情報が入らない

 台風15号の被害では、都市災害のテストケースのような問題がいろいろと発生しています。
 一番の問題は、長期間の大規模停電による情報遮断ということでしょうか。
 携帯電話基地局やテレビ・ラジオの中継塔では非常用発電装置や非常用蓄電池を持っていて、停電になっても1日から1日半は機能を維持できるように作られています。
 ですが今回のように長期間にわたる停電となると、自家発電機の燃料も蓄電池の電源も切れてしまって機能が止まってしまいます。
 本来であればそうならないようにいろいろな手が講じられるのですが、今回は全てが後手に回っている状態で、現在も混乱が続いています。
 なぜ後手に回ったのかと言えば、指揮する場所のある東京が被災したから。
 他の災害では災害はよそ事なので、冷静に判断して指示を出すことができますが、今回は自分たちが被災したため、その状況確認をしているうちに災害対応が終わってしまったと勘違いしてしまったのです。
 また、大規模な被害が出た地域はそもそも情報すら発信できませんので、外部から調査が入って初めてひどいことになっていることが判明することが殆どです。
 今回台風15号による東京以外の被害をマスコミが報道したのは発生から2日目以降でした。SNSからの発信で、東京以外に被害が出ていると言うことに初めて気づいたといった感じです。
 「災害時にはテレビやラジオ、ネットから情報を取る」「行政からの被害情報は防災無線やインターネットにより適宜発信を行う」というのが最近はやりの自助による情報収集なのですが、被災していることに気づいてもらえなければインフラの復旧がされず、被災者が情報を受け取ることができなくなります。
 今回はとにかく「情報が無い」ことが一番の問題となっています。
 行政や支援団体がいくらインターネットに情報を出しても、被災者が確認に使う携帯電話基地局の電源が無ければ通信環境がないので、そもそもそれを見に行くことができず、どんな情報も集めることができません。
 役場の広報車や街頭での貼り紙、口伝えによる情報拡散くらいしか手がないのですが、正直なところ自治会や自主防災組織がない地域では情報の広がりは期待できません。
 地域のつながりの薄いところだと、話を聞いた人が同じ地域の他の人に伝えることは考えにくいでしょう。
 もし東京23区内や大阪市内で同じような被害が起きたとしたら、今回以上に悲惨なことになるのは目に見えています。
 インターネットが使えない場合に、どこへ行けば情報を得ることができるのか、どこへ貼り出せば地域の人が見てくれるのか、アナログ手法を再確認しておく必要があるのではないでしょうか。

温かい言葉

 災害が起きると、さまざまな人が従来の生活を取り戻すために復旧作業を行います。
 行政機関はもとより、電気、ガス、水道、道路、輸送、交通など、その作業は多岐に渡ります。
 でも、普段からその仕事に従事している人たちでも、被害の状況によっては思ったように復旧が進まないことも多々あります。
 そんなとき、もし復旧作業をしている人たちを見かけたなら、一言「ありがとう」や「お疲れ様」の声をかけてみてください。
 どれだけ作業している人たちの励みになるかわかりません。

 以前、災害復旧で給水支援をしたことがあり、他の街からきた給水車の方と一緒に断水した街を回って水を配って回りました。
 その時に、水を受け取った人たちから異口同音に「ありがとう」「助かった」と言われて、他の街から来た給水車の方々はびっくり!
 曰く「断水した地域に給水支援に出て、お礼を言われたのは初めてだ」と。
 その日は朝8時から給水作業を開始、終了は午後4時30分だったのですが、給水車の方達は「被災して大変なのにありがとうと言ってくれるこの地域の人たちを助けたい」と言って、結局夜9時過ぎまで給水支援を続けられました。
 被災した人の暖かい言葉で、作業をしている人たちが奮い立ったのです。

 くたびれたとき、焦っているとき、そして先の見えない作業で気持ちが折れそうなとき、被災した人からの温かい一言が作業をしている人たちの気を奮い立たせることができます。
 大概の場合、復旧作業している人の中には被災した人も含まれているのですが、自分のことは後回しにして、その地域の人たちのために作業をしてくれているのです。
 困っているときほど、対応してくれている人に温かい言葉をかけてほしい。
 それによって自分も助かることになるのだということを、こころの片隅に置いておいてほしいなと思います。

行かないという選択肢

 台風15号は首都圏にさまざまな有形無形の被害を与えたようです。
 今回、首都圏の鉄道会社は事前に計画運休する旨を告知していましたが、蓋を開けてみれば運休していることを知らずに駅にやってきた人がたくさんいました。
 速報値のようですが、首都圏全体の6割の会社や学校が計画運休に対してどのように対応するのかという指示がされていなかったそうです。
 去年関西で続いた地震や台風で企業や学校の災害時対応が騒がれたところですが、今回もやっぱり指示なしによる通勤通学難民が大量発生してしまいました。
 テレビやラジオのニュースでは「情報が提供されていない」と騒ぐ人たちが取り上げられていましたが、果たしてどこまで情報提供すればこの人達は納得するのだろうかとかなり疑問に感じています。
 それはともかく、台風が来るということと、鉄道が計画運休するということは事前にわかっていたのに、そして強風吹きすさぶ中、駅に向かって移動して動きの取れなくなった人たちは何を考えていたのかと言うことに興味があります。
 発表されているさまざまな情報が自分に影響があるという意識ができないということ、言い換えれば「全ての事実は他人事」なのかなと感じます。
 もっとも「計画運休時は休んでよし」と言えない企業や学校に基本的な問題があります。
 安全を意識して「行かない」という選択をしたら、後になって「何故来なかった?」と言い出しかねない風土が、通勤通学難民を生み出す大元になっているのかなと思います。
 社員や学生の安全を意識できないような企業や学校は、このご時世ではこの先、おそらく生き残ることは無理でしょう。
 社員や学生を危険にさらし、社会的インフラに負担をかけ、さらに社会インフラを維持するため出勤する人たちをも妨害している状態が果たしてまともなのでしょうか。
 鉄道も無意味・無計画に計画運休しているわけではありません。
 計画運休するのは、乗客の安全を確保し、災害発生後の復旧を手早くするために行うものです。
 その意味がわかれば、社員や学生を交通手段の途絶している中、通常どおり来させるという行為がいかに無謀かということが理解できるのではないでしょうか。
 今後しばらくは、災害は増えることはあっても減ることはありません。
 そろそろ企業や学校、そして自分自身も災害時対応計画を作って、計画運休時には不要不急の出社や登校はやめるということを決めておく必要があるのではないでしょうか。

体を冷やす方法あれこれ

 台風15号による停電は想定以上の被害が出ているようで、復旧に時間がかかっているようです。
 電力関係の方々が昼夜問わず復旧作業をされていますが、なかなか困難な状況とも聞きます。ぜひ安全第一で作業を続けていただければと思います。
 そして、台風一過で真夏並みの暑さが戻ってきました。その結果、冷房なしで殺人的な暑さを耐えないといけなくなるという過酷な状態になってしまいました。熱中症により亡くなる方も出てきています。
 熱中症の傾向については以前触れたことがありますが、今回は遅ればせながら「体の冷やし方」についていくつか方法を考えてみたいと思います。

1.なぜ体を冷やさないといけないのか

 人間の体は体の機能を維持するために体温を調整する能力を持っています。
 ただ、まだ調整能力が発達していないこどもや、調整機能が衰えている高齢者の方は、体の調整機能が環境の変化についていけず、熱中症になってしまうことがあります。
 そのため冷房などの外的要因で体を冷やしてやる必要がありますが、最近はやりの携帯扇風機にはお気を付けください。
 周囲の空気を顔に吹き付けると汗の気化熱で涼しく感じるのですが、高温になると汗が出る前に熱風で乾いてしまって熱中症を誘発してしまう危険性があります。もし使うなら、水をミスト上に吹き出せる構造を持ったものを使うようにしてください。

2.どこを冷やせばいいのか

 体温を下げるということを考えると、大きな血管が集まっている場所を冷やすのが効率的です。
 背中の肩甲骨の間、脇の下、太ももの付け根などがよく言われる部位ですが、冷やすのが難しい場所でもあります。
 また、夏場にできる野菜や果物には体を冷やす働きがありますから、そういうものを食べて体を冷やすこともいいでしょう。氷やアイスクリームなどの冷たいものも同様ですが、どちらも食べ過ぎるとお腹を壊したりします。
 今回、簡単に誰でもできてお勧めしたいのが「手のひらを冷やす」こと。
 手を水につけるだけでも体温を下げる効果が期待できます。
 手に冷たくしたペットボトルを持っているだけでも、体温が確実に下がります。先日テレビで実験していましたが、冷えすぎているとよくないようなので、凍っているペットボトルの場合はタオルを巻くなど、温度を少し上げる方がいいようです。
 また、濡れたタオルで熱を吸収しやすい頭などを冷やすのも効果的ですが、びちゃびちゃのタオルを使うと周囲の熱で逆に煮えてしまうこともありますので注意してください。
 また、いっそのこと水風呂に入ってしまうというのも涼を取るという点ではいいと思います。

 停電区域全域に電気を行き渡らせるのは無理でも、電源車や発電機を使えば、特定の施設を通電させ、冷房を稼働させることはできるのではないでしょうか。
 また、停電していない場所まで被災者を移動してしまう広域避難を行うのも効果的だと思います。移動手段を提供できれば、小さい子ども連れや高齢者を移動させることも用意だと思います。。
 停電も災害の一つと考えると、地域への支援や地域外への避難という選択肢はできると思うのですが、あなたはどう思いますか?

被災後の段取りあれこれ

 ここのところ災害が続いていますが、被災した後、片付けを始める前にいくつかやっておいた方がいいことがあります。
 以前「被災物件の調査と証明あれこれ」で行政の調査については少し触れたことがありますが、被災後の片付けと段取りについて思いつくことを書いてみたいと思います。

1.被災したものの写真をしっかりと撮影しておこう

 被災した後、罹災証明書の申請や各種災害保険の請求などには写真が必要です。
 大規模災害になると、行政や保険会社が確認にくるのが被災してからかなり期間が空いてしまうこともあるため、その間片付けができない事態に陥ります。
 その際、写真が撮影されていると、その写真を使って罹災証明書や保険手続きを進めることができる場合があります。
 予め自治体や保険会社に確認して写真OKの了解をもらえば万全ですが、とにかく写真を撮っておきましょう。
 被災したものは4面と斜め、上部など、角度を変えて撮影し、被災したものの被災した様子がわかるようにします。
 建物や車両などは内部の写真や被災部分の写真も取っておくといいと思います。
 あと、建物の場合には簡単な見取り図と被災部分がわかるようなものを作っておくと、後々いろいろと役立つと思います。

2.業者による修理が必要かどうか確認しよう

 破損している場所やものによっては、専門の業者の方に修理をお願いしないとどうにもならない場合があります。
 まずは自力で修繕できるかどうかざっくりと被災したものを確認し、業者さんによる修理が必要だと判断したら、修繕の必要な場所と内容をリストアップして、すぐに業者さんへ依頼をかけましょう。
 被災してすぐなら業者さんもある程度余裕がありますから、自分のところができなくても、場合によっては他の業者を紹介してくれることがあるかもしれません。
 また、修理箇所と修理内容をリストアップしておくことで業者さんは修理部材や必要な期間が見積もれるので、手早くやってもらえることも多いです。
 全て業者さんに確認してもらおうとすると、時間が取れないために後回しにされることも多いのでご注意ください。
 そして、片付けが終わってから依頼すると、今度はいつ来てくれるかわからないくらい待たされますし、被災地外から入ってきたおかしな業者に異常に高価な金額で適当な修理ををされてしまうことも発生します。
 専門家が必要な作業は、早めに手配するようにしておきましょう。

3.ゴミ捨て場の確認をしておこう

 被災した後の片付けは、まず被災して壊れたものを家から搬出するところから始まります。
 その際、大型ゴミを処分する場所が確認できないと家の前や周囲に放置することになってしまい、衛生的にも景観的にもよくない状況になります。
 大型ゴミの処分場所・回収場所は変更されることが多々ありますので、処分する前に自治体に搬入先を確認するようにしましょう。
 また、自治体によっては処分場所・回収場所がいっぱいになって個別回収に変更するケース、回収を一度中止するケースなどもあります。
 前の日に確認したとおりにいかない場合もありますので十分注意してください。

4.人の手当を考えよう

 被災した後の片付けでは、自分一人ではどうにもならないような大型ゴミの搬出やいろいろな場所の掃除、片付けなど多岐にわたる後片付けが待っています。
 そのため、どのようにして片付けを始めるのかを考えておかないと途中で力尽きてしまいます。
 近所の人と一緒にみんなでお互いの家を片付けるのか、ボランティアを要請するのか、親戚縁者を総動員するのかなど、人によってやり方はいろいろだと思いますが、間違っても一人でやろうとは思わないでください。
 間違いなく途中で挫折します。

5.水が使えるかどうか確認しよう

 掃除につきものなのは水です。特に水害で被災した場合には家具や建物に貯まった汚泥を流すのに必須のものです。
 飲料に適さなくても構いませんが、それなりにきれいな水を確保するようにしましょう。
 水が使えない場合には、どんな方法ならきれいにできるかを資材を見ながら考えてみてください。

 注意しておきたいのは、全てにおいて作業をするのは自分だということです。
 自分一人では挫折すると書いていることと矛盾すると思われるかもしれませんが、周りはあくまでもお手伝い。
 全体の流れや段取りは自分で組むしかありません。
 誰かに頼ろうとすると、「災害関係の保険手続きは自分でするようにしよう」で触れたようにどこかからやってきた変な業者があなたの保険金をごっそり奪っていったりすることもあり得ます。
 あくまでも主体は自分。周囲はそのお手伝いということを忘れないでください。
 そして、どうしてもわからないことがあればご近所や社会福祉協議会、行政の窓口で確認してみてください。
 被災したことは終わったことですから、その事実は変えることができません。
 でも、被災からそれまでの生活に復帰するまでの時間を短くすることは可能だと考えます。
 早め早めに段取りをつけて、日常生活を取り戻せるようにしたいですね。

簡易トイレを作ってみる

 ちょっと前にトイレについて触れてみましたが、もう少し具体的に簡易トイレの作り方を教えて欲しいというご要望を頂戴しました。
 以前に「トイレ問題を考える」のなかで簡易トイレの作り方を書いたことがあるのですが、あれは便座や便器をそのまま転用する方法だったので、便座や便器が使えない場合どうするのかというご質問もあわせていただきました。
 理屈が分かれば「なぁんだ」というようなものなのですが、一度目で見てみるとよく分かるのかなと思いましたので、今回は簡易トイレを作ってみることにします。

1.材料

1)バケツ 1個
2)猫の砂 1パック
3)大きめのビニール袋 1枚

猫砂はお好みでどうぞ。個人的な感想を書くと、木からできているペレット状のものがお勧め

2.作り方

1)バケツにビニール袋を入れて口を折り返して拡げる

2)バケツの中に猫の砂を注ぎ入れる

3)バケツの上に座って用を足す

 バケツのサイズにもよりますが、おしりがはまって抜けなくなったり、うまく腰をかけられないことがあると思うので、バケツの上には段ボールなどで便座を作っておくといいと思います。
 結局のところ、排泄物を貯められる箱のついた座れるものであればいいという話になるので、コンテナボックスやゴミ箱、段ボール箱なども使えます。ただ、強度の問題がついて回りますので、くれぐれもおしりの載せ方には気をつけてくださいね。

救急セットの作り方

 今日は9月9日、救急の日です。
 災害時、警察、消防、救急には救助の電話が殺到しますが、いずれの機関も人数には限度があるため、緊急性の高い案件から対応していきます。
 特に救急は、対応する救急車の台数も限られており、医療機関も重傷者優先対応になりますので、ちょっとしたけがは後回し、もしくは対応してもらえません。
 ですが、怪我した本人からしてみたら、痛いですしそのままにしておくと状況が悪化する可能性もありますので、できる範囲は手持ちの道具を使い、自分で救急措置をすると考えた方が間違いないですし、精神衛生上もいいと思います。
 とりあえず自分で処置しておいて、状況が落ち着いてから医療機関であらためて手当てしてもらうようにすることで、医療機関は重傷者対応に集中できるので、救える命が増えます。
非常用持ち出し袋や災害用備蓄品のチェックリストには必ず「救急セット」が入っているのは、可能な限り応急処置は自分でする必要があるために組み込まれているのですが、救急セットの中身について考えたことがありますか?
 今回は、みんな必要性は認識しているけれどどうやって作ったものか悩んでしまう救急セットの作り方について考えてみたいと思います。

1.救急セットの意味

 本文でも触れましたが、軽傷者をなるべく早く的確に措置することで怪我の悪化を防ぐとともに、医療機関への負担をかけないために用意するものです。
 災害時には怪我をしないことが大原則ですが、それでも切ったり擦ったり折れたりということは起こりうるものですから、それに備えて準備しておきましょう。

2.救急セットの中身

救急セット
防災用の救急セットもいろいろとあるが、完璧なものは無いので、結局自分でいろいろと買い足すことになる。

 救急セットに必要なものは、大きく分けると二種類あります。
 一つが被災してすぐに使う外傷対応に使うもの。
 もう一つは、避難が長期化したときに必要な常備薬やビタミン剤といった内服薬です。
 とはいえ、持ち歩くアイテムと分量は考えないとそれだけで非常用持ち出し袋の中が一杯になってしまうので、どうしても必要となるであろうものを準備します。

1)外傷対応

 まずは絆創膏です。いろいろな種類がありますので、二種類用意します。
 一つは普通にカットバンと呼ばれているもので、指に巻くタイプが数枚あればいいと思います。
 もう一つはハイドロコロイド素材のもの。キズパワーパットと書く方が通りがいいかもしれませんが、これのコロイド面が大きいものを数枚準備します。ハイドロコロイド素材だけのシートもありますので、面の大きいシートを一枚用意して、体には包帯やテープで貼り付けるという方法でもいいかもしれません。
 用途ですが、カットバンは切り傷用。ハイドロコロイド素材のものは擦り傷や深い傷に使います。
 次は滅菌ガーゼと包帯。これは数枚あればいいです。止血に使います。
 「目薬」。埃などが入ったときに差して目を守るのに使います。
 あとは「三角巾」が一枚。これがあると、包帯、止血帯、ガーゼなどいろいろな働きをしてくれます。
 そして、はさみ、毛抜き、ピンセット、使い捨て滅菌手袋といった医療器具も一緒にしておきます。
 また、使い道がいろいろとあるのでマスクと消毒用アルコールがあると助かります。

包帯と止血帯の機能を併せ持っているイスラエルバンテージ。
通販で取るのが早いが。割とお勧め。

2)内服薬

 まず絶対に忘れてはいけないのが持病の薬です。
 通常は必要とされる日数分しか処方されませんが、救急セットを作る目的をかかりつけのお医者様に伝えると、数日分多めにもらえることがありますので、差分を救急セットにいれ、新しい薬をもらうたびに入れ替えておけば、いざというときに持病の薬がないという騒ぎを防ぐことができます。
 次が「ビタミン剤」。市販されている総合ビタミン剤のようなものがあれば充分です。
 それから「整腸剤」くらいがあればいいと思いますが、季節によっては「総合感冒薬」などをセットしておいたほうがいいかもしれません。
 あとは「水」ですが、これは救急パックではなく、普通に非常用持ち出し袋に入っていると考えて、ここでは割愛します。

お薬手帳の表紙
お薬手帳も忘れずに持って逃げよう。最近は「e-お薬手帳」などのアプリもある。

 これらをパッキングすると、そんなに大きくない袋に収めることができます。
 市販の防災用救急セットにはもっといろいろと入っており、もっとさまざまな怪我や病気に対応できるようにはなっていますが、最低上記のものがあれば大概のことはなんとかなると思います。
 どちらかというと、問題になるのは救急セットに何を入れるかよりも、あなたが何を使えるか、ということです。
 例えば、海外から輸入される軍用救急セットには、コンパクトでより多くの資機材が詰められており、状況によってはその場で簡単な手術ができるくらいに充実したものもあります。
 ですが、それらの優秀なアイテムも使い方を知らなければ単なる重しにしかなりません。
 それよりは、自分が使い方をよく知っているもので救急セットを構成し、いざというときに迷わずに中の資機材が使えるように習熟しておいた方がいいと考えます。
 毎回触れていますが、ものを揃えればよしではなく、それを何も見なくても使えるくらいに練習しておくことが大切です。特に怪我に使う道具は、暇を見て使い方を確認しておかないと本当に必要なときに大慌てすることになりかねません。
 せっかく揃えるのですから、箱から出して使ってみて、使い勝手を確認するようにしてくださいね。

被災者の心理について考える

 「災害」というのは非常事態ですが、被災後のあれこれは日常生活に組み込まれていきます。
 災害が起きてから完全復旧するまでにどのような精神状態になってくるのかについて、今日は考えてみたいと思います。

1.被災直後

 災害で自分はどうなってしまうのかという不安が中心です。
 自分の安全が確保されると、家族や友人、近所の人の安否、そして自分の財産、地域の状態という風に、安全が確保されて行くにしたがって意識が広がっていきます。
 連絡の取れない人や、残念ながら亡くなってしまった方がいるような場合だと、多くの人の意識はそこで止まってしまいます。

2.被災してから1週間程度まで

 自分や家族の命を繋いでいくことや、家の片付けなどに追われます。
 なんでも自分でやらなければと言う意識になったり、災害をなかったことにする逃避行動などが見られるようになるのはこの時期からです。
 これからどうするのか、どうしたらいいのかという将来に向けての不安が出てくるのもこの時期からで、日頃抱えていたさまざまな人間関係が一気に噴き出してきたり、漠然とした不安から暴力行為、性犯罪などが増える時期でもあります。

3.被災後1週間以降3週間目くらいまで

 被害の小さかった人と被害の大きかった人の差が出てくる時期です。
 被害の小さかった人は、家の復旧が終わって今後の見通しを考え始め、被害の大きかった人は自分の生活再建についてどのようにしたらいいのかについて考えていますが、高齢者や生活に支援が必要な方は、このあたりで将来に絶望を感じ始める人も出てきます。
 被災者の心身の疲れが出てくるのもこの頃からですので、心理的なケアも必要となってきます。

4,被災後3週間から半年

 被災者は自分の生活再建で手一杯になってきます。
 避難所に残っているのは、生活復旧の目処の立たない人が殆どになり、避難所の統合による再三の引っ越しや移動、見えない将来と破壊された日常など、被災時から積もってきた疲れと不安、そして不満と絶望から感情的になったり、逆に無気力になったりします。

5.被災後半年から一年

 話題に取り上げられることも少なくなり、良くも悪くも日常が戻ってきます。
 ただ、ここまでで以前の生活に戻れなかった人や他人との接触に疲れてしまった人は、やがて社会との接触を断っていくことになります。
 このあたりでこれ以降の生活が固定することが多くなるようです。

 人によってとらえ方や感じ方は異なると思いますが、以上が筆者が個人的に感じている被災者の様子です。
 被災してからしばらくは、気が張っていますし「みんなで復旧・復興するんだ!」という空気に流されて元気でいられることが多いのですが、日常生活は結局それぞれの被災者個人で取り戻していくことになるため、取り戻す方法を手に入れた人と手に入れられていない人では時間が経過するに従って格差が生じることになります。
 この格差が孤独感を生み出し、やがて孤独死に繋がっていくのでは無いかと思います。
 格差を作り出さないためには、「日常生活の復旧」に加えて「社会的な存在意義の確保」という視点からの支援が必要となるのでは無いでしょうか。
 自分の日常生活が戻ってきて、社会的にも必要とされている状態を作り出すことで、本人も生きていく気力が出てきますし、孤独死を防ぐことも可能です。
 別に大上段に構える必要はないと思います。朝、道路に出てもらって、行き交う人に「おはよう」のあいさつをしてもらうだけでもいい。それだけで生活に張りが出ます。
 ちょっとした社会との関わりを持ち続けることを作るような支援も行っていく必要があるのかなと感じています。

トイレの問題を考える

 さまざまな災害がありますが、いずれの災害でも出てくる問題が「トイレ」と「水の確保」です。
 今回は災害時、そして被災後のトイレについて考えてみたいと思いますが、災害が発生したら、大前提としてトイレが使えない可能性が高いと言うことは覚えておいてください。そして、飲み食いは我慢できても排泄は我慢することが困難ですから、自宅や避難先のトイレ事情をまずは確認して備えるようにしましょう。

1.建物で違うトイレ事情

 一戸建て、二階建て、アパート、高層マンションなどなど、人が生活する空間はいろいろありますが、それぞれ対応が変わります。
 また、処理方法が下水管なのか、浄化槽なのか、それともくみ取りなのかによっても事情が異なります。
 基本はこれらのかけ算の数対応方法があるのですが、おおざっぱな対応は次のとおりです。

大前提)2階以上にあるトイレは使用禁止です。

テープで出入口を閉鎖したトイレ
災害が来たら、最初にトイレを閉鎖しないと汚物で大惨事となります
写真は消防科学総合センターのHPから転載。

 被災後、汚水管の安全が確認されるまではトイレは使えません。
 特に地震だと建物内部にある配管が外れていることが考えられ、その状態でトイレを使うと下の階に汚水があふれてしまいます。
 アパートやマンションで他者に損害が発生した場合、あとで損害賠償請求されることもありますので、くれぐれもご注意ください。

1)下水管で処理している場合

 洪水等で配管に泥などが詰まっていることが考えられます。施設の点検が完了するまでは、原則トイレは使えません。

2)浄化槽で処理している場合

 下水管と同じで、原則は施設の点検が終わるまでは使わない方が無難です。
 電気が来ている場合には浄化槽を機能させることができるため、トイレを使うことは可能です。ただし、洪水などで水没してしまった場合は浄化槽内には汚泥などが貯まっているので、清掃整備が終わるまでは使用できません。

3)くみ取り式の場合

 災害後も基本的には普通に使うことができます。ただ、洪水等の場合には汚物槽が水でいっぱいになっていますので、くみ取りが終わるまでは利用することができません。また、落ち着いたら汚物層が破損していないか点検をしてもらってください。

2.怖い逆流

洪水等水による被害の場合には汚水管から水が逆流してくることがあります。
そうなると便器から汚物混じりの汚水が噴き上げて、のちのちの片付けに支障をきたすことになりますので、便器の排水部分を塞いでおいた方が無難です。
そのため、便器の排出口を押さえるように水のうを積むことをお勧めします。
材料は大きくて丈夫なビニール袋2枚とひも、それに水です。

■水のうの作り方

材料:大きくて丈夫なビニール袋2枚、ひも、水
作り方:
1.ビニール袋を二重にあわせます。
2.1で作ったビニール袋に水を注ぎます。袋の7分目くらいまでなら入れても大丈夫ですが、持てる重さにしましょう。
3.注いだらひもで口を縛ります。ひもがなければ、注ぐ水の量を半分くらいにして袋の口を縛り上げます。
4.それを便器の排出口にしっかり乗るように置きます。水のうは一つ、ないし二つで十分です。

水のうは土のうがないときには土のうの代わりに使うこともできますが、土のう袋に比べるとビニール袋は破れやすいので取り扱いには十分気をつけてください。

3.トイレが使えないときのトイレ

 水のうを積んだり、水没したりするとトイレそのものが使えません。
 そんなときにでも排泄は止められませんので、仮設トイレが必要となります。
 いろいろな方法がありますが、ここでは2つほど方法をご紹介します。

前提)仮設トイレの考え方

 家族の状況によって準備するものが変わってきます。
 和式が使えない場合には、座ってできるような設備が必要となりますし、排泄物を無事に処理できることは当然として、排泄時にたとえ家族であっても見られないような装備も必要です。
 以前に「携帯トイレと一緒に持つもの」でも触れましたが、例えば着替え用に使うテントやポンチョなど目隠しできるものを準備しておく必要があります。
 小さなこどもが居る場合には、おまるを準備しておくのもよいと思います。
 そしてできれば一度使ってみて、使い勝手を確認して、自分や家族が使いやすい形にしていけばいいと思います。

座るタイプのおまるなら、ある程度子どもが大きくなっても使うことが可能

1)携帯用トイレ

 100均でも見ることの増えてきた携帯トイレを準備をしておくことをお勧めします。
 携帯トイレにもさまざまな種類があり、小用、大用、大小用、男性用、共用とありますので、家族構成によって準備するものを考えましょう。
 また、家族の一日のトイレの利用状況を確認しておいて、その3日分程度は準備しておくといいと思います。
 大小用の共用の中には組立式便座のついているものもありますが、これは持って避難するようなサイズではないので、家庭での備蓄品として備えておくといいと思います。

携帯トイレ各種
携帯トイレは大用もあるが、便座にセットするタイプが殆どのため、水害では使えなくなることもある。使い方を確認しておきたい。

2)トイレを作る

 トイレで問題になるのは「水分」と「臭い」で、これがなんとかなれば理屈上はどこでもトイレを作ることが可能です。

■おすすめは「猫の砂」

 お勧めは「猫のトイレ用砂」
 これは水分を吸収し臭いも取ってくれる作りになっていますので、これがあるとかなり快適な仮設トイレを作ることができます。
 使った後は大も小も周りに砂がついて固まりますので、固まったものをBOS等消臭効果の高いビニール袋にいれてゴミ袋に入れるだけ。
 基本的には可燃ゴミで処分も可能です。

■吸水ポリマーや新聞紙も使える

 また、携帯トイレやおむつなどにも使われている吸水ポリマーがあれば水を確実に吸収できますし、新聞紙もしわくちゃにして丸めることでそれなりの吸水量を確保することができます。
 ただ臭いについては完全に消すことができないので、排泄後は速やかに消臭効果の高いビニール袋に入れるくらいでしょうか?
 吸水ポリマーを使う場合には、可燃ゴミとして出せない場合もあるのでお住まいの自治体のゴミ処理担当課に確認をお願いします。

地震で汚水管が破損した可能性があるだけなら、トイレの便器にビニール袋をセットしてその中に猫の砂や吸水ポリマー、新聞紙を入れて排泄するという方法もある。

 トイレの問題は健康管理とも密接に関係しています。災害時だからこそ、トイレを我慢しなくても済みように、あらかじめ準備しておくことが大事ですね。

災害ボランティアをやってみる

 最近はあちこちで災害が起きており、災害ボランティアという言葉もすっかり定着した感じがします。
 8月に佐賀県を中心とする大雨により発生した水害の復旧にも、あちこちからボランティアが集まって被災地の支援を開始していますが、ボランティアをするためにはどんな装備や意識が必要なのでしょうか。

1.ボランティアの条件

 災害ボランティアをするに当たって特に必要な条件はありませんが、被災地や被災者を助けたいという気持ちは必要だと思います。
 そして、体調が万全でなければ被災者に迷惑をかけてしまうことになりますから、体の調子はしっかりと整えておく必要があります。
 また、災害ボランティアは自分のことは全て自分でやることが基本ですので、自律できていない人はやらない方がいいと思います。

2.ボランティアをするには

 大きく分けるとボランティアセンターを通して行うものと、個別に回って作業を手伝うものとにわかれます。
 それぞれにメリットデメリットがありますが、ボランティア参加者の身元確認及び安全確保という点から、行政等はボランティアセンターを通してボランティアに入ることをお願いしています。
 また、現地の混乱や危険が解消されつつあるという一つの目安がこのボランティアセンター設置ですので、ボランティアセンターが設置されるまでは、地元の支援なしでボランティアに入ることはかなり困難が伴うということも意識しておく必要があると思います。

1)ボランティアセンターを通して行うボランティア

 被災地のどこで支援を行うかという場所・内容選びをボランティアセンターが行ってくれますので、時間にボランティアセンターに行けば済むという点で楽です。社会福祉協議会がやっているボランティア保険も適用されるので、何かあったときにも最低限の担保はされています。また、作業に必要な道具類や状況によっては飲料水等の提供を受けられることもあります。
 デメリットは、自分の思うようにはならないということ。ボランティアセンターの指定した時間に指定した場所で指定した内容のボランティアのみをこなすことになりますから、お隣の人から作業を頼まれてもやることができないというジレンマを抱えることがあります。
 また、誰でもできる内容が多いので、特殊技能を持っている人は物足りなさを感じることがあるかもしれません。

2)ボランティアセンターを通さずに行うボランティア

 自分の思うように思った場所で思った時間、被災者が要望している内容を要望にそって提供できるということで、被災者、支援者ともに要求を満たせて素早い復旧が期待できます。
 デメリットはまず被災地のどこへ行くのか、誰に何を提供するのかを地元の要望を確認しながら事前に決めなければなりません。また、ボランティア保険の適応がありませんので、自分で保険会社に依頼して保険をかけておく必要があります。そして、独立して作業をするので、自分の食料や水といったものだけでなく、作業に必要とされる道具類も自前で準備しておかないといけません。

3.ボランティアの装備

 個人の装備としては、長袖、長ズボン、安全靴、なければ安全中敷きをいれた長靴や運動靴、防塵マスク、作業手袋、あれば防塵ゴーグルと帽子、ヘルメット。
 リュックサックにはタオル、ウェットティッシュ、2リットル程度の飲料水、食事、怪我をしたときに使える救急セット、雨合羽。
 日帰りボランティアならこれくらいあれば大丈夫だと思いますので、あとは季節に応じて日焼け止めや冷却剤、カイロや防寒着といったもの、また個人的に必要なものを持って行けばいいと思います。
 宿泊して現地でボランティアを続ける場合には、被災地外に宿泊地を設定し、被災地には通うようにした方が現地に負荷をかけずにすみますので、移動手段及び宿泊方法も考えておいた方がよさそうです。

 行政機関は面的、一律的な対応しかできませんが、災害ボランティアはややこしいことを抜きにして被災者を助けることのできる重要なボランティアです。
 ボランティアが動けば、その分現地の復旧は進みますので、興味があったり機会があったら、ぜひ一度経験してみてください。