの容量が多いので保管場所があまりとれない人には非常に向いていると思います。
 ただ、原則は屋外使用であることとあまり重量物が載せられないことを考慮して、自分の目的にあったものを準備しておいてくださいね。

カセットコンロの注意点

大出力が使える大型のカセットコンロ。大人数の鍋などを作るときに活躍する。

 災害時の準備用品としてよく書かれているカセットコンロ。
 アウトドア用品などでは非常にコンパクトに収納できるものも出ています。
 カセットボンベ自体も比較的割安で用意でき、簡単に取り扱えることから準備を推奨されているものですが、用意する際に気をつけておかないといけないことがあります。
 今回はその注意点についていくつか考えてみたいと思います。

1.カセットコンロってなんだ?

 カセットコンロは、読んで字のごとくカセットボンベを使う簡易型コンロのことで、イワタニの製品がかなり有名ですが、高いモノから安いものまでいろいろと出ています。
 アウトドアで使われるものはガスバーナーとも呼ばれますが、こちらは次回で取り上げたいと思います。

左がOD缶、右がCB缶。見た目から異なるが、両方ともガスボンベ。

2.カセットコンロを使うときの注意点

 カセットコンロは普通のガスコンロの構造がコンパクトになっているものです。
 そのため、簡単に使うことができるのですが、次の点に気をつけておく必要があります。
(1)基本的には純正品を使うこと

 カセットコンロのメーカーはいろいろとありますが、大抵の場合「純正のカセットボンベをお使いください」と書かれています。同じようにカセットボンベにも「○○専用」という記載がされていることが多いです。
 純正品でない場合、事故が起きたときに保証が受けられないということが大きいですが、他にもカセットボンベによっては火力が足りなかったり、逆に火力が強すぎたり、セットしたら微妙にガスが周囲に漏れるようなものもあるようです。
 カセットコンロとカセットボンベの関係についてはいろんなホームページでいろいろと書かれているところですが、純正品を使うということを基本にしておいてください。
(2)ゴトクの上に収まるように暖めるものを選ぶ
 カセットコンロはコンロの中にガスボンベを組み込む構造になっています。
 そのため、コンロのゴトクからはみ出すような鍋や鉄板を使うと、ガスボンベが異常に加熱して爆発する事態が生じてしまうことがあります。
 よく起きるカセットコンロの爆発は、大概の場合鍋や鉄板がガスボンベの上に達していてボンベが異常加熱して起きているものです。
 自分が使おうと思っている鍋や鉄板を確認し、ゴトクの中にきちんと収まるようなカセットコンロを選んでください。
(3)換気に気をつける
 カセットコンロは気軽に使えるものですが、ガスと酸素を燃やして二酸化炭素を形成していることに変わりはありません。
 利用するときには、意識して換気をするようにしてください。
(4)カセットコンロには寿命があることを意識しておく
 カセットコンロはパッキンや内部部品にゴムを使っていますので、長年使っていたり、使い方を誤っていたりすると、ゴムが腐食したり、劣化したり、ガス漏れなどが起こることもあります。
 利用前はカセットボンベが繋がる部分等のゴムの状態を確認し、劣化しているようならカセットコンロごと交換するようにしてください。

 普段から日常的に使っていれば、かなり便利だと感じるカセットコンロ。
 防災用品として眠らせておくのはもったいないので、意識して使うようにしたいですね。

非常時に頼りになるラジオ

 災害に関する情報は刻一刻と変化していくので、可能な限り最新の情報を得て行動するようにしたいものです。
 その際、情報を得る機材はどのようにしたらよいでしょうか?
 スマホ、ラジオ、テレビ、防災無線など、いろいろな手段が考えられますが、お勧めなのはラジオです。
 スマホやテレビでは、その画面を見ないと詳細な情報がわからないことがよくありますが、もともと音で情報を伝えるラジオは、耳があれば情報を手に入れることができるようになっているため、避難しながら、避難所を設営しながら、休憩しながらと、作業しながら最新の情報を手に入れることができるからです。
 最近ではスマホでもラジオの聴けるアプリが登場していますのでそちらでもいいのですが、例えば津波警報などで避難している最中は、次々に受信するエリアメールや緊急メールでまともにラジオが聴ける状態ではないと考えられます。
 個人的にラジオが好きということはあるのですが、バッテリーの持ちやチャンネルの自由度を考えると、重量がかさむにしてもラジオを一台は持っていた方がいいと思います。
 一時ほどではありませんが、やはり携帯ラジオの需要はあるようでさまざまな形のものが発売されています。また、発電機を搭載して電池が切れても一応使えるという防災ラジオも多数発売されています。
 ラジオを選ぶとき、案外と気にしないのですが入れ替えた電池でどれくらい聞けるのかということが実は重要になっていたりします。

発電機内蔵のラジオの発電機はあくまでも緊急用と考えた方が良い。予備電池は必ず用意しよう。

 安いラジオだと単三2本で30時間程度、良いものになると300時間以上聞くことができ、当然電池が長持ちする方が災害時には有利と言うことになります。
 また、使う電池ですが軽量な単四電池よりも大きな単三電池、それよりも大きな単二電池の方がそれぞれ電池は長持ちします。
 重量とコストを考えて、自分にあった機材を用意しておきたいものです。

蚊の対策を考える

 災害が発生すると、自宅避難しているにしても、避難所に避難するにしても蚊との戦いが待っています。
 電源が復旧するまではエアコンや扇風機は使えませんから、昼夜問わず扉や窓を開けて風を通すことになりますが、網戸なしで開放してしまうと、そこから蚊が大挙してやってきて、避難者のそこかしこを刺して血を吸っていきます。
 すると、刺された場所を手で掻くことにより、刺された場所が化膿してしまったり、日本脳炎などの病気をもらってしまうことにもなりかねません。
 網戸があればよいのですが、大規模な避難所になるような施設の場合、空調に頼ることが多いため網戸がないことが大半です。そのため、出入り口以外の開口部には網戸用の網をガムテープなどで貼り付けておく必要があります。
 また、蚊を寄せ付けないという点からみると、蚊取り線香なども備え付けておかないといけないかもしれません。
 最近では、「ワンプッシュで1日蚊が来ない」「ワンプッシュで二週間は大丈夫」などというような製品も出ていますが、これらの製品は噴霧した周囲のものに付着して蚊を撃退するという構造になっているそうなので、モノがあまりなく広い出入り口のような場所だと効果があるのかどうかは正直分かりません。

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感想(2件)

 キンチョールなどの殺虫剤もありますが、不特定多数の方が寝起きする場所で噴きまくるのは衛生環境上好ましくない状態を生み出してしまいます。
 対策としては、出入り口に誘虫灯を設置して電撃で焼き殺して侵入を防ぐか、出入り口にも網戸などをつけて開放しないといった複数の対策を考えておかないといけないでしょう。
 また、蚊を発生させないという対策も有効に働きそうです。
 例えば避難所周辺の蚊が沸きそうな場所の水を全て無くしてしまう方法や、避難所周辺の藪があれば全て刈ってしまえば、蚊の発生量は格段に押さえることができます。
 もちろん、非常用持ち出し袋の中には虫除けや、刺されたときに備えてかゆみ止めや虫刺されに効く薬を入れておくことも重要です。
 いずれにしても、自宅または避難する予定先の環境を確認し、蚊の発生しそうな場所や潜んでいそうな場所を確認し。対策しておくことはかなり大事なのでは無いかと思います。

【活動報告】保育園の避難訓練に参加しました

 2019年5月30日に益田市のすみれ保育園様が実施されました地震及び津波による避難所までの避難訓練に参加させていただきました。

避難所までの避難訓練では避難経路の中に崩れたり倒れたりするものがないか確認しておくことも必要になってくる。

 今回の訓練では、地震により津波警報が発令されたという想定で保育園から近隣の避難所である益田東中学校まで実際に避難するということで、当研究所はその避難訓練の内容を見させていただき、後日具体的なアドバイスをさせていただく立場での参加です。
 訓練は午前10時に始まり、避難完了が10時25分。地震で動けない時間が3分程度ありましたから、幼児の足で1km弱の道のりを20分強で移動完了したのはかなり素早い避難だったのではないかと思います。
 今回の訓練に当たっては、ガラスでできた階段下の防煙板が落ちて散乱している想定を当日サプライズで作成させてもらい、床に卵パックやペットボトルの蓋を撒いてブルーシートで覆ってみました。

ブルーシートの上側にはガラス製の防煙板がある。もしも床に何かが散らかっていた場合には、お昼寝用の布団を上にかぶせて移動するようにとアドバイスを行った。

 ですが、廊下を覆うブルーシートにこそ躊躇したものの、子ども達は床のでこぼこやガラスを踏むようながしゃがしゃといった音はまったく気にならずに素早く移動をしていました。ちなみに避難訓練完了後に大きい子達に素足で踏んでみてもらいましたが、痛がる子よりも気持ちいいという子の方が多く、子ども達は足裏マッサージが必要な状況なのかと思わず笑ってしまいました。

道幅が狭く、軽自動車とすれ違うのがやっとというような場所もある。避難計画を立てる場合には、このような狭い道路や交差点で車をどうやり過ごすのかが鍵となる。

 今回、快晴で気温が高かったこともありどうなるかとも思いましたが、子ども達は避難所である益田東中学校までは一生懸命歩き、到着後にほっとした顔でそれぞれに持参した飲み物を飲んでいました。避難の際に水分を持って出られるというのは非常に重要な部分ですので、今後も継続してほしいなと思います。

園児と先生達が避難完了したところ。パニックも起きず、統制が取れた状態で避難が完了している。
毎月の避難訓練が子ども達にもきちんと浸透していることがわかる。

 毎回さまざまなことに気づかせていただけるこの避難訓練の見学、後日気づいた点やアドバイスを報告書で提出させていただいていますが、すみれ保育園様ではそのたびに避難訓練の内容をアップデートされ、正直なところ毎回驚かされています。

アドバイスによる変化の一例。避難所に避難する場合に保育園に掲げられる看板。道路からでも見えるように作られている。保護者へ避難先を知らせる表示をするようにアドバイスしたら、これが作られた。大きな紙に書いて窓に見えるように貼ればと思っていたが、こちらの方が時間が短縮できることを教えてもらった。

 この保育園では保育士様向けの研修会もさせていただいているのですが、その際にこちらの説明が足りない部分がいろいろとあることも、こういう訓練に参加させていたくおかげで気づかせていただきました。
 何事も無いのが一番ですが、万が一に備えて訓練をきちんとしておくことはとても大切です。そしてその訓練を第三者の目でチェックし、訓練参加者にフィードバックしていくことが大切なのかなと感じています。
 避難訓練の参加について許可いただきましたすみれ保育園の園長先生、理事長先生始め先生方、そして園児の皆様にお礼申し上げます。

【活動報告】「防災ポーチ作り講座」に参加しました

 2019年6月1日に益田市の吉田公民館様主催による「防災ポーチ作り講座」が開催され、当研究所からは所長とS研究員が受講者として参加させていただきました。
 今回の講師である防災士の黒澤様のお話では「災害を想像すること」が非常に大切であり、各地で起きる災害がもし自分の住んでいる地域で発生したらどのようにするかを、先日各世帯に配布されたハザードマップを確認しながら想像してみるとよいというお話がありました。
 そして、防災リュックと防災ポーチの違いについて「防災リュックは備えておくもの」であり「防災ポーチは日常使いでき、かつ被災時に使える最低限のものを持ち歩くためのもの」との説明がありました。

幅20.5cm、高さ15.5cmの百円均一のポーチ。ものはたくさん収まるが、重くすると持たなくなるという問題をどう解決するかが鍵。講師の方は、普通のポーチで自分の防災ポーチを作り上げていた。

 それから基本的な防災ポーチということで、今回は「絆創膏5枚」「個別包装されたマスク1枚」「ポリ袋2枚」「ウエットティッシュ1組」「ホイッスル&小型ライト1組」「飴2個」「マジックペン1本」「付箋紙10枚」をポーチに入れてみました。

今回作成した防災ポーチの中身を並べてみた。コンパクトだが、基本的に必要なものは揃っている。

 各シーズンによってこれに汗ふきシートやカイロ、保湿クリームなどが加わったり外れたりと、普段使いすることで自然とアイテムが更新できる仕組みになっていることを伺うことができました。また、手ぬぐいを一枚入れているとさまざまなことに使えて便利というような話もありました。
 その後、このポーチに「自分に必要なものを足してみよう」ということでグループ討議が行われ、エコバッグやソーイングセット、歯磨き用シートやガム、カード型拡大鏡、ポケットティッシュ、輪ゴム、新聞紙など、その人にとって必要だと思われるアイテムがいろいろと出てきました。
 ただ、あれこれと欲張るとポーチに収まらなくなって結局持ち運びしなくなるという問題が発生するため、ポーチに収めるものの最低ラインをどのように設定すれば良いのかということで参加者がいろいろと首をひねっていました。
 講師の方からは、これに家族やペットの写真、保険証のコピー、スマートフォンの充電器、衛生用品などが良く追加されるアイテムだという話がありました。
 他にも「ポリ袋は何枚程度あればよいのか?」や「刃物を加えるのはどうだろうか?」などといった質問も出され、非常に和やかな空気で講義時間を過ごすことができました。

参加者の発言を黒板にまとめたもの。予想もしなかったものがたくさんでて、確かに必要だと思わせるものがいろいろと出ている。

 講座の最後にはこの講座からどのようなことを考えたかという主催者からの問いがあり、「習ったことを持ち帰って周囲の人に伝えていく」「持ち歩くことが大切」「被災しても年数が経つと忘れてしまうのでこういう機会にそれが思い出せて良かった」などという意見や「避難にはスニーカーが必要で、ベッドの下にはいつも置いてある」「避難して一番困るのはトイレットペーパーの在庫」というようなお話もありました。
 いずれにしても、十人いれば十通りのセットができるというこの防災ポーチ。
 自分なら何をセットするかを考えて作ってみてはいかがでしょうか。
 最後になりましたが、講師の黒澤様、そして主催された吉田公民館の皆様にお礼申し上げます。

会場には市販の避難セットも展示されていた。文具メーカーのコクヨが出している防災バッグで、いろいろなものが収められている。ただ、普段持ち歩くには笠があるかも。

家族の集合方法を確認しておこう

 災害というのはいつ何が起きるかわかりませんので、それに対する備えはしておかなくてはなりません。
 今回は家族がバラバラなときに被災した場合どうするかについて考えてみたいと思います。
 考えてみれば、いつも家族が一緒にいるわけではありません。避難訓練の時はみんな一緒でも、通常は仕事や学校、買い物やお出かけなどでそれぞれがバラバラな行動をとっていることが非常に多いのではないでしょうか。
 そんなときに災害が起きたら、あなたはどんな風に家族と合流しますか?
 まず、一番に自分が生存していることを家族に知っておいてもらわないといけません。
 以前に少し触れましたが、携帯電話や公衆電話などの通信手段がある場合には災害時伝言ダイヤルの171番に自分の生存報告とどこへ避難するかを吹き込んでおくようにします。
 また、音声回線がうまく繋がらない場合には、web171や携帯電話のキャリアが提供する災害時伝言板にメモを残すようにします。いずれにしても、鍵となる番号をあらかじめ決めておかないとメモやメッセージがうまく家族で共有できないことになりますのであらかじめ決めておいてください。また、LINE等のSNSも有効ではありますが、その場合には不急なメッセージのやりとりは事態が落ち着いてからにしてください。
 次に連絡がつかなかったり、通信手段がない、もしくは失った場合に備えて、自宅のどこかに生存報告とどこに避難しているという貼り紙を貼るようにします。
 空き巣などの不埒ものに備えて、玄関などの見える場所ではなく、家族でないとわからないような場所を決めておきましょう。
 最後は、連絡がつかない、書き置きもできないような状況が起きた場合に備えて、集合場所と時間を決め、無事な場合にはそこにその時間こら一時間待つというルールを作ります。
 こうすれば、通信手段を失い、家が跡形もなくなっていたとしても、その時間に集合場所にいけば家族がいるかもしれないという希望を作り出すことができます。
 約束した時間以外は好きなように動けるので、例えば 避難所巡りをしたり、病院巡りをしたりといった行動を気兼ねなくすることもできます。
 いくら手段があっても困るものではありませんから、どのようにするのかを家族しっかりと話し合って、災害にあったときでも素早く会えるようにしておけるとよいですね。