行政や企業、自治会などの組織によくあることですが、災害が起きるととりあえず全ての職員や社員、役員に非常招集がかかるようです。
全員が庁舎や会社といった拠点に集合するというルールを作っているようですが、正直なところナンセンスだなと思うことが多いです。
とりあえず人手を集めるというのは「集まってから何するかを考える」と言っているのと同じで、危機管理能力がないことを露呈しているようなものです。
組織で作成する災害時BCPの基本的な考え方は「構成員の安否」と「何をいつまでにどうするためにどんな人が必要なのか」です。
その結果としての全員動員であるならば、それは問題ないと思います。
例えば電力会社や通信会社、ガス、水道、電話など地域のインフラを支えるようなお仕事の場合だと、全員で対応しないと手が回らなくなるかもしれません。
また、自治会であれば安否確認や避難、救助などでたくさんの仕事がありますから多くの人手が必要になるでしょう。
でも、例えば小売店や販売店はそこまで緊急にしなければいけない仕事があるかどうか。
街中で大渋滞や混乱を起こしてまで出社を促さないといけないかどうかをよく考えてみる必要がありそうです。
去年の大阪北部地震では、大規模な地震であったにもかかわらず通常通り仕事に行こうとする人達が大勢いて、結果として大阪府内では最大で普段の倍の渋滞が発生したという記録があります。
これは仕事に行こうとした人達ではなく、その人達を使っている組織が災害について何も考えていなかったことが原因です。
災害が発生したらどのように対処するのかをきちんと取り決めておくことは、組織としての最低限必要な事だという認識を持たないといけません。
ところで、緊急対応が落ち着いてきてもそれで仕事が減るわけではありません。
災害からの復旧はとてつもなく時間がかかりますから、長期戦に備えたローテーションを確立しておくことが必要です。
組織の構成員を交代でしっかりと休ませることで、長い復旧に立ち向かう気力が維持できます。
災害への対応経験が豊富な自衛隊でも、派遣される隊員は交代で休息をとるようになっています。そうしないと士気が維持できず、事故も増大することを知っているからです。
旧態依然とした組織、特に行政機関は意味不明に「全員対応を要求する」ところが多いため、発災から半月もすると疲労でまともな仕事ができなくなっている被災自治体の職員が殆どを占める状態になります。 公務員として「働かなければ、働かせなければ」と言う意識はわかるのですが、人間も消耗品であり定期的に休養させなければ壊れてしまうということを指揮官である首長はしっかりと認識する必要があります。
増大している仕事量は「自分たちでないとできないこと」「他人に任せても大丈夫なこと」「今しなくてはいけないこと」「今しなくてもいいこと」のマトリクスを作って整理することで、他所からの応援部隊に思い切って任せてしまうことが重要です。
支援できている人達に遠慮する必要はありません。お任せできる部分はお任せして、自分たちで出来る仕事に専念すること。それによってより良く過ちのない仕事が素早くこなせることになるのではないでしょうか。
緊急時対応だけでなく、その後の長期戦にたいする対応まで考えておくことで、いざというときに安心して行動ができるようにしておきたいものです。